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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
41/186

第四十一話:閑話:賢者 シオリ

 ……人間怖い……


 …………人間怖い…………


 ………………人間怖い………………



 ……? この人間、あんまり怖くない?


 なら、いっか。仕事だし。


 ……無口な妖精 インデックス


 五日目。

 今日も森で戦闘と素材集め。


 他の人がいないから、基準が分からないけれど、《賢者》はMPが多いと思う。

 だからといって、無限ではない。

 攻撃魔法も、選択してから発射までに、《キャストタイム》と呼ばれるタイムラグが存在する。

 さらに、同じ魔法をもう一度使うためには、《リキャストタイム》と呼ばれる待機時間が存在する。

 また、同じ魔法を二発同時に発射する《ダブルスペル》にも、《リキャストタイム》が存在する。


 つまりその、一撃で倒せないと、キモいゴブリンにキモいことをされそうな怖さがある。


《飛び出る魔物図鑑》も、欠点を克服するには、多くの素材とMPが必要になる。


 ……では、今一番の問題は?


「インデックス、MPを回復させる手段は?」


 問われた妖精は、首をかしげた。そして、両手の平を上に向けると、空中に一枚の画像が浮かび上がった。


「これは、薬草の一種?」


 (つぶや)きに合わせるように、ログが勝手に開かれ、妖精からのメールを知らせてきた。


 浮かび上がった画像には、その薬草の名前と詳細な情報。そして、周辺マップと連動した、大森林における植生分布図。

 ご丁寧に、一日で歩ける範囲まで書き込まれてあった。


 目の前に展開された情報を、しばし吟味する。

 特に、周辺マップが示すある一点に着目した。


「インデックス、この、村を示す表示は?」


 第六開拓村と表示されているその場所に、人、店、食料、水、寝床などはあるのか?

 色々と聞いてみれば、寝床だけはあるのだと言う。

 そして、人はいない。つまり……。


(廃村……なのかしら?)


 その村に今は(・・)魔物はいないということなので、まずは森の中の村を目指すことにする。


「《飛び出る魔物図鑑》、起動」


 MPのほとんどを消費して、昨日召喚した鉄のナイフと革の防具のゴブリンを五体召喚。

 二体を前に、右、左、後ろに一体ずつ配置して、森の中へと歩を進めた。




※※※


 行程は順調。


 召喚したゴブリンが魔物を倒しても、わずかに経験値は入るらしく、ほっといても勝手にレベルが上がっていく状態になっていた。

 ただ、それだとスキルのレベルは上がらないので、適度にMPを消費しておく。


 ……数分歩けばゴブリンが出てくるような状況なので、段々うんざりしてきたのだけれど。


 そんな時だった。前衛のゴブリンが茂みの中へ突撃し、そのうちの一体が私に向かって吹っ飛ばされて来たのは。


 そして、前と後ろの茂みの中から、ぐしゃり、と何かが潰されたような音。


 二体のゴブリンが、あっという間に倒されたのだった。


 (わず)かな間をおいて、のそりと茂みから姿を現したのは、豚人間、オーク。


 2m近い身長と、体重200kgを越えていそうな巨体。

 肌の色は、豚に似た肌色。腰には汚い布切れを巻いている。


 ゴブリンを蹴り飛ばし、踏み潰したのであろう右足は、血に染まっていて。


 私の姿を見つけるなり、ニチャアと気持ちの悪い(わら)いを浮かべた。



 ……うん、キモい。ムリ。



「《ダブル》《ウォーターボール》《アースボール》」



 今の私に出来る全力。二種の魔法の二連発。これが、通じなければ……。


 そんな懸念は、不要だった。

 むしろ、オーバーキルだったようで。

 二発当たった段階で倒せていたみたいで、私のレベルが高いのか、《賢者》のジョブが強いのか、魔法が強いのか、オークが弱いのか、判断が付かなかった。


 これで終了、と思いきや、無口な妖精は別の魔物の接近を知らせてくる。


 ドスドスと重い足音を響かせて走り来るのは、二体のオーク。


 余裕を持って倒すために、覚えたばかりのLV2の魔法を叩き込む? それとも、少し待って《リキャストタイム》の終わったLV1を撃ち込む?


 (わず)かに迷い、先にゴブリンをけしかけて時間を稼ぐことを選択。LV2の魔法を起動して……《キャストタイム》が長い!?



 ゴブリン三体では僅かな時間も稼げず、文字通り蹴散らされた。


(……オーク二体。一撃で倒せないなら、色々覚悟する必要があるわね……)


 今まさに、LV2の魔法が発動する、その瞬間。



「《イカサマ》《ダイスロール》《トリックスロー》」



 一体の頭にはナイフが突き刺さり、


「当たれっ!」

「《ウォーターボール》」


 もう一体には、木の矢と水球が当たって、それだけでは倒せなかったので、LV2の魔法 《マッドショット》と《ウォーターアロー》が突き刺さった。


 ほぼ同時に、肉の(かたまり)や皮、魔石へと姿を変えるオーク。



 ……助かったのは確かだけれど……。



「よう、危ないところだったじゃないか、ご同輩?」


 作り物のような笑顔を張り付けた、胡散臭(うさんくさ)い黒髪の少年と、


「だ、大丈夫ですか?」


 少年とは、少し距離を取っているようにも見える、腹や手足を露出した茶髪の少女と、ローブ姿の茶髪の少女、


『アハハ、オークも一撃! ユウはやっぱり強いんだあ!』


 少年に寄り添う、何が面白いのか? ケタケタ嗤う女性型の妖精という組み合わせは、なんとも胡散臭く。


 助けられた礼より先に、顔がひきつるのを自覚した。




 ……この人間、ボクがいないと、なんも出来ないね……。


 ふふん♪


 ……無口な妖精、インデックス

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― 新着の感想 ―
[一言] うわあ、遂に出会ったあああああ!!!! 果たしてこれがどういう化学反応を起こすのか!? そしてインデックスが可愛いですねw
[良い点] インデックスの名を冠するにふさわしい博識の妖精と、 与えられた情報を、いろいろ吟味しながら、 じっくり取り組む、賢者の名にふさわしい、 シオリさんのコンビは、相性が良くて、 見ていて面白い…
2020/07/01 20:40 退会済み
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