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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
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第三十五話:行かないで

 ……別に、黙っていてくれって頼まれた訳じゃないから、言ってしまってもいいと思うんだが……。


 …………中位妖精 先触れ:ヤタ


「……んー?」


 朝、目を覚ます。

 なにか、違和感を感じる。これ、少し前にも感じたような気が……?


 なんとなく、ログを見てみる。


「……あー」


 覚えがないけれど、なぜか服とかたくさん作っていたみたい。


 ……なんで?


「ヤタ、いる?」


『おう、どうした?』


 適当に声をかけてみれば、すぐに相棒の声。ちょっと安心。


「あのね、なんか……」


 ログにあった、たくさんの服とかのことを聞いてみる。けど、なんか、はぐらかされてしまったみたい。ちゃんと答えてくれない気がした。


『なあ、ミコト。なんか腹減ったんだけど』


「あ、うん。すぐに作るね」


 ヤタからの催促は、初めてかも。

 でも、調味料が少ないと料理が限られてくるから、今日こそは、大豆からお醤油やお味噌を作れるか試さないとね。



『……うーむ、言うべきだろうか……?』



 ヤタが何か言った気がするけど、引き戸の開閉音で聞こえず仕舞いだった。



※※※


 解体したことでたくさんあるオーク肉と、拠点内に無限供給される塩を合わせると、ハムやベーコンが作れる。

 けれど、挽いてない麦と種類の少ない野菜では、どうしてもレパートリーに難が、ね。果物が早く実が成って欲しいよ。

 今日は、生産スキルで小麦を粉にして、オーク肉のベーコンを使って、朝からお好み焼きと、あとは野菜スープ。

 味付けは塩だけだけれど、たくさんのキャベツとタマネギのおかげで、甘味もでて大変好評。


 お好み焼きソースが出来れば、もっと美味しいんだけど。


 ついうっかり漏らしてしまうと、妖精とワンコ二匹の目の色が変わった。

 美味しいものには目がない三人……三匹? だった。まる。


 さて、今日も騒がしい朝食だったけれど、一人だけ鬼気迫った表情で上の空……食べたら、美味しそうにほほが緩んでいたけれど……な人がいたんだよね。


「トールくん、どうかしたの? 美味しくなかった?」


 どうしても気になって、聞いてしまう。なにか、思い詰めてしまっているみたいだし。そしたら、


「今日も、とっても美味しかったよミコト」


 にっこりと笑うトールくん。

 その笑顔は、とても演技とは思えない。

 なら、なにが理由で、そんな苦しそうな顔をしていたの?


「ねぇ、ミコト。話があるんだ」


 トールくんが、真剣な表情に戻る。

 僕もつられて、唾を飲み込む。

 なにを、言われるのだろう……?


「ミコト、きみに命を助けられておきながら、何の恩も返せていないけれど、ここを出ることを許して欲しい」


 ………………うーん?


「つまり、僕、捨てられるの?」


「どうしてそうなるんだっ!」


 わっ、びっくりした。

 急に立ち上がって大声出すから、びっくりしちゃった。


「じゃあ、どういうこと?」


 ちゃんと、トールくんの目を見て、真剣に聞く。どんな答えでも、受け止められるように。



 トールくんの語る内容は、信じがたいというか、信じたくないというか。


 大森林と呼ばれる森で、魔物の大量発生が起きており、ゴブリンキング率いる大部隊が複数確認されたらしい。

 その数、一つの部隊だけでも、少なくとも200。

 ジェネラルとかナイトとか、通常のゴブリンとは格の違う強さを持つ上位種も、少なくとも10以上居るだろうし、一つの部隊にキングが複数いるケースもあるとか。


 それに対して、現地人側は、ベテラン含む冒険者20人程度。

 街を守る兵士たちは、森へは遠征しないし、他の冒険者は、報酬の少ない仕事はしないという。


 ……自分達の住む街の危機なのに!


 そのなかでもトールくんは、自分が世話した後輩の女の子二人(・・・・・)!のことが気になるってさ。


 ……僕のことをほっといて、その、女の子たちのところに行きたいってさ。


 ……むーっ!


「僕も行くっ!」


「今大森林では、複数のキングが同時に発生していて、100以上の部隊が複数動いている。とても危険な状態なんだよ。それに、ゴブリンやオークに、女性が捕まったら……その……た、大変な目に遭わされるんだ。ミコト、きみを、そんな危険なところに連れていきたくないんだよ。どうか、分かって欲しい」


 少し困ったような、真剣で真摯な目と態度。

 僕のことを、心の底から案じているって、すっごく伝わってくるんだよ。

 だから、そんな優しいトールくんだから、死なせたくないって、一緒にいたいって思うんだよ。

 どうか、分かって欲しい……。


「ううう……」


 知らず、目に涙がたまる。

 怯んだ様子のトールくん。でも、決意は固いようで。


「泣かないで、ミコト。おれは、必ず戻ってくるから。だから、泣かないで」


 肩を抱いて、こぼれる涙を拭ってくれる。けれど、


「三日で戻ってこなかったら、おれのことは忘れて? 大丈夫。何日か前に戻るだけだから」


 それは、別れの言葉に違いなくて。

 ……だから、


「やだ、行かないで。死んじゃやだよぅ……」


 ……だから、引き留めるには、抱き締めるしかなくて。けれど、


「……ごめんよ。許してくれなくていい。代わりに、忘れて欲しい」


 ……けれど、それだけでは、全然足りなくて。抱き締める手をそっと解いて、肩を押されて離される。


 なら、どうすれば……?




『オホンッ。あー、二人とも。現状を解決する手段があるんだが』



 その、手段があるのなら、飛び付かないわけがなかった。


 ヤタ (あー、いちゃつくのは後にしてくれねーかな?)

 ジョン (ふんふん、ご主人さま、泣かないでほしいワン)

 メグ (くぅん。邪魔しちゃダメだワン)


 ワイバーンの鱗 × 52 を消費して、各種防具を生産。


 コボルト (ジョン、メグ)

 獣牙の剣 → 飛竜爪の小太刀

 獣牙の槍 → 飛竜牙の太刀

 獣爪の手甲 → 飛竜鱗の手甲

 獣爪の足甲 → 飛竜鱗の脚甲

 毛皮の鎧 → 飛竜鱗の鎧


 に装備変更。


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― 新着の感想 ―
[一言] >それに、ゴブリンやオークに、女性が捕まったら……その……た、大変な目に遭わされるんだ。 ゴブスレキターーーー!!!! >ヤタ (あー、いちゃつくのは後にしてくれねーかな?) むしろ私はも…
[一言] 以前みたいに釣ればいいですね 数体ずつなら負けることは無いでしょうし
[一言] トールくん決死の覚悟ですね。 普通に考えれば、生き残れませんよね。 (前回やられてるし) 現状を解決する手段は如何なるものか、 期待大ですね。
2020/06/16 20:53 退会済み
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