第十六話:三日目、朝
《彼女》は、むしろやらかした。
目が覚める。……で、いきなり悲鳴をあげるはめになった。
「……えっ? う、ひゃぁぁぁぁぁっ!?」
視線の先には、おすわりしたまましっぽをブンブンする二体のコボルト。
それが、僕の悲鳴を受けて、しっぽぴーんと立てて両手を耳に当てて伏せをした。
……なんか可愛い。
「……あれ? ……えっと……?」
僕の部屋に、二体のコボルト。なのに、しつけがちゃんとされたワンコみたいに伏せしたまま。
……うーん? 何が起きてるの?
『うるせーなー。なんだってんだよ?』
「あ、おはよう、ヤタ。ねぇ、なにがどうなってるの?」
『……あぁ、そいつらか……。おまえ、夜中に寝ぼけて契約したんだよ』
「……寝ぼけて?」
『あー、寝ぼけてたよ。覚えてねぇだろ?』
「……うん、覚えてない」
一生懸命思い出そうとしたけれど、昨日は布団に入ったところで記憶が止まっている。
どうあっても、思い出せなかった。
『とりあえず、名前をつけてやれよ』
ヤタが、めんどくさそうに言う。
それもそうか、と思って二体のコボルトに顔をあげるように促す。
「うるさくしてごめんね? ……うん、もふもふ可愛いね」
頭を撫でつつ二体を見比べて、名前を考えるけど……。
ぶっちゃけ、名前とかつけるの大変だ。
名前の由来まで考えて、疲れてしまうから。だから、フィーリングでいいんだよ、と自分に言い聞かせて……。
「よし、決めた。きみはジョン、きみはメグ」
シェパードに似た、精悍な顔立ちに逞しい体つきのコボルト(オス)を、ジョン。
レトリーバーに似た、たれ目系で穏和な顔立ちのコボルト(メス)を、メグと名付けてみた。
ステータス画面のログが自動で表示される。
・スキル《禊》を使用。
→成功。
・スキル《奉る》を使用。
→失敗。MPが足りません。
・契約の結晶 (コボルト)×2を使用。
→コボルト二体と契約。
・コボルトAを、『ジョン』と命名。
・コボルトBを、『メグ』と命名。
うん、ログが昨日の分も表示されるのは助かるね。
『契約したモンスターは、引っ込めておくことも出来るが、どうする?』
ヤタが言うには、契約モンスターは、アイテムボックスに似た専用の異空間に収納しておくことが出来るそう。
その状態だと、少しずつ傷を治すことが出来る他、スタミナも減らないというメリットがあるそう。ただ、外に出してすぐは戦闘に参加できないみたい。
逆に、出した状態だとスタミナが……うん、というよりも、お腹が空いていく代わりに、即座に戦闘が出来るみたい。
さて、どうしようかな? ……というよりは……。
「ねえ? ジョンとメグ? きみたちは、普段はどうしたい? ハウスでお昼寝してる?」
ぴーんと立っていたしっぽが、へたりと床に落ちた。
契約モンスター専用異空間をハウスと表現してみたけれど、どうやら伝わったみたい。
「それとも、普段から僕と一緒にいる?」
今度は、ちぎれんばかりの勢いでブンブンと振られている。
うん、一緒にいたいってことだね。なら。
「うん、それなら一緒にいようか。おいで」
手を広げてみれば、二体とも手を舐めてから顔を擦り付けてきた。
ふふ、くすぐったい。
「ご主人さまをお守りしますワン」
シェパード似の精悍な印象のジョンは、頼もしいことを言ってくれる。
「お側においてほしいワン」
レドリーバー似のおっとりな印象のメグは、可愛いことを言ってくれる。
二体とも…………可愛い!
コボルトの毛皮(小)×8を消費して、毛皮の鎧×2を生産。
コボルトの毛皮(小)×116 → 108
コボルト(ジョン、メグ)
獣牙の剣、獣牙の槍、獣爪の手甲、獣爪の足甲、毛皮の鎧を装備。