第四話:ジョブとコトダマ
言葉には、力が宿る。
『次は、ジョブとスキルを決めるぞ』
ジョブとは? ゲームによって扱いが全然違うから、説明ぷりーず。そして、なにか着るものぷりーず。
『ジョブは、プレイスタイルを決める重要な要素だ。物理、魔法、バランス、特殊、生産など色々あるが、βテストの今選べるのは物理、魔法、バランスの三種だけ。ジョブを選ぶと初期装備が配布、自動で装備される。あ、ジョブにすっぴんやノービスや紳士なんてのは無いからな? そら、選べ』
目の前に、半透明のウィンドウが現れ、各ジョブが表示される。
◯物理職
・戦士
・格闘家
・狩人
◯魔法職
・魔術師
・僧侶
・付与士
◯バランス職
・魔法戦士
・斥候
・調教師
◯特殊職
・巫
……うん? 無いって言ってたのに、特殊職があるぞ? しかも、何て読むの?
『ぶふっ!? お、お前? なんでいきなり特殊職が解放されてんだよ!?』
「何て読むの?」
『……かんなぎ。その言葉に込められた意味は、言えない』
「へぇー。……じゃあ、それにする」
『おま、少しは悩めよ!?』
「羽虫うるさい」
(レア職みたいだし、選ばない手はないんじゃない? 今はβテストなんだし、問題があれば正式サービス開始の時に変えればいいんだし)
『……お前ぇ……本音と建前逆になってるぞ……?』
もぅ、そろそろいいよね?
ウザい羽虫に指を突きつけて、宣言する。
「お前言うな。僕にはミコトって言う、親からもらった名前がある。それに、名乗りもしないウザい羽付きは、羽虫で十分だろ?」
『……そうかい……』
僕は名乗ったのに、何て思っていると、なぜか羽虫の様子がおかしくなった。
……なんか、落ち込んでる?
『……オレ……羽虫か……はは……羽虫……』
あ、もしかして……
「名前、無いのか?」
『羽虫……オレ……羽虫……』
どんよりうつうつ。
ああ、もう、鬱陶しい。
「ガイド妖精。ナビゲーター、先導、先触れ、賢者、じゃなくて識者、羽を持つもの。……うーん、色が気に入らないけど、羽を持つ先触れ……それは、ヤタガラス。神の遣わした偉大なる先触れ。神格を持つ存在。……ヤタ。きみの名前はヤタ」
連想ゲームのように、思い付く限りの特徴を上げて、繋いで、導きだしたのが、この名前だった。
「うん。これで、名前で呼び合えるね。僕はミコト。きみは、ヤタ。間違えるんじゃないよ?」
『ヤタ……ヤタ……オレの名前……ミコトが、つけてくれた……』
光の消えた目に、再び光が点っていく。
『うわーーーん、ミコトーーー!』
ガイド妖精、ヤタが僕の胸に飛び込んでくる。
わんわん泣くその様子をみて、言いたいことを飲み込む羽目になった。
一応さ、僕、リアルでは男なんだよ……?
そろそろ、寒くなってきた……。