第四十話:閑話:賢者 シオリ
トライ&エラーは基本。
だからって、一人で出来ることには限界があるわね……。
……《賢者》シオリ
三日目。
視線のずっと先にある《大森林》に行くには? 徒歩だけ? と妖精のインデックスに聞いてみれば、しばし首を傾げた後、目の前に森があった。
その時、いくよ、とインデックスの小さな声を聞いた気がしたけど。
それで、これは、どういうこと?
首を傾げたままのインデックス。
その表情は、森にいかないの? とでも言いたげ。
……ああ、もう。言うつもりはないってことね。
「……じゃ、行きましょう」
言いたいことはあるけれど、まずは戦闘と採取に挑むわよ!
最初に修得していた魔法は、水と土。
これは、森の中では猛威を振るうことが出来た。
「《ダブル》《ウォーターボール》《アースボール》」
消費を増やす代わりに、二連発出来る魔法スキル、《ダブルスペル》と、二種の属性魔法を連発すれば、回避も許さずに魔物を倒すことが出来た。
……と、いうか、倒したのは大体ゴブリンだったけれど、想像以上にキモかった。
ニチャアと粘つくような笑い顔。
本能的に思ったわ。
こいつらは、敵だと。
少しでも距離を取りたい。そのために、次の武器を使ってみる。
「《飛び出る魔物図鑑》起動」
左手に持った図鑑が自動で開いて、登録されている魔物が文字通り飛び出す。
……で、眉をしかめることになった。
思った以上のMPと、魔物に対応した素材が勝手に消費された。
……一切説明がないままに。
さらに、出てきた魔物……ゴブリン……に、マイナス補正が掛かっていた。
試しに、武器を持たせた状態で、素手のゴブリンとタイマンやらせてみた。
で、結果。
ぼこぼこにされた上武器を奪われてトドメを刺された。
確認次第、敵の方を《アースボール》でサクッとやった。
「…………想像以上に使えないわね…………」
最初から便利なアイテムをたくさん手に入れたことで、しばらくは無双出来るかと思ったけれど、どうやらそう楽にはいかないらしい。
「仕方ないわね。やれることをやりましょう。インデックス、ナビをお願い」
無口な妖精は、何事もなかったように、コクコクと首を縦に振っていた。
この日の残りの時間は、素材を集めることに専念することになった。
といっても、魔物を倒すことがメインだったけど。
食材は、特に必要性を感じなかった。
拠点にある食材で、特に不満もないから。
それに、甘いお菓子なんてさすがに無理だろう。
お茶の葉があったのには驚いたけど、そのまま飲めるわけでもなし。必要は……あるかも。
インデックスにトレードの素材になる? と聞いてみれば、他の妖精に確認を取ってくれた模様。
結果は、オーケー。しかも、そこそこ高いレートで引き取ってくれるそう。
……それなら。
「インデックス、このお茶の葉、採り尽くしたら、どんな問題がある?」
首を横に振る妖精。つまり、問題はない、と。
「インデックス、最適な採取方法を教えてちょうだい」
採取だヒャッハー、となる性格でもないので、淡々と、慎重にこなす。
葉を丁寧に摘み取っては、木の皮を編んだような笊に乗せていく。
ある程度盛り上がったら別の笊へ。
また貯まったら、また別の笊へ。
数えもしなかったけれど、十では足りないくらい、笊をいっぱいにした。
……ところで、この笊、どうやって用意したんだろう?
まさか、これもトレード? だとしたら、もったいないわね……。
時間的に、そろそろ森を出ないと暗くなるというので、引き返すことに。
帰り道は採取しない方向でいけば、だいぶ早く森から抜けることが出来た。
それでも、日が沈みきる前くらい。
ゆっくりしていたら、辺りは真っ暗になっていたかも。
「インデックス、帰りもおね」
お願い、と言おうとしたら、既に拠点の洋館は目の前だった。
……さすがに、一言声をかけて欲しい。……と思いながら、この無口な妖精は気にしないかもしれない。などと思ったりもした。
四日目。
《飛び出る魔物図鑑》の使い方を考えてみた。
昨日は、何がいけなかったか?
それは、単純に使い方が分からなかった点。
こちらからのアプローチは可能か?
昨日集めたゴブリンの素材を、一度に複数体分使えるか?
MPは、余分に消費すれば強化できるか?
あと、装備。鉄製の防具は重すぎないか?
さて、意識して、いってみよう。
・三体召喚。
・消費する素材を、倍に設定。
・MPは、六体分。
・鉄のナイフ、皮の鎧、皮の兜、皮の手甲を装備。
……これでどう?
さて、結果は……。
・三体召喚成功。
・マイナス補正なし。
・武器防具を装備済み。
……よし、成功。あとは、ちゃんと戦えるかどうかね。
前進、あるのみ!
結果は、満足のいくものだった。
マイナス補正もないため、一体一なら装備の分余裕をもって戦えるし、三体一なら一瞬だった。
(《飛び出る魔物図鑑》は、オートで使うものではないようね)
満足して大きく頷く。
ふと、無口な妖精を見てみれば、心底興味ないとばかりにそこらを適当に見ていた。
(……もう、少しはこっちを見てもいいじゃない)
不満はあれど、結果には満足できた一日だった。
リザルト
・本LV1 → LV2
・攻撃魔法LV1 → LV2
・・水属性魔法LV → LV2
・・土属性魔法LV → LV2
・ダブルスペルLV1 → LV2
・消費MP軽減LV1 → LV2