表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
32/186

第三十二話:閑話:勇者の場合

 別のβテスターの場合。

 勇者視点


『ダイブ・コンプリート。新たなエデンへようこそ。我々は、あなたの来訪を歓迎します』


 新しいVRゲームを先行プレイ出来ると聞いて応募してみれば、見事当選。

 義務や制約も少しあったけれど、気になるものでもない。楽しんでプレイして、感想を報告すればいいような感じだったから、なにも考えずにゲーム開始したものの……。


 俺、勇乃進(ゆうのしん)は、さっそくブルーになっていた。

 というのも、普段からゲームに使う名前の『ユウ』が、既に使われていたから使えない、といわれたから。


 アキラとシオリには、ユウでいくって言ってるしなぁ……。どうしよう?

 名字をもじった『イクス』や名前の一部の『シン』を使ったときは、二人に見つけてもらえなかったこともあって、『ユウ』の名前は使いたかった……。


 その時、ふっと思い付いたものがあった。


『ユウ』と同じように、自分の名前を使いつつ被らない名前。


『ユーノ』。これでいこう。


 ゲーム開始すれば、すぐに妖精がサポートしてくれて、戦闘もこなし、スキルも使い、拠点で傷んだ武器も直して、


 ……まあ、その、食事だけは、自分で何とかした。


 ファウと名付けたこの少女型の妖精はまだ若い個体だそうで、生産は苦手と自分で言っていた。

 けれど、彼女の明るい性格は、アキラやシオリと合流できなかった俺の、確かな癒しとなっていた。


「おやすみ、ファウ。良い夢を」


『おやすみっ、ユーノ!』



※※※



 さて、二日目。

 今日は、森へ行ってみることにした。


 大分遠いようだけど、周囲には草原しかない。

 草の中にはなにか素材もあるのかもしれないが、そもそもファウが生産は苦手としている。俺も、なにか作るのは苦手だ。

 なので、やることは、遠くの森へ行くことくらいしかないのだった。


 ……で、拠点はどうするのか? という話になったのだが……。


「《収納》」


『……ええーーっ!? 拠点って、アイテムボックスに収納できたのーーーっ!?』


 できたみたいだ。


 ログハウス状の拠点。


 リビング、キッチン、トイレ、浴槽の無いシャワーだけの風呂、二階に、鍵のかかる個室が二つにトイレ。


 2~3人で生活するには、十分な広さだった。


 俺と、アキラと、シオリの三人なら、十分。


 ……まあその、三人とも、料理とかできないんだけどな。


 その点だけは、心配。


 いやいや、絶対安全な拠点を、移動先へ持っていけるのは大きなメリットだ。




※※※



 ……で、10分後。やって来ました。森の前。


 徒歩で一日はかかるとファウは言っていた。なのになぜ、10分で森の目の前にいるのか?

 それは、


『ほんとは、いけないことなの。だから、内緒ね?』


 妖精の、ファウの能力のようだった。


 遥か遠くの森へ。移動は徒歩。

 挫けないか。それだけが心配だったが……。


 実際のところ、移動は一瞬だった。


 ……ま、まあ、気を取り直して、森へ。




※※※


 森での戦闘と採取もこなし、適当に昼食も済ませ、エンカウント率の低さから、森歩きにだんだん飽きてきた頃のこと。

 突然、ファウが耳に手を当て、辺りの様子を伺いだした。


『ユーノ、魔物だよ! 10体くらいの群れ。大丈夫?』


「よしきた! 片っ端からぶった斬ってやるぜ!」


 ファウの案内で森を駆け抜け、魔物の群れに飛び掛かり、


「ツインスラッシュ!」


 剣術スキルLV1から使える技、《アーツ》を起動。

 通常より早い速度での二連撃。ゴブリン二体が光の粒子へ変わり、ドロップを落とす。


 ……で、固まった。


 俺も、ゴブリンどもも、ゴブリンに組み敷かれている少女も。


『……うーん? ユーノ、どうするの?』


「た、助けてくださいっ!」


「あ、ご、ゴブリンども、その子を解放しろ!」


 呆れた様子のファウの言葉で、少女、ゴブリン、俺の順で我に返る。


 なんたる失態か!


 ゴブリンどもは、せっかくの獲物……獲物? を奪われまいと、少女を押さえ付けている三体を除いて、残りが前に出て壁になるが……


「甘いぜ、《ワイドスラッシュ》!」


 武器の長さの数倍の範囲を攻撃できるアーツを繰り出せば、ゴブリンの壁ごとき一撃で光の粒子へ変わる。


 あとは、


「《ファストトリック》!」


 超高速で移動するアーツで一気に距離を詰めて膝蹴りを叩き込み、


「《ストレート》!」


 武器を持たない左手で、ストレートなパンチをぶち込み、


「これで終わりだぁっ!」


 最後の一体を剣で貫けば、あっという間に掃討完了。


 あとは、少女を助ければ……。


「み、見ないでください……」


 ……ごめんよ? バッチリ見ちゃった。


 ……いや、さ、その、無事を確認するためだったんだよ? わざとじゃないんだ。ほんとだよ?



 The DO ・ GE ・ ZA ☆



 日本人の謝罪の最上位、土下座をして許しを乞う。


「きみの気が済むのなら、蹴りつけてもいい。踏みつけてもいい。好きなようにしてくれ」


「……え? あ、あの……」


 少女の、戸惑いの声が聞こえる。けれども。


「きみが許してくれるまで、頭を上げるつもりはない。さあ、気の済むまで、何度でも、語彙(ごい)がなくなるまで(ののし)りつつ、踏みつけてくれ! それで、きみの気が済むのなら!」




『……ねぇ? ユーノ? ……混乱してるの? ゴブリンになんかされたの?』




 心底呆れ果てた、ファウの声。


 結局、少女が、


「命の恩人を踏みつけるなんて……。どうか、許してください……」


 と、泣きべそかきながら土下座したところで、俺の土下座は意味を成さなくなった。



 ・クエスト: 魔物の領域に進入しよう ……crear!


 ・クエスト: 現地人(NPC)と接触しよう ……crear!


 ・緊急クエスト!: 現地人(NPC)を救出しよう ……crear!


 ・クエスト: 現地人(NPC)との好感度を高めよう ……crear!


 ・シークレットクエスト!? : ラッキースケベを発生させよう!? ……sineyarh!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >sineyarh  …あ、死ねや! か。
[良い点] シークレットクエスト(?)の存在が、 なんだかあるあるで笑っちゃいました。 [一言] 勇者君は、初心者らしい初々しさで、 無難なスタートを切りましたね。 これから彼が、どんな冒険をするのか…
2020/06/04 07:11 退会済み
管理
[一言] ユーノイイキャラですねw >・シークレットクエスト!?: ラッキースケベを発生させよう!? ……sineyarh!! 詳しく( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ