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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2ー2 テストの終わりに
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第百七十七話:表裏

 見上げるほどの巨体、太くて大きくて立派なトレントとミツバチ……ハニービーの組み合わせは、意外なほど上手くいったようで、トレントはのっしのっしと大股でゆっくり体を揺らさないように進み、定位置と思われる場所に座り込むようにして動かなくなった。

 しばらくすると、ハニービーたちが少しずつ集まってきて、新しい巣箱に馴染もうとしているみたいだった。


 ……ハチミツ、たくさん採れるといいなあ……。




 さて、場所は変わって、北区の異界………じゃなかった。毒草・キノコエリア。


 毒を持っていそうな植物が活発に動く(襲いかかる)という、ホラーな光景が見られた場所だけど……。


 ばーさんことバフォメットと、ゴスケさんの1体が、仕切りのされたザルに毒草やキノコや毒々しい色合いの葉っぱや木の実をせっせと収穫していた。


 ……何してんだろ?


「バフォメット、なにしてるの?」


『うむ、人の子とエルフたちよ。ここは良い毒草とキノコが豊富にあるな。良きことだ』


 ……良い毒草って……。


「……うーん……。なにに使うの?」


『うむ、良い質問だ。毒を抽出し、濃縮し、精製すれば、強力な毒薬や麻痺薬に。配合を変えれば、解毒薬や解麻痺薬などになる。眠り薬や混乱、盲目、魅了など各状態異常を引き起こす薬剤やそれらを回復する治療薬なども作れるのだ』


 あや? 意外とまともな用途だね?


『毒と薬は表裏一体。やってみると楽しいかもしれぬぞ?』


 そう言って、ニヤリと笑うバフォメット。

 ヤギの頭とは思えないほど表情豊かだけれど、薬はともかく毒は扱いたくないなぁ。


『よい、よい。人も悪魔も邪神も、好むもの好まざるものがある。必要でなければ、好まざることなどやらずともよいのだ』


 僕が顔をしかめたのを見てか、無理に勧める気はないみたい。


『とはいえ、知識は武器になる。毒薬だけでなく、毒剣や毒矢も戦闘には有効である。手札を増やすことにも繋がるゆえ、覚えておくといい』


 ひとつうなずいて、作業に戻るバフォメット。


 うーん、毒矢かぁ……。


 戦いの役に立つというのなら、考えてもいいのかな……?


「毒の扱いは危険だから、無理に取り入れなくてもいいんだよ。知識は武器になるという言葉どおり、必要に応じて判断すればいいんだ」


 トールくんもそう言ってくれてるし、そうしようかな。


「なにより、毒を使うと、肉がダメになる」


 神妙に言うトールくんに、大きくうなずく。

 お肉大事。


『おお、そうであった。薬草や甜菜などが繁茂している区域に魔力草などがあったゆえ、優先して増やしてはどうだ? 魔力を回復するポーションが作れるようになるぞ?』


 お肉大事とうなずき合う僕らに苦笑しつつ、思い出したように魔力草の話題を出すバフォメット。

 増やすには、植える場所を確保しないとダメだよね……。


 真っ先に思いついたのは、バフォメットの言った北東の薬草・甜菜エリアだけれど……。


「…………うーん…………。鉢植えとか、どうかな……?」


『それが可能かどうかは、エルフの夫人に聞くとよい。生存競争に打ち勝つ野生種が良いのか、効果を高めた改良品種が良いのかは、我では判断がつかぬゆえな』


 むーん、そっかー。リラさんに聞いてみた方がいいんだね。

 魔力回復薬は、欲しいよね。

 材料さえあれば、僕も作れるかもしれないし。



「………………なあ、ミコト? アレ、放置でいいのか?」


 ミナトが指さす方では、根っこを足のようにして動き回る大きなヒマワリみたいな花? と、その攻撃を捌き、倒さないようにして花びらを1枚1枚引っこ抜いていくゴスケさん3号の姿が。


 動くヒマワリは、腕みたいに動く茎の先にある葉っぱを手裏剣みたいにして飛ばしたり、根っこを地面に潜らせて足元から槍みたいに突き出したりしてるけど、ゴスケさんは難なく避けて花びらを摘み取ってる。



 …………その花びら、なんに使うんだろうね?



『幻覚を引き起こす薬剤の原料である』


『パニックフラワーっていう、混乱する花粉を振りまくハタ迷惑な魔物なんだが。骨には効果がないから相手にもなっていないな』


 それじゃあその花びらの花粉は、吸い込むと幻覚見るの!? 


『毒花粉ごとき、オレがいれば防ぐから怖がることはないぞ』


 そうは言うけどさ、ちびっ子たちに悪影響がないようにしてよね?


「…………ミコトと、バフォメット。…………会話、しているのか…………?」


 ステラが目を白黒させてる。

 そういえば、僕が口に出していない思っただけのことに対して、返事するようなタイミングでバフォメットが答えをくれるね?


『そなたは表情豊かでとてもわかりやすいのだ。表現に出ずとも、身にまとう雰囲気も伝わりやすい。それは、良きこともあれば、悪しきこともあるであろう』


『悪しきモノなら、退ければいいだけだ』


 うんうんとうなずくバフォメットに、ヤタが歯をむき出しにして威嚇するように言い放つ。


「そうだね。悪しきモノが寄るのなら、斬り伏せるだけだよ」


 いざそのときを想像したのか、剣呑な雰囲気を醸し出すトールくん。



 ちょっと、なんというか、その雰囲気、ザワッとするんだよね……。

 ミナトも、ブルッと体を震わせてるし。

 よーしよし。怖くない怖くない。




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― 新着の感想 ―
毒を極められたら、メッチャ強そう( ˘ω˘ )
 なんかカオスな植物が多いなぁ…(^^;)
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