第百五十一話:プレイヤー戦
『案ずるな。これは《プレイヤー戦》である。妖精の介入を防止しただけで、危害は加えぬ』
「誰かの妖精さん、ヤタを離して?」
『案ずるな。この戦いが終わったら、解放する。これは、我ら妖精の上位存在の意思でもある。我ら妖精は、ただ見守ることだけを許可されている』
『……テメェ……《プレイヤー戦》のシステムを悪用してやがるのか?』
『使えるものを使っているまで。さあ、自身が寄り添う者が、命を懸けてぶつかる様を、特等席で観戦しようではないか』
そう言って、ヤタを抱えたまま高く飛び上がっていく妖精。
……なんか、こう、スポーツ観戦? な雰囲気だけれど……。
ニヤリ、というか、ニタリ、というか、妙に凄みのある笑みを浮かべる妖精に、なにやら悪意を感じるんだよね……。
「ミコト、来るよ」
「うん、トールくん。予定どおりいこう。ぐれ太、レーヴェは空からファイヤー。鬼一、次郎、三郎、前進。ダイコンヤクシャたちは散開して遊撃、他のみんなは防壁波陣」
ぐれ太とレーヴェで、空から火炎放射して近寄る敵を減らしつつ、地面に火の壁を作ってマミーの包帯に引火させていく。
鬼一、次郎、三郎は、進軍してくるマミーたちを蹴散らしながら前進して、最後尾にいると思われる敵首魁を撃破するのが目的。
甜災ダイコンヤクシャとダイコンヤクシャたちは、体の小ささを利用して戦場を動き回り、数を減らしていく役割。
オーガの一太郎、二太郎、三太郎、四太郎は広く陣取って、金棒を大きく振るい敵をまとめて弾き飛ばしていく。
その隙間を埋めるのが、ミナト、トールくん、ステラ、リンドくん。
魔法や弓矢や遠距離攻撃のスキルを駆使して、壁役の一太郎たちを援護する役割。
ここにヤタがいると完璧で、ゴスケさんたちがいると過剰だね。
……僕? 倒した敵をアイテムボックスに入れて、戦場をスッキリさせる係。
それと、付与が切れたらまた掛けて、たまに回復する係。
だんだん暗くなっていくから、明かりがほしいところだけれど……。
ぐれ太とレーヴェのファイヤーでそこら中が明るいから、死角があんまりないんだよね。
次々と押し寄せるマミーや包帯を巻いたスケルトンや、ローブを重ね着してるレイスの軍勢も、次第に勢いが弱まり、ぐれ太たちとダイコンヤクシャたちだけで倒すことができるようになっていた。
なので、僕らも警戒しながら前進して、残骸になったアンデッドをアイテムボックスに入れながら、きちんとトドメを差していく。
敵首魁のところに着く頃には、だいたい終わっていた。
上位種のキョンシー、グール、スケルトンナイト、スケルトンメイジが、ボロボロになって転がっていた。
今戦っているのは、キングマミーと鬼一、レイスの上位種っぽいのと次郎・三郎。
レイスの上位種には、属性無しの物理攻撃はほぼ完全に効かないみたいで、次郎と三郎は鬼一への邪魔をさせないために、攻撃を繰り返していた。
ただ、属性がある攻撃であればちゃんと通るようで、ぐれ太が空気を読まずファイヤーしたら、あっさり燃え尽きていた。
王冠を被りマントを羽織る姿のキングマミーは、古びた剣と紋章が刻まれた盾で鬼一の猛攻を凌いでいたけれど、レーヴェのファイヤーを盾で防いだことで隙ができて、鬼一に全身を切り刻まれ倒れた。
キョンシー、グール、スケルトンナイトにスケルトンメイジと、順繰りにトドメを差してから、キングマミーにもトドメを差す。
キングマミーが敵首魁だったようで、トドメを差すと同時にファンファーレが鳴り、戦闘の終了を告げてくる。
《WINNER!》
上位種のドロップアイテムを拾い集めて全員の状況を確認きていると、ヤタを抱えたマッチョな妖精が降りてきて、約束どおりヤタを解放した。
『見事だ。今回は我らの敗けだが、次回があればまた戦おう。さらばだ』
……なんだかなあ。なんなんだろうね。
『……よくやったな』
なんだかへろへろなヤタが、それでも労ってくれる。
「おかえり、ヤタ」
僕も、笑顔で迎えてあげた。
《緊急クエスト:死者の軍勢》clear!
全プレイヤーに対し、緊急のクエストを発行。
北の地より侵攻する死者の軍勢を討伐してみせろ。
・依頼者:※※ (非公開)
・対象:死者の軍勢の討伐。
・報酬:参加報酬で金貨10枚 + 討伐報酬。
・制限時間:死者の軍勢が《街》に到達するまで。
・補足事項:死者の軍勢 = 今回は、マミーを中心とした、日中も活動するアンデッドの軍勢だ。
とりあえず500ほど用意した。
せいぜいがんばってくれ。
・特記事項:戦闘に参加したプレイヤーには、参加報酬として1人につき金貨10枚。
・特記事項:討伐報酬は、チーム単位でまとめてリーダーが受け取る手はずになっている。
・リザルト
・参加報酬 : 参加プレイヤー 2人 = 金貨20枚
・討伐報酬
・腐った肉 × 200
・古びた骨 × 200
・死霊の衣 × 100
・呪いの血 × 42
・呪われた骨 × 42
・灰 × 42
・古びた包帯 × 400
・呪われた服 × 100
・骨の大盾 × 40
・《掌打》の奥義書 × 1
・《闇魔法:ライフスティール》 × 1
・《疾風突き》の奥義書 × 1
・《呪与:生命》の魔道書 × 1
・《闇魔法:ダークアロー》
・《闇魔法:ダークネスミスト》
・キングの王冠 × 1
・キングの王笏 × 1
・キングのマント × 1
・プレイヤー戦勝利報酬 (敗北側プレイヤーが所持する中でレア度がもっとも高いものからランダムで抽出)
・ミスリルの丸盾(家紋入り) × 1




