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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2ー2 テストの終わりに
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第百七十二話:二十二日目

 目を覚まして、体を起こし、周りを見渡す。


 夜明け前のまだ暗い室内。見覚えのない豪華な部屋の、大きなベッドに、僕とミナトとトールくん。


 ……あれ? ここ、どこだっけ?


 うーん? と首をひねって、昨日のことを思い出す。


 あ、そうそう。《忌まわしき黒》のことでトールくんのおじいちゃんと一緒に王様と会ったら、兵士の人がすでに入れ替わってて、王様に襲いかかってきたんだっけ。

 それに対処したら、夕食に呼ばれて……というか、ヤタがお礼はご飯食べたいって言ったから、王様とかウィルさんの家族と一緒に夕食になったんだっけ。


 ……どれも美味しかったなあ……。


 ……メインのお肉がとんでもなく美味しくて、他のはどんなのだったか印象が薄いけど……。


「……うー……? ……ミコト、どうした?」


「ちょっと目が覚めちゃっただけだよ。まだ夜も明けてないし、もうちょっと寝ようか」


「……うぁー……。……くぅー……」



 僕が体を起こしてシーツがめくれちゃったから、ミナトが起きちゃったみたいだね。

 寝たふりしてるトールくんにピッタリひっついてシーツをかけ直すと、ミナトもまた寝ちゃった。


 ふと思いついて、ちょっといたずら心。

 寝たふりしてるトールくんの左腕をぎゅーっと抱きしめて胸を押し付ける。

 ちょっとだけ驚いたような気配があって、それだけ。

 つまんないなあとは思いつつも、胸はドキドキしてる。

 この鼓動が伝わればいいのにと、トールくんの肩に額をくっつけて目を閉じる。

 そうしてると、トールくんの体温を感じて、なんだか幸せだなあって思っちゃう。


 ずっと一緒にいようね。


 祈るような気持ちで、眠りに落ちていった。











 城内にある王宮に勤める侍従の朝は早い。

 誰よりも早く起きて、それぞれやるべき仕事に取りかかる。


 誰でもなれる仕事ではない。

 確かな身分が必要だし、それぞれ専門の技術も高いレベルで要求される。

 容姿も、身だしなみも、立ち居振る舞いも、どれもこれもクリアしなければならないとても大変な職場。

 その代わり、給金は多いし、尊い血筋の方に見初められれば、玉の輿な人生を掴むことも夢ではない職場。


 ……ただ、この侍女は、給金や玉の輿などとは違う別の目的で王宮に勤め続けていた。


 それは、尊い血筋の方の、寝顔を見る権利。


 それはそれは、日々様々な様相を見せてくれる。


 柔らかく温かい寝具に包まれて眠るのは、至福だ。

 その至福の時を奪い取る瞬間が、たまらない。


 普段凛々しい表情で部下に指示を出す方も、

 普段無表情で冷徹に書類を捌く方も、

 普段汗水垂らし時には血を垂らす方も、


 それはそれは、日々様々な様相を見せてくれる。


 冷血漢とか鉄面皮とか言われているお方が、ちょっと声真似して肩をトントンしたりすると、眠いよママとか甘えた声を出しちゃったりすることもあるのだ。



 ……ああ……。思い出しただけでも鼻血が出そう……。



 今日起こすお方は、いったいどんな表情を見せてくれるだろうか?


 気を抜くとニヤけてしまいそうになる表情を引き締め、努めて無表情にして現場へと向かう。


 今日の担当は、昨日急に晩餐と宿泊が決まった方々で、詳しいことは一切知らされていないものの、決して失礼のないように。と強く念を押されたのだから、よほど尊い方か、よほど恩があるか、それとも別の理由か。


 音量控えめにノックをして、音を立てずにドアを開く。


 夫婦が共に寝そべっても余裕がある大きなベッドに眠るのは……。




 ………………尊い………………。




 えっ? なにこれ? この3人兄妹? 夫婦? 見たところまだ十代半ばほどなのに2人も嫁がいるのこの男の子? うわぁ黒髪の娘の髪すごい綺麗。髪どうやって毛入れしてるのか聞いてみたい。白髪の娘はまだ小さいのに立派なお胸をお持ちでうらやま、いやいや大きいと肩が凝るから大変って先輩が自慢の巨乳を見せびらかすかのような仕草腹立つのを思い出したけどこの娘たちはどんな関係なんだろう? ともあれ3人とも幸せそうに寄り添って眠っててこちらまで勝手に幸せのおすそ分けもらって昇天しそう尊い。




 さあ、さあさあ、さあさあさあ。


 この御三方は、目を覚ました最初の一声は、どんな声をあげるのか楽しみで仕方がないわ。


 無音で深呼吸をする。

 この幸せな空間の幸せな空気を胸いっぱいに吸い込んで幸せのおすそ分けを勝手にもらって私も幸せな気分になるわよ。


 さあ、どんな表情を見せてくれるのかしら?


「もし、お客様、朝でございますよ。お目覚めになってくださいまし。もうじき朝食の用意ができます。起きて、朝食にいたしましょう」


 私の言葉に、黒髪の娘が反応して、眉が動く。


 もう一度声をかけると、黒髪の娘が目を開けて、…………鳴いた。



「…………ぅ、……んにゅぅぅ…………」



 なにこれ尊い!!


 なにこの可愛い生き物!!


 人間!? 妖精!? 天使!?


 天使ね!? 人の姿をした天使なのね!?


 なにこれ尊い!! 最高か!!


 ぺろぺろしたい! しないけど!!


 なでなでしていい!? しないけど!!


 今日はいい日だ! 朝からこんな尊い生き物を見れるのだから!


 旦那? それとも恋人くん?

 こんな尊い彼女の姿を見ないで寝こけてるとかふざけてる? その場所代われ私が挟まれるぅ。

 いやだめだ。この3人揃ってこその、この光景なのだきっと。

 幸せのおすそ分けをもらった私が、この尊い幸せを壊してどうする。




「おはようございます、お客様。水とタオルを用意してあります。顔を洗って支度を整えてくださいまし。もうすぐ朝食の用意ができますので、食堂へご案内いたします」




ヤタ『うわなにこいつこわいマジこわいなんでいきなり深呼吸とかしてるんだわけわからんこわい』



ミコト「ヤタ、どうしたの? なんだか今日は甘えんぼさんだね?」


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― 新着の感想 ―
変態だーー!!!!
 病んでるなぁ…
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