第百四十七話:《鉱山》
転がってきた大きなダンゴムシがそそくさと去ってから、《鉱山》内部を目指して進む。
『ミコトみたいなプレイヤーの場合、採掘ポイントは見れば分かるようになっているが、知ってさえいれば、誰が見ても分かるだろうな。……ほれ、そこの、岩から結晶が突き出ているところがポイントだ』
ヤタが指差すところを見てみれば、まだ坑道内部に入っていないけれど、見える範囲でも3ヵ所採掘ポイントがあるみたい。
「結晶の色が違うな?」
ミナトが首をかしげながら言うけれど、なんの違いがあるんだろうね?
『主に、結晶に含まれている成分の違いだな。色が主な鉱物で透明度が純度だ』
「透明度って……。これ、すごい濁ってるね」
「岩の色した泥水を固めたみたいだな」
ミナトと2人で、ちょっと嫌そうに言う。
「周囲の岩と同じ色で、透明度もほぼ無い。つまり、周囲の岩と同じ成分ということだろうか?」
ステラも首をかしげてる。
「そうだね。ここはまだ鉱山の外側だから、雑多な石ぐらいしか採掘できないと思うよ?」
トールくんも苦笑してる。
「あ、みんな、ちょっと」
今度は、リンドくんが上を見上げてる。
つられて僕らも見上げると、崖を歩いて移動しているヤギが足を踏み外して転げ落ちてくるところだった。
「わっ、わっ」
「ぐれ太、キャッチだ」
「ぎゃーう」
(任せてー)
さっきのダンゴムシとは違い、ぶつかってしまいそうなヤギに驚いて慌ててると、ミナトが的確な? 指示を出してぐれ太が落ちてきたヤギを両翼でキャッチした。
キャッチされた当のヤギは、じたばた動いていたけれど、
「ぎゃー」
(動いちゃダメー)
ぐれ太が一声かけると、おとなしくなった。
・テイム可能です。テイムしますか? Y/N
テイム? なにそれ?
「なんかよく分かんないけど、崖を転がってきたからちょっとケガしてるねこの子。薬草食べる?」
ぐれ太にヤギを下ろしてもらってから薬草を差し出すと、チラッと僕の顔を見てから薬草をむしゃむしゃ食べてくれた。
・岩ヤギをテイムしました。
だから、テイムってなに?
「ねえ、ヤタ? なんかこの子テイムしたみたいだけど、テイムってなに?」
『テイムは、モンスターテイムのことだな。条件を満たすと魔物が仲間になったりすることだ。……普通は、モンスターテイマーというジョブの、モンスターテイムというスキルを使って魔物を従わせることを指す。今回は、そのヤギが、ミコトにずっと従ってもいいと判断したということだな』
「へぇー。……あ、ミナト。この子に薬草あげてみる?」
薬草を持ってた手をペロペロ舐めてくるので、おかわりがほしいのかなーと薬草を追加で出してみれば、むしゃむしゃと食べているので正解みたい。
「いや、オレはいいよ。……てか、ミコト。そいつどうするんだ?」
ミナトも食べさせてみたいかなーと聞いてみれば、断られちゃった。
「どうって、どうする? 一緒に行く?」
ヤギに目を合わせて聞いてみれば、同意するかのように、めええぇぇ~。と鳴いていた。
なんだかのんびりしてるなあ。
頭をこすりつけてくるので、撫でてあげると嬉しそうに目を細めてる。
周りを見てみると、日光浴してる大トカゲは相変わらずぐでーんとしてるし、周りの岩と同じ色のゴツゴツしたヘビもいるけど、敵意はなさそう。
『一応言っておくが、そこらにいる魔物どもは、より上位の魔物にビビって知らないふりしてるだけだからな』
「より上位の魔物?」
ヤタがアゴで示す方を見てみると、ぐれ太がきょとんとしていた。
「ぐれ太?」
「ぎゅー?」
(なにー?)
ちょっとピンとこなくて首をかしげると、ぐれ太もつられて首かしげ。
ついでに、岩ヤギも首かしげ。
「いや、ミコト。ワイバーンってそこらのザコよりよほど上位の魔物だろ」
ミナトからツッコミが入ってようやく分かった。
そっかそっか。別の魔物がどっか近くにいると思ったよ。
・リザルト
・岩ヤギ をテイムしました。
・《拠点》内部に畜舎を確認。購入可能な家畜の項目が解放されます。
・・解放項目 : 山羊 (ヤギ)
・《拠点》の拡張項目が解放されます。
・・解放項目 : 岩場