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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
43/194

第四十三話:六日目、朝

 ※メールが届いています。


 ・運営より

 プレイヤーネーム:ミコトに、シークレットクエスト攻略を祝し、特別ボーナスを贈呈。


 内容を確認すること。


 ……おめでとう。君がもらって喜びそうなものを、選んでおいた。

今後の役に立てたまえ。


 ……紫斬の将、サザン。



 どこか遠くで、コケコッコーの鳴き声が聞こえる。


 ニワトリ!? と、ビックリして目を覚ましたけれど、そもそも昨日、拠点内の東側に牛舎と鶏舎を造ったんだった。

 造るといっても、拠点用設備チケット(酪農)と家畜チケットなんてものを使用したので、なんの苦労もないけれど。

 外を確認すれば、まだ薄暗い。それならとばかりに、二度寝しますぅ……。すやぁ……。




 とんとんとん、


 とんとんとん、


 引き戸を叩く、リズミカルな音。

 誰かがノックしている?

 ノックする人といったら?

 ……ああ、そっか。そろそろ起きなきゃね。


「……ふああぁぁぁ……」


 大きく延びをして、一応、鏡に向かって手櫛で髪をすいてから、引き戸の鍵を開ける。


「おはよう、トールくん!」


 朝の挨拶だから、できるだけ元気にいこう。そう思って声をかければ、なぜかビックリしたような顔で固まっているトールくんの姿。


 あれー? どうしたの?


 首をかしげれば、慌てたように手を伸ばしてきて、襦袢(じゅばん)の合わせ目を整えてくれた。

 寝起きで気にならなかったけど、もしかしたら、だらしないくらいに襦袢が乱れていたのかも?


「ミコト、なんで格好をしているんだい? その……それは、インナーだろう?」


「それ? 襦袢のこと?」


 鎖骨の辺りの生地を、つまんで引っ張ってみる。だからって、肌は見えない程度に気を付けてるよ? そんなに顔を反らさなくてもいいじゃない?


「あのね、ミコト。ひと声かけてくれれば、着替えるまで待っていたのに」


 襦袢なら、インナーといっても、Tシャツなんかよりはずっと生地が厚くて、肌が透けて見えることなんてないんだけどな。


 でも、見るに耐えないって言うんなら、パジャマとか作ってみようかな?

 コットンとか、あったはずだし。

 そうだね。今日は、生産の日になるだろうね。

 鶏や牛や畑の様子を見て、服とか作ろう。


 トールくんの服も、前から着ている粗末な一張羅(いっちょうら)のままだし、いくら《洗浄》スキルで綺麗にしているとはいえ、着たきり雀じゃね。


「ごめんね? 気が利かなくて。で、さ。ご用事なあに?」


「ああ、それはね……うわっ!?」


 なんか、急にビックリしてのけ反ったトールくん。

 なになに? 何かあるの?


 廊下に顔を出してみれば。


『……よう』


『ご主人さま♪』


『おはようございますワン♪』


 不機嫌な妖精と、ワンコ二匹が尻尾振ってお座りしていた。


 どうしたの? と問えば。


『朝飯を作れ』


 あ、そろそろ時間ですね、ハイ。


「分かったよ。すぐ作るね♪ それで、トールくんのご用事は?」


「食事の後でも大丈夫だよ」


 見てると、ホッとするような微笑み。

 いつまでも見ていたいなー。と思うけれど、まずは朝御飯だね。


「ミコト、ちゃんと服を着なさい……もう、危なっかしいなあ……」


 はーいっ♪ と、笑顔でお返事。

 あ、そうだ。ちょっとイタズラしちゃえ。


 引き戸の隙間から顔だけ出して、


「覗いちゃダメだよ?」


 と、ちょっとだけ困った顔を意識してみれば、


「大丈夫。覗いたりしないから」


 と、微笑んでくれる。


 えへへー。なんだか、胸がポカポカしてくるね。


 今日も、美味しいご飯を作ってあげなきゃ。




 寝起きだからって、あんな無防備で……。


 足とかほとんど見えてたんだけど、気付かないのかな……?


 おれの理性は、いつまで持つだろうか……?


 ……赤髪の少年、トール

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミコトの無自覚&勘違いと、 襦袢ではなく足にドキドキするトールくんの、 ウブさ加減。この攻防に、ニヤニヤさせられますね。
2020/07/05 23:24 退会済み
管理
[一言] もうやめて! とっくにトールくんの理性はゼロよ! 我慢しなくてもええんやで( ˘ω˘ )
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