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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
3/186

第三話:なんだこれ?

 自らの足で、新たなエデンに降り立つ。

 木製の扉を通れば、一瞬の浮遊感。直後に着地。まるで、身体が重力を思い出したような感覚。


 曖昧(あいまい)だった身体が、はっきりとした輪郭を得たというか。


 ああ、今なら分かる。


 さっきの曖昧さは、夢の中で目を覚ます感覚。

 今の鮮明さは、現実で目を覚ます感覚。


 なるほど、納得だった。


 周囲を見渡せば、広く大きな木造の建物内。

 木の匂いがする薄茶色を基調とした落ち着いた雰囲気で、個人的には好印象だ。


『そこに鏡があるから、自分の姿を確認しな』


 クソな羽虫が、顎をしゃくる。

 せっかくの妖精さんも、表情と態度で台無しだ。しゃくれてしまえ。


 枠は木製で、花や木の彫刻が見事な、大きな姿見に僕の姿を映す。

 ……いや、分かっていたよ。実は、この部屋というか建物に来てから、違和感が凄かったから。


 でもさ、言わせてくれないかな?


「なんだよ、これ……」


 姿見に映るのは、どこかで見たことがあるような顔立ちの、少女。……少女。


 おかしい。僕は男だ。ふざけるな、責任者出てこい。


 色々頭に浮かぶが、声など出てこなかった。


 ため息一つ。

 仕方ない。目の前の現実に向き合うとしますか。これはゲームだから現実とは言わないかもしれないけど。


 改めて、姿見に映る自分のアバターをよく見る。


 たれ目がちの優しげな目、

 低すぎず、形のいい鼻、

 日本人形のように整った和風の顔立ち。

 長く艶やかな黒髪は胸元まで伸びており、

 元々小柄で細身だった身体は、さらに細く頼りなく。

 肩幅は狭く、

 腕は細く、

 腰はくびれていて、

 しかし、胸はすべすべの手に収まらないほど大きく。



 僕自身の理想とする女性像。亡き母の若かりし頃を写し取ったかのような、大和撫子な和風美少女がそこにいた。



 半袖短パンの薄い上下姿の自分の姿を、両手で隠すように抱き締めた。


「……うううっ。なんでこんなことに……」


 半泣きになれば、鏡の中の自分も目に涙を浮かべる。


 ……これが、ゲーム? ヴァーチャル?


 そんな疑問も浮かぶものの。


『キャラメイキングで何も弄ってないんだから、それがお前の姿だろ』


 何言ってんのお前?

 そんな言葉が聞こえてきそうな呆れた声。

 認識のずれに、違和感が強くなるけど……。


「……痛い……」


 ほっぺをつねると、ちょっと痛い。


『痛覚半減は効いてるか?』


 これで半分なようだ。

 強くつねったから、実際は倍痛いんだろうね。

 痛覚の再現は驚いたけど。

 技術は、ここまで進歩したんだな、と感心する。


 ……それより、恥ずかしいんで何か着るのください。

 妖精さん、お願いします。

 僕は、男だよ? 本当だよ?


 男子にガチで告白されたこともあるけど。

 女子の制服を無理矢理着せられたら、女子寮の管理人に気付かれなかったけど。

 男子トイレに入ると、たまに女子トイレに押し込まれるけど。ちゃんと男子の制服着てるのに。

 そのときの男子、めっちゃ必死だけど。

 もう間違えるなよとか言われるけど。


 だけど、僕は、男だよ? 本当だよ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 後書きの部分に萌えました( *´艸`)
2022/02/01 20:12 退会済み
管理
[一言] ……それより、恥ずかしいんで何か着るのください。 →『orz』のようなイメージをしてしまいましたw 普通のVR技術系はサクサクとアバターが決まっていくのに、こちらの作品はここでコケるんです…
[良い点] そうきましたか。 これは面白くなってきましたよヽ(^o^)丿 [気になる点] 理由を考えず物語を楽しむことにしましょう(笑) [一言] >しゃくれてしまえ。 コレ好き(^^♪
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