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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
26/191

第二十六話:閑話:三日目、午後から夜

 AEOスタッフルームにて。開発室主任:赤井視点。

(注)連勤三日目。少し仮眠した。


 三日目もまた、目の離せない展開の連続だったが、事前に少し寝た。ちょっとやる気出た。梅原へのお仕置きはまた今度にしよう。

 でも、絶対あとで泣かす。


 それより、森に行った手段も、現地人(NPCのこと)の少年を救った手段も、まだ15の子供とは思えない。

 や、若い発想ってやつかね?


 ……いや、俺はおっさんじゃねぇぞ? まだおっさんって歳じゃねぇぞ?


 それよりそれより、なんとけしからんことをしとるんじゃろうか?


 少年、そこ代われ? そしたらミコト嬢になんでもあげちゃうよ?


 LV UPポーションとかー、

 スキルLV UPポーションとかー、

 奥義書とかー、

 魔道書とかー、

 ドラゴンの素材とかー、

 オリハルコンのインゴットとかー、


 なんでもあげちゃうよ?


 おいちゃんとイイコトせんかー?





 ごほん、ごほんごほんっ。


 咳払いが聞こえて、我に返った。

 慌ててよだれを拭き、訪問者に振り返れば、《勇者》君の担当の女性スタッフの岩崎だった。


「んんっ、ど、どうした? 岩崎?」


 おいちゃんとイイコトしにきたんかー?


 ……やべぇな。落ち着こう。岩崎は真面目で実直な性格で、やや潔癖気味な女性スタッフだ。男性恐怖症気味に思える相手に、ふざけるのも笑って許される程度にしとこう。


「……ん、主任、ちゃんと寝てますか?」


 男が苦手なくせに、他人のこと心配する岩崎に、ちゃんとしようと頬をはたいてみる。


 ……や、無理だわ。寝そう。コーヒーぷりーず。


「はい。少し待っていてください」


 悪いな、岩崎。待ってると寝そうなんだわ。



 岩崎が砂糖とミルクがしっかりと効いた濃いコーヒーを淹れて戻ってきた時には、俺は夢の世界の入り口にいた。

 今そっちに逝ったら戻ってこれないところだ。

 社員食堂でもらえるサンドイッチと、大きく切って食べ応えのあるジャーマンポテト、乾燥野菜入りグリーンクッキー、ごま塩生姜クッキー、七味唐辛子クッキー、胡椒クッキー、わさびクッキー……って、待て待て。付け合わせがおかしい。

 野菜スープ無い? ……いやいや、もらって来なくていいから。いただきます。



 サンドイッチとジャーマンポテトとコーヒーで遅い昼飯を済ませ、改めて岩崎に向き合う。


「すまん岩崎。助かった。……で、《勇者》君になにか問題があったか?」


「はい。本日午前、近場の森で冒険者と接触しまして」


 うん、一応、現地人と接触するには早いと思うが、想定内ではあるな。

 森で日をまたいで活躍する冒険者の存在までは、考慮してもしきれない部分があるしな。


「その冒険者が、あの、大変な目に遭う直前で、《勇者》が颯爽と助けに入りまして。その後、最寄りの町へ向かいました」


 うーん、第一次βテストの段階では、森の中の開拓村ならともかく、町にテスターが行くことは想定してないんだが。


「その途中、森で増え続けている魔物の、大規模な討伐が準備されていて、その冒険者が持ち帰った情報次第で色々決定するところだったと聞かされていました」


「で?《勇者》君の返事は?」


 まあ、聞かなくても分かるけど。


「もちろん行くと。止めますか?」


「いや、討伐には参加しても構わん。それよりも、予想される規模は? 味方冒険者の戦力と敵魔物の戦力差は? 概算の予想で構わん」


「それが……」


 冒険者側20程度に対して、魔物は最低200規模。それを、複数の上位種が率いていると。

 岩崎の話を聞いていけば、冒険者側はほとんど決死隊と変わらないと思えた。

 今、《勇者》君に死なれても困るんだよな。

 ほんとに《死に戻り》出来るか、テストが完了してないし。


 うーん……。ここは、上の判断を仰ぎましょうかね。




「……ふむ。判断保留は良い選択だな。その《勇者》がどこまで出来るかなど、現状では判断が難しいだろう」


 で、夜。いつもの時間。

 俺の上司、固太りのゴツい部長に丸投げ。

 お出迎えは、唐辛子クッキー。さっそくムシャムシャやって、むせていた。

 そして、熱い紅茶を勢いよく飲んで、辛み強調。悶絶していた。


 面白すぎる。今度はわさびクッキーでも食わせてみるかな?


「ゲホッゲホッ。……ふう、ひどい目に遭った。……で、何の話だったかな?」


 面白すぎる。辛さで記憶が飛んだかよ?


「《勇者》に、なにかしますか? という話です。生還するためになにかボーナスを付けるか、一度死に戻りをさせてみるか」


「必要ない」


「……は?」


 俺は、アホヅラを(さら)していたと思う。


「どちらも必要ない。この程度で生還できない《勇者》など、必要ない」


 はあ、スパルタなことで。


「この辛いクッキーは好かん。用意するなら別のものにしておきなさい」


 岩崎、甘党の部長は辛いクッキーお気に召さなかったようだぞ? 減点だな。あとでお仕置き決定。可愛く泣かせてやる。覚えてろ。



 ……でもなー、クエストがあったわけだよ。隠しクエストだけど。


・《現地人と接触せよ》

・《討伐部隊に参加せよ》


 この二つ。報酬出さにゃならん。決めてないけど。


 うーん、バランスが難しいよな。あんまいいのあげられないし。

 ミコト嬢の時のように、ワイバーンの素材とかあげるわけにもね。拠点でないから生産設備使えないし、付いてる妖精もなぜか生産苦手みたいだし。

 ならスキル? 装備? ……うーん、ポーション詰め合わせ?



 どうするのがいいかなー。



 ミコト嬢、俺にも膝枕してください。

 きっと良い案が浮かぶと思うから。



 報酬の内容と送るタイミング。各パターンを抽出、検討作業に移る。


 現状と今後の主な影響を検討。


・レベルアップまたは経験値入手。

(→影響、低。効果、低。(ただし、上がるレベル次第)


・スキル入手。

 →影響、高。効果、高。(ただし、入手するスキル次第)


・装備入手。

 →影響、高。効果、高。(ただし、入手する装備次第)


・ポーション詰め合わせ。

 →影響、低。効果、中。(ただし、ポーションの種類と数次第)





 今夜も徹夜の可能性有り。ちくせう。

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― 新着の感想 ―
[一言] >(注)連勤三日目。少し仮眠した。 ……(ブワッ)。 赤井さんの生活が、完全に異世界に転生する前のそれ( ˘ω˘ )
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