第百四十四話:手札
《トレード申請》
プレイヤー《ミコト》に対しトレードを申請。
先日は大量の素材をありがとう。
もしよければ、また交換に応じてもらえると助かる。
・依頼者:シン (プレイヤー)
・対象:魔物の素材。部位、種類は問わず。
・報酬:腐った肉、古びた骨、死霊の衣、呪われた骨、呪いの血、灰、古い和紙、古びた包帯
・備考:現状はこんなものしか出せないが、この中でほしいものがあれば、優先して渡そう。
夕食後、ちびっ子たちをお風呂に入れてあとは寝るだけになったあと、ミナトと一緒に作戦会議。
というのも、また別のプレイヤーからトレード申請が来たから。
相手の能力を下げる《呪与》は、敵が強いほど有効だということがよく分かったよ。
日中に倒した大きくて強いアントも、呪いの矢が当たって能力が低下すると、明らかに弱くなっていたし。
『二人とも、朗報だ。トレードという形であれば、ミナトのアイテムボックスからミコトのアイテムボックスへ持ち物を移せるようになったぞ』
「お? そうなのか? ならミコト、トレードするぞ」
「ミナト、アイテムボックスの中身を見れても、まだ使えないんでしょ? なにと交換するのさ?」
「銅貨でもなんでもいいだろ。あのデバフ掛ける矢をたくさん作るために、適当な素材を渡すから、なんとかっていうプレイヤーとトレードしてくれよ」
ミナトとのトレードで提示された素材は、それこそ大量だった。
つい、ビックリしちゃうくらいに。
僕らと出会う前に、それだけたくさんの魔物を、一人孤独に、衝動のままに打ち倒していたのかと思うと……。
ぎゅーって抱き締めちゃう。
もう離れないからね。
ずっと一緒だよ。
さて、お返しは、ちゃんとしないとダメだよね。
ミナトは銅貨でいいって言ってたけれど、金貨も銀貨もバランスよくあげちゃおう。
「……おい、ミコト。……まあいいか。それより、トレードだよ」
「うん。……でも、……うーん……」
腕を組んで、どうしたものかと首をひねる。
「ん? どうかしたか?」
「意外とね、交換に出してもいいような素材って、少ないなと思って。だいたいの素材はなにか作れるみたいだし」
「そりゃあそうだろうな。でもそんなん、今必要なものを優先して交換に出そうぜ。それとも、手持ちの素材になんか気になるものでもあるのか?」
気になるもの……。
ミナトにいわれて、なんかモヤッとしていたものがはっきりしそう。
そう。気になるんだ。手持ちの素材じゃなくて、トレードできるものの中で、 古い和紙 が。
だから、古びた骨と呪いの血と呪われた骨と、古い和紙を中心に。
ちゃちゃっとトレードして、筆、墨、古い和紙、内臓系から作れる なにかの血、ワイバーンの内臓から作れる 竜の血 を用意。
まずは試しに、墨 に なにかの血 を混ぜて、古い和紙 に《生産》スキル任せでなにかを書き込む。
・魔除けの護符 : 魔性の力をもって、魔性を退ける護符。複数枚使用することで結界を張ることができる。
……ふーん? なんか、他のもできそうだね?
・力の護符 : 張り付けると、一時的に 攻撃力 が増す。
《付与》と併用可。
・守りの護符 : 張り付けると、一時的に 防御力 が増す。
《付与》と併用可。
・速さの護符 : 張り付けると、一時的に 速さ が増す。
《付与》と併用可。
・攻勢の護符 : 張り付けると、一時的に与えるダメージが増す。
《付与》と併用可。
・守護の護符 : 張り付けると、一時的に 受けるダメージを軽減する。
《付与》と併用可。
・生命の護符 : 張り付けると、一定時間 HP が回復する。
《付与》と併用可。
・体力の護符 : 張り付けると、一定時間 スタミナ が回復する。
《付与》と併用可。
・非力の呪符 : 張り付けると、一時的に 攻撃力 が減る。
《付与》と併用可。
・軟化の呪符 : 張り付けると、一時的に 防御力 が減る。
《付与》と併用可。
・鈍足の呪符 : 張り付けると、一時的に 速度 が減る。
《付与》と併用可。
・打撃の呪符 : 対象に向けてかざすと、物理打撃の一撃を放つ。
威力は使用者の力に依存。
・斬撃の呪符 : 対象に向けてかざすと、物理斬撃の一撃を放つ。
威力は使用者の力に依存。
・魔撃の呪符 : 対象に向けてかざすと、魔法無属性の一撃を放つ。
威力は使用者の魔力に依存。
・追撃の呪符 : 張り付けると、一定時間攻撃が命中する度に追加ダメージが発生する。
威力は使用者のレベルに依存。
・防盾の護符 : 張り付けると、一時的に 魔法の盾 が顕現し、物理攻撃も魔法攻撃も自動で防御する。
多段攻撃や範囲攻撃は防げない場合もある。
・全強化の護符 : 張り付けると、一時的に 全能力 が増す。
《付与》と併用可。
・全弱化の呪符 : 張り付けると、一時的に 全能力 が減る。
《付与》と併用可。
・竜化身の護符 : 張り付けると、一時的に 全能力 が大きく増し、攻撃に《竜属性》が付与される。代わりに、効果時間中はスタミナが大きく減る。
《付与》と併用可。
・竜圧の呪符 : 張り付けると、一時的に 全能力 が減り、《竜属性弱点》が付与される。
《付与》と併用可。
・竜撃の呪符 : 対象に向けてかざすと、竜爪または竜牙の一撃を放つ。
・竜吐息の呪符 : 対象に向けてかざすと、炎のドラゴンブレスを放つ。
・竜盾の護符 : 張り付けると、一時的に 竜鱗の盾 が顕現し、物理も魔法も多段攻撃も範囲攻撃も自動で防御する。
竜属性の攻撃は防げない場合もある。
「……おい、ミコト。……おいってば!」
「ふや?」
気が付けば、ミナトに肩を揺すられていた。
「どしたの? ミナト?」
「どしたのじゃねーよっ。うつろな目で筆を走らせまくるのは、軽くホラーだぞっ!?」
「あやや? 今僕はそんな感じだったんだ?」
涙目のミナトに、首をかしげてみる。
普段《生産》スキルを使ってなにかを作ると、パッと光って一瞬でできあがっていたから、なにか違うスキルが発動してた感じなのかな?
涙目のミナトをよしよししつつ、なにかができそうな感覚に委ねてスキルに任せた結果を確認してみると、トレードで得た大量の古びた骨と呪いの血と呪われた骨と古い和紙は、弱体化を掛けられる矢と各種呪符の山へと変わっていた。
・護符 : 強化。自分や仲間に貼り付ける。
・呪符 : 弱化または攻撃。敵に貼り付けたり敵に向けて使う。