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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2ー2 テストの終わりに
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第百七十九話:トンカツ

 ヤタが集めておいてくれたゴーレム・コアを利用して人型ゴーレムを作って、手の空いたちびっ子たちに《北の街》に薬草を売りに行ってもらう。

 ホームポータルを使って孤児院まで転移して、護衛付きで冒険者ギルドまで行って、帰ってくるだけの簡単なお仕事。の、はず。

 ……でも、ちびっ子たちが戻って来るまで、はらはらそわそわして何も手がつかなかったくらいで、いっそのこと一緒に行った方がよかったんじゃ……。と思ったあたりで、孤児院の院長をしていたライラさんに、信じてあげなさいと諭され我に返った。

 帰ってきたら、ぎゅーっとハグしてあげようと思っていたけれど、晩ご飯の用意をしている方がいいのかなと思い立つ。


「よーし、今夜はトンカツを作ります。ミナト、手伝ってね。……あ、使うのはオーク肉だから、オークカツ?」


「オレでいいなら手伝うけどさ。トンカツでもオークカツでも、うまけりゃどっちでもいいよ」


 そこらへん大事だと思うけどな。まあ、いいか。


 まずは、深めのお皿を何枚か用意します。

 お皿に、小麦粉、薬草卵の溶き卵、パンをおろし金ですりおろしたパン粉をそれぞれ別にして入れます。

 揚げ物用の鍋と揚げ油を用意すれば、準備完成。


 さて、取り出しましたるは、厚さ2cmほどに切ったオーク肉。脂身もある美味しいところ。

 オーク肉はちょっと硬めのお肉なので、念のため叩いて筋切りをします。

 ワイバーンの爪で作った包丁は、まるで力を入れなくても簡単に切れて楽ちん。

 切った豚肉……オーク肉の両面に、小麦粉をなじませます。

 まんべんなく小麦粉がついたら、余計な小麦粉を軽くはたいて落としたあと、溶き卵にくぐらせます。

 お肉に卵がコーティングされたら、パン粉に移してしっかりとパン粉をつけます。

 そしたら、ほどよく熱した揚げ油に衣付きのお肉をそっと投入。油がはねないようにそっとね。

 衣がきつね色になったら、油から揚げて金網を乗せたお皿に移してお肉を休ませつつ余分な油を落とします。

 あとは、2〜3cmくらいの幅に切って、野菜と一緒にお皿に乗せたら、できあがり。


 さてさて、熱いうちにアイテムボックスにお皿ごと入れて冷めないようにしつつ、次々に揚げていかなきゃね。


「ミナト、衣付けはどんな感じ?」


「……こ、こんな感じ……」


 ひどく不器用だと自覚があるミナトは、こういうのは自信なさげ。

 でも大丈夫、上手くいってると思うよ。


「上出来。みんなおなかいっぱいになるくらい、じゃんじゃん揚げていくよー」


「ミコトちゃん、街に薬草を売りに行った子たちが帰ってきたよ」


「リンドくん、分かったよ。……あ、リンドくんちょっとお願いが」


 ちびっ子たちが帰ってきたというので、がんばらないとと思ったところで、ふと気になることが。


「なんだい? ミコトちゃん? ミナトちゃんもお疲れさま」


「……お、おう……」


 トンカツって、油の匂いがけっこうするけど、エルフ的にはどうなんだろうって疑問。

 エルフは揚げもの平気なのかな?


「トンカツを作ってみたんだけど、試食をお願い。ミナトも、はい、あーん」


「そういうことなら、いただくよ。……うん、油の匂いが食欲をそそるし、ザクッとした外側と歯ごたえがありつつも思いのほか柔らかい肉がとても美味しいね」


「いやオレ手がふさがって……もぐもぐ……。うん、美味しい。とんかつソースがあれば、きっともっと美味いと思うけど」


 一口サイズに小さく切ったトンカツを爪楊枝に刺して食べてもらうと、反応は上々。でもミナトはもっと美味しい状態を知ってるからか、物足りなさを感じるみたいだね。


「じゃあ、塩をふったやつ。2人とも、はいどーぞ」


 今度は、衣に塩を軽くふって少しだけ味付け。

 こっちはさらに美味しそうに食べてたよ。

 これなら、大丈夫そうだね。


「ミコトさん、夕食を手伝いに来たわ。……あら? 油のいい匂いがするわね」


 台所にライラさんが来たので、ライラさんにも試食をお願いしてみる。

 けっこうな高齢に見えるライラさんも、トンカツは高評価。

 よし、じゃああとは、人数分揚げるだけだね。


「私はスープを作るわね。メインがお肉だから、野菜のスープにするわ」


「あ、ライラさんお願いね」


「遅れてしまってごめんなさいね。私はサラダを用意するわね」


 あっという間に野菜を刻んでスープを煮込むライラさんに戦慄しつつ、ミナトと一緒にトンカツを量産していると、リラさんが申し訳なさそうに台所に入ってきた。


「リラさんお願いね。あ、これの試食もお願い」


 しっかりと手を洗っているリラさんの口に、一口サイズのトンカツを近づける。すると口を開けたので食べさせてあげる。


「あら、美味しいわ。ミコトさんの作る料理はどれも美味しいけれど、これは子どもたちが喜びそうね」


 美味しそうにもぐもぐするリラさんに、喜んでくれるといいなあ。と言えば、きっと喜ぶわよ。と笑い合う。


 で、揚げたて熱々のトンカツを提供したその日の夕食。

 半ばパニック状態になっちゃった。

 トンカツが美味しすぎて。

 でも、前回みたいにお腹痛くなっちゃう子が出ないように、トンカツのお代わりはなし。

 お肉と油だし、食べ過ぎて戻しちゃうと体にもよくないからね。

 お代わりはないから、よーく味わって食べるんだよー。と声をかけると、スンとおとなしくなるちびっ子たちに、ちょっとびっくり。

 食べるのが遅い他の子のお皿から取っちゃうような子もいないので、その点はホッとするけどさ。


 好きなだけ食べさせてお腹痛くなっちゃうのと、物足りない思いをさせちゃうのとだと、どっちがいいんだろうね?


 我慢させちゃうのもなあって思うけど、おなかいたいってぐずる子を見るのも嫌なんだよね。


 難しいなあ。




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― 新着の感想 ―
トンカツ食べたくなってきた( ˘ω˘ )
 もっと食べたいと思ってるところでやめるのがベストだと思います。  また食べたいって原動力になる。
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