表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
25/186

第二十五話:閑話:賢者の場合

 別のβテスターの場合。

 賢者視点


「……ふう」

 一冊読み終えて、満足のため息を吐いた。


 ゲーム開始から既に二日目。

 情報とスキルを漁るのはこの辺でよいだろう。


 現状について考えてみる。


 これは、ゲームの体を装った、異世界転移だろうか?


 そう思う理由は簡単。


 ・ログアウト出来ない。

 ・疲労を感じる。

 ・空腹、喉の乾きを感じる。

 ・ほこりや汗で、体が汚れる。


 など、など。


 しいて上げれば、それらをなんら疑うこと無く自然に受け入れている点も、そうだ。


 ゲーム的な部分があるのは、間違いない……と、思う。自信はないけど。

 視界の端っこで、心配そうな、何か言いたげな表情の、虫のような羽の生えた、少年のような姿の妖精がいるから。


 ……その妖精は口下手か、緊張しているか、あるいは、何らかの理由でほとんど言葉を発しない。

 私……シオリのいびつな精神が産み出した妄想の産物と言うのでなければ。


「お腹が減ったわ。何か食べ物を頂戴。それと、手伝うことは?」


 インデックスと名付けた妖精は、無言で首を振り、厨房へと飛んでいく。そのあとを、鱗粉状の光の粒が舞い散る。


 綺麗だ、と思いながら、あとを付いていけば、インデックスが急に振り向いて、驚愕の表情をしている。すぐに前を向き、また振り返った。何と見事な二度見だろう。


 まあ、理由は分かる。


 何せ、ゲーム開始から今の今まで、書斎……というか、書庫のような部屋で、一日目は乱雑に積まれた大量の本を、がら空きの本棚に整理整頓しながら詰めていく作業を行っていたからだ。

 初日は、本の整理が終わった段階で力尽き、気が付いたら床で寝ていた。


 体は痛かったけれど、毛布が掛けられていて寒くはなかったからよしとして、二日目は、整理した本を読む作業に移った。

 当然、読みながら食べ、読みながら飲み、トイレが限界になったときだけ部屋を出て用を足す。

 そんな時間を過ごしていたから、食堂で食べるという行為をしないものと思っていたとしても、なんら不思議じゃない。


 そんな本の虫たる私も、つい今しがた前期文明の歴史書を読み終えたばかり。


 その前には、何故かスキルを修得出来る《奥義書》、魔法を修得出来る《魔道書》もあり、スタートダッシュは上々の結果になったと思う。


 そこで、一旦読書をやめて、戦闘や採取などするつもりだった。


 (ゆう)(あきら)と会った時のために、アイテムボックスには役に立ちそうな《奥義書》と《魔道書》を複数忍ばせている。

 戦闘用の頑丈な杖や、魔法の威力を上げる杖、武器として装備できる本も確認した。

 別の本には、いくつかのページに封印されている魔物もあり、それらは召喚して使役できるようだし、準備は万端といえた。


 ……だからといって、時間はそろそろ夕方。

 外へ出るのは明日にして、今日はご飯を食べて寝てしまおう。




「ごちそうさまでした」


 可もなく不可もなく。

 そんな、無難な食事を終えて、改めてインデックスに感謝を伝えた。

 料理など全く出来ない私からすれば、出される食事に文句などあろうはずもない。むしろ、感謝しかない。


 特においしくもなかったけれど、決してまずくはない無難な食事でも、作れる人は料理人と同格だと思う。本気でそう思う。


 しっかりと感謝を伝えれば、無口だけれど感情表現が豊かな妖精は、顔を赤くして照れながら頭をかき、のちにくねくねと体をくねらせていた。……ちょっとキモい。


 備え付けの五右衛門風呂に水を張る段階で、魔法を試してみる気になった。


「……ん……《ホット》、《ウォーター》」


《ウォーター》は、手の平から水を出す魔法。水道の蛇口を捻った程度の水の量と勢いが基本。しかし、手の平から水を出すのは、術者にとって分かりやすいから、と《魔道書》に書かれてあった。

 つまり、たとえ分かりにくくても、別の場所から水が湧くようにも出来るということ。そして、実際成功している。


《ホット》は、物質の熱量をある程度上昇させる魔法。しかし、触れていなくても熱量を上げることは出来ると《魔道書》に書かれてあった。

つまり、認識さえ出来れば構わないということか?


 現に今、私の両手からは、ものすごい勢いのお湯が生み出され、見る間に五右衛門風呂を満たしていった。


 ゆるい三つ編みにしていた長い髪をほどき、ローブを脱げば、下着姿。


 痴女かよ? と、インデックスに抗議すれば、それが、魔術師の基本なのだと言う。……インデックスが、耳を澄まさないと聞こえない、か細い声で、申し訳なさそうに言う。


 森を歩いたり、戦闘したりすれば、ローブの中は汗だくになる可能性があるとか。

 だから、僧侶や魔術師などは、ローブの下は裸か下着姿が基本だと言う。


 いや、痴女かよ?



 石鹸とかシャンプーとかコンディショナーとかは? と聞けば、素材があれば作れるという。

 言外に、本の整理と読書で二日潰した私を(なじ)っている気がする。

 いや、この、広い洋館のような拠点の二階から見える、森に行ってみようと誘っているのかも。

 素材は森にたくさんあると言っていたし。



 でもそれ、もう明日でよくない?


・リザルト

《遠見》、《発見》、《聞き耳》、《生活魔法》、その他修得。



○装備

 頭:魔女の帽子

 胸:布の下着

 腰:布の下着

 腕:革の手袋

 脚:革のブーツ

 外套:魔術師のローブ

 その他1:魔女の箒

 その他2:


○武器

 メイン:戦闘用長杖

 サブ:飛び出る魔物図鑑 (召喚用装備)


○初期スキル

 ・本LV1

 ・攻撃魔法LV1

 ・回復魔法LV1

 ・ダブルスペルLV1

 ・最大MP上昇LV1



○スキル:

 ・杖LV1

 ・本LV1

 ・攻撃魔法LV1

 ・回復魔法LV1

 ・付与魔法LV1

 ・生活魔法LV1

 ・筆記LV2

 ・速読LV4


 ・ダブルスペルLV1

 ・チャージマジックLV1

 ・マジックミラーLV1


 ・最大MP上昇LV1

 ・魔力上昇LV1

・魔防上昇LV1

 ・消費MP軽減LV1

 ・攻撃魔法強化LV1

 ・回復強化LV1

 ・付与強化LV1


 ・遠見LV1

 ・発見LV1

 ・聞き耳LV1


○称号:

 ・《本の虫》

 ・《読書家》

 ・《探求者》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こういうたまに別視点が入る小説好きです! 世界観を多角的に観察出来ますし、奥行きが出ますよね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ