第三十六話:ズル?いいえ仕様です。
今度は、オレが手札を使い切ろう。
誰でもない、オレ自身のために。
…………中位妖精 先触れ:ヤタ
……ヤタからすると、トールくんの覚悟や僕の涙は、茶番だったんだろうか?
『そら、どんどん行くぞ。好きなだけ平らげろ』
ガイド妖精の能力。それを忘れていた僕も悪いといえば悪いけど。
『三十四、三十五、三十六!』
『ナイト六、アーチャー八、メイジ三!』
「オークジェネラル、討ち取った!」
元気に動き回っているコボルト二体は、ジョンがザコオークの数を減らし、メグがナイトやメイジの上位種を確実に討ち取り。
悲壮なまでの覚悟を決めていたトールくんは、なんかオークジェネラルと一騎討ちとかやってるし。しかも勝ってるし。
……や、その、僕が付与したから……という点もあるけど、一番の理由はやっぱり、トールくんの剣技が、ジェネラルを圧倒していた点だろうね。
その上で、以前の粗末な鉄の剣とは天と地ほど差がある《スピリットソード》を装備すれば、体格差を考慮しても、レベル差以外で負ける要素は見当たらなかったりする。
そのレベル差も、あっさり覆してるし。
もう、ネタばらしすると、ガイド妖精の能力として、拠点内限定で、離れたところにいる魔物を召喚する、《バトルモード》というものがある。
中位妖精に進化したヤタからすると、個体識別は簡単なことのようで。
『よし、これで、キング含む一部隊の殲滅確認。少し休憩したら、次行くぞ』
……僕? メグが持ってきた上位種とジェネラルに止めを刺す係。
お陰さまで、レアっぽいドロップ品がたくさんだよ。
……今夜のご飯は、カツにしようかな?
しゃきーん! と、ワンコ二匹の尻尾が立って、
「今のおれは、ワイバーンだろうと斬り捨てて見せる!」
あ、トールくんたら、オークジェネラルの首を一発ではねたよ。
……もー。そんなに、初めての料理が気になるのかな? 張り切りすぎだよ……。
オークジェネラルやキングの肉は、それはもう、筆舌しがたい天上の美味! なんて言われるとか。
ハンバーグにステーキにしょうが焼きに、
トンカツにすき焼きに豚丼に、
肉野菜炒めにチャーシューに角煮に。
あー、もう。これが終わったら、絶対にお醤油とお味噌を作ろう。
今からよだれが止まらないよ!
『……オレが言うのもなんだけどな、さっきまでの悲壮な空気はどこ行ったよ?』
ヤタがなにか言ってるけど、全然気にならないね。
美味しいご飯は、正義だと思うから!!
『百四十六、百四十七、百四十八!』
『プリースト六、メイジ十一、ソルジャー四十二!』
「ジェネラル、四体目!」
……あれ? なんか多くない?
『今は二つ目の部隊だぞ。キングはさっきお前が止め刺したやつだ』
……あ、なんかマント着てたりするから、ジェネラルの魔法版くらいの認識だったよ。
ちゃんと見れば、王冠もついているみたい。気がつかなかったよ。
『ゴブリンも、キングとジェネラルと一部の上位種は総ナメするぞ! 価値の分からない現地人どもに、一匹たりともくれてやるものかよ!』
……あれー? なんか、ヤタも荒ぶってらっしゃる?
……まあ、みんな、やる気に満ちてて、いいことだね。
晩ごはん、期待しててね。
『うるぁーーーっ! 死ねやブタどもーーーっ!!』
うん。ヤタが一番食い意地張ってるね。
トンカツソース、作れればいいなぁ……。
リザルト(討伐数)
・オークキング×5
・オークジェネラル×14
・オークシャーマン×7
・オークナイト×45
・オークメイジ×53
・オークプリースト×48
・オークアーチャー×82
・オークソルジャー×157
・オーク×401
・ゴブリンキング×4
・ゴブリンジェネラル×10
・ゴブリンシャーマン×3
・ゴブリンナイト×37
・ゴブリンメイジ×22
・ゴブリンプリースト×16
・ゴブリンアーチャー×42
・ダークゴブリンシャーマン×4
・ダークゴブリンナイト×8
・ダークゴブリンライダー×16
・ダークゴブリンアサシン×6