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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2ー2 テストの終わりに
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第百七十五話:ばーさん

・ホームポータルの転移先を追加。


 現在の転移先

 ・《拠点》地下資材置き場

 ・《北の街》西区境界付近の孤児院

 ・《エルフの里》《世界樹》根元の小屋

 ・《王都》貴族街 《ナイツ伯爵家》邸宅



 さて、戻ってきました我が《拠点(マイホーム)》。


 おじいちゃんはお城で《忌まわしき黒》が他に潜入していないか探すお仕事を言いつけられているので、しばらくは戻ってこられないから、《北の街》の領主の人に宛てた王様からの書状は僕が持っていかないといけないんだよね。


 無人の開拓村をどうするかも決めなきゃだけども、今日は《拠点》でのんびりしてもいいよね?


「あ、お姉ちゃんおかえりー」


「ただいま。もうごはんは食べた?」


「うん。今日はねー」


《拠点》の地下に設置されてるホームポータルを通じて帰宅して、上にあがれば、さっそく年少組のちびっこが1人駆け寄ってくるので、ハグしてあげる。

 朝ごはんを食べたか聞けば、嬉しそうに朝食の献立を教えてくれる。

 そこで初めて、収穫可能な作物が増えたことを知る。

 今日は拠点でのんびりするつもりだったし、作物の様子とか見て回ろうかな。



 いつもどおり、まずは東の畜舎から。


 朝早くの薬草もぐもぐタイムは終わったらしく、ニワトリも牛も豚も思い思いの場所でのんびりくつろいでる。

 寝転んでた豚が、ふいに頭を上げたかと思うと立ち上がって拠点の方を見ている。それも、1頭2頭ではなくほとんど全部の豚に魔豚に猪が。

 豚たちがふごふごと鼻を鳴らして待っていると、拠点の方から何かを持ってこちらに来るちびっこ2人。


「あ、お姉ちゃんにお兄ちゃんたち」


 ちびっこたちがバケツに入れて持ってきたのは、朝食に使ったと思われる野菜や果物の皮や芯などのくず。

 何をするのかと思えば、群がる豚たちを怖がることなく野菜くずをポイポイ投げていた。

 野菜くずに群がる豚たち。

 僕とミナトはきょとんと首かしげ。


 何しているのかと問えば、野菜くずなどの生ゴミを肥料にしようと土に埋めると、豚たちが掘り返して食べていたのを見つけたのだという。

 野菜くずも食べられると主張するちびっこたちに、エルフのリラさんは、野菜くずを肥料にして、もっと美味しい野菜や果物を作るのよ。と教えれば、ちびっこたちももっと美味しい野菜や果物に思いを馳せて肥料づくりを手伝うことにしたと。

 けれど、豚たちはそういうことは言っても理解してくれないらしく、せっかく埋めたのに掘り返されちゃうくらいなら、豚たちにあげちゃいなさいと元孤児院院長のライラさんに言われて、直接豚にあげるために運んでいたんだって。


 僕らがいなくても、ちびっこたちだけで20人はいる現状、野菜くずもそれなりの量が出るはずで。

 けれど、豚たちも20近くいるわけで、あっという間になくなってしまう。


 各畜舎には、無限供給される飼料があるはずなんだけど……。

 ……あんまり、おいしくないのかな?


「なんかねー、べつばらなんだってー」


 ちびっこの片方が、ニコニコしながらとんでもないことを言う。

 えっ? この子たちまさか、豚の言葉が分かるの?


「バーさんが言ってたんだよー」


「えー? メーさんだよー?」


 ばーさん? めーさん?


 誰のことかと首かしげ。

 ミナトは、あっ! と声を上げてるから、誰のことか分かったみたいだけど……?


「ねえ2人とも、バーさんメーさんは、あっちの方に住んでるヤギ頭のバフォメットのことかな?」


 苦笑しつつ北区の方を指差して、ちびっこたちにトールくんが尋ねると、


「あたりーっ」


 きゃっきゃと喜ぶちびっこ2人。


 ……どうやら、バフォメットはどうぶつの言葉も理解できるみたい。


 なにそれすごい。僕も、牛とかニワトリとか何言ってるか知りたい。


「……ぅわ」


 ミナトの驚く声に振り向けば、とても大きな牛の姿のカトブレパスが背中にちびっこたちを乗せてのっしのっしと移動中だった。

 お手伝いしてたちびっこ2人も、目を輝かせてカトブレパスへ駆け足。ぼくもわたしも乗せてーとおねだりしている。

 どうするのかと思えば、カトブレパスは尻尾を器用に動かしてちびっこを1人ずつ持ち上げ、背中にそっと乗せてまた歩き出した。


 きゃっきゃとはしゃぐちびっこたちにハラハラしながら、声をかける。


「みんなーっ、はしゃいで落ちないように気をつけるんだよーっ。カトブレパスーっ、ちびっこたちが落ちないようにお願いねーっ」


 はーいっ、と元気よく返事するちびっこたちと、まかせろー、とばかりにしっぽを振るカトブレパス。


 良い遊び相手になってくれているようで、なにより。


 そのカトブレパスに、トサカが生えた大きなトカゲみたいな姿のバジリスクが、ズンズンと足音立てて近寄っていくけれど、


「うーん? なーにー?」


「どしたのー?」


 きょとんと首をかしげるちびっこたちがカトブレパスの背中にいるのを見ると、なんかしょんぼりして去っていった。


「……バジリスク、なにしに来たんだろうね?」


「……さあ? また格付け争いじゃないか?」



 首かしげなちびっこたちも、カトブレパスが動き始めると、またきゃっきゃとはしゃぎだす。


 僕としては、ちびっこたちが落ちないかすごく気になるけれども、カトブレパスはしっぽでフォローしているようだから大丈夫かな?


「……うん、バケツ、片付けておくね」


 トールくんは空のバケツを持って拠点の方に行こうとしたので、スキル《浄化》でバケツを綺麗にしておく。


「遊ぶなら、片付けしてからにしなさいと、本当はその時に教えないといけないんだけれどね」


 リンドくんは元々孤児院にいたちびっこたちの様子に苦笑してる。


 元気いっぱいの笑顔で遊ぶ姿は、孤児院にいた頃は見れなかったかもしれないね。




 遠くに聞こえるテノールの歌声は、ナーガかな?



 平和で、良いなあ。




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ほっこり( ˘ω˘ )
 肥料はどうしましょうね?
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