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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
1ー1 第一次βテスト
14/191

第十四話:閑話:姫騎士の場合

 別のβテスターの場合。

『ダイブ・コンプリート。新たなエデンへようこそ。我々は、あなたの来訪を歓迎します』


 新しいVRゲームを先行プレイ出来ると聞いて応募してみれば、見事当選。

 義務や制約も少しあったけれど、気になるものでもない。楽しんでプレイして、感想を報告すればいいような感じだったから、 なにも考えずにゲーム開始したものの……。


 ぼく、アキラは、さっそく絶望していた。


 まずは、身体が女になっていた。


 ……なんの冗談?


 ……ううん、冗談なんかじゃない。

 髪は金髪になってしかも伸びているし、上は本当に付いているし、下は本当に付いていない。


 頭は混乱の極み。けれど、まだまだ序の口だったみたい。


 次は、ジョブが、


◯特殊職

 ・姫騎士


 これしかなかったことだ。

 これしかないから、これでプレイするしかない。

 仕方なく『姫騎士』を選ぶ。


 ……女になった上、ジョブが姫騎士なんて……。


 でも、まだ、これで終わりじゃなかったんだ……!


 最後に、スキルが、



 ・くっ、殺せ!

 ・心は、屈しない!

 ・らめえぇぇぇ!

 ・んほおぉぉう!

 ・アーマーパージ


 これしかなかったんだよ!!



・くっ、殺せ!:

 ダメージを受ける、及び状態異常になった際、こんな感じに叫ぶと発動。

 HPが減った割合と受けた状態異常の数に応じて、物理防御、魔法防御が上昇。拘束された場合、上昇値は最大になりHPも回復する。

 敵全体を、『挑発』する。



・心は、屈しない!:

 ダメージを受ける、及び状態異常になった際、こんな感じに叫ぶと発動。

 MPが減った割合と受けた状態異常の数に応じて、MPが回復する。拘束された場合、MPは最大になりHPも回復する。

 敵全体を、『挑発』する。



・らめえぇぇぇ!:

 ダメージを受けた際、こんな感じに叫ぶと発動。

 戦闘中に受けたダメージに応じて、物理防御、魔法防御が上昇。拘束された場合、上昇値は最大になる。

 敵全体を、中確率で『魅了』する。



・んほおぉぉう!:

 ダメージを受けた際、こんな感じに叫ぶと発動。

 ノックバック効果を完全に無効化する。

 敵全体を、中確率で『魅了』する。



・アーマーパージ:

 防具を外す、または、防具が壊れて外れるたび自動で発動。

 発動するたび、速度が上がり、敵全体を、『挑発』する。




 なんで、こんなことに…………!




『落ち込んでるところ悪いけれど、さっさとチュートリアル始めるわよ?』


 ティータと名付けた女性型の妖精は、本当に容赦ない。


 今のぼくの姿は、腰まで届きそうな、長く綺麗な金髪に、控えめな胸と細い腰、水着みたいな柔らかい素材のビキニアーマーに、マント。

 腰には、太いベルトに取り付けられたミドルソードとダガー。


 これだけだ。



 …………これじゃまるで、痴女だよ!!



「ねえ、ティータ? せめて、武器スキルとか無いの? でなければ、盾でもいいんだけど……」


 既に泣きそうな、ぼくのすがり付くような声にも、妖精さんはどこ吹く風だ。


「普通、『姫騎士』になるには複数のジョブをコンプリートしなきゃならないの。わざわざ『姫騎士』になってまで、初期のスキルは得られないわよ。それと、『姫騎士』は、盾は装備できないわ。避けなさい」


 ううう……。ステータス見てみよう。


 HP:B

 MP:B

 力:A

 体力:B

 耐久:D

 器用さ:B

 速さ:A

 魔力:C

 魔防:D

 運:E


 …………なにこれ? えっ? えっ? なにこれ?


 物理特化で、紙装甲で、運は悪くて……。



 ダメじゃん!!



『防具なんて飾りよ? ミスリルの全身鎧を装備しても、ドラゴンの攻撃には耐えられないんだから』


 避ければいいのよ、避ければ。


 ティータはお気楽にそんなことを言う。

 けれど、運動も得意じゃないぼくは、チュートリアルのバトルでやられそうだよ……。


 ……ううう……。魔法職にして、勇くんのサポートをするはずだったのに……。


 膝を付いて落ち込んでいれば、ティータにつつかれて建物の外まで追い立てられた。


 脇腹をつつくのはやめてよね!

 くすぐったいでしょ!



 外へ出て建物を見上げれば、レンガを積み上げたような城……じゃなくて、砦?


 その砦の、中庭に出たようだった。


『ガイド妖精:ティータが申請。チュートリアル・バトルモード、起動』


 光の中から現れたのは、


 身長、一メートルくらい。

 頭には一本の小さな角。

 緑色の汚い体に、汚い腰布を巻いただけの姿。

 ファンタジーの定番の魔物、ゴブリン。


 いきなりなモンスターの召喚に、慌ててミドルソードを鞘から引き抜……くのがうまく出来ず、左手を鞘に添えて、右手でゆっくりと引き抜く羽目になる。


 これが実戦なら、致命的な隙になったと思う。けれど……。


『はあっ? なんでよ? ……それはこっちも……あーもう、分かったわよ。あとで補填しなさいよ?』


 ティータは耳に手を当てて、誰かと話しているようだった。


 その間、ティータの手から伸びる光の鎖が、ゴブリンの首に絡み付いていて、ゴブリンが苦しみながら逃げようとすればするほど、光の鎖は首に食い込んでいき……。


 そして、ゴブリンが光の粒子になって、消えてなくなった。


 ……あれー?


「ねぇ、ティータ? なにやってるの?」


 ぼくが問いかけて、ようやく状況が分かったみたいで、あ……。と呆けた声を出してから、顔をしかめて謝ってきた。


『ごめん。秘匿事項が絡むから言えないけど、とにかくあの汚いゴミを引っ張ってくるから、殺しまくって。理由はあとで話す』


「わ、分かったよ」


 それからしばらくの間、ぼくは、光の鎖に拘束されて動けないゴブリンをミドルソードでザクザクやる作業に取り掛かった。


 剣スキルとか手に入らないかなーとか考えながら。


 小鬼の魔石×100

 小鬼の角×100

 小鬼の骨×100

 小鬼の頭蓋骨×100

 汚い腰布×75

 鬼の腰布×20

 鬼の反物×5

 折れた鉄の剣×30

 錆びた鉄のナイフ×30

 刃こぼれした鉄の鉈×30


『……はあ、バカみたい……』


 なんだか、ティータが落ち込んでいる。

 どうしたの? と理由を聞いてみれば、上からの指示でドロップ率をいじったらしい。

 そうでないと、運が最低値の『姫騎士』は、ロクなドロップがないって言ってた。


 うわあ、『姫騎士』、ほんとにダメじゃん。


 でも、そうしないと、ぼくが着る服を作れないって言われた。


 作れるの? 助かるよ。ありがとうティータ!


 万歳してからティータを両手でそっと包むようにして引き寄せ、ほおずりする。


 やーめーろー! と騒いでいたけれど、痴女みたいな今の格好をどうにかできるなら、なんだってするよ!!


 …………うん、ティータに怒られた。


 ティータの小さい体でアッパーされたら、信じられないくらい体か浮き上がり……てゆーか飛び上がり、すぐに意識が遠くなったと思ったら、ベッドの上にいた。


 ティータがすぐに目の前に来てたくさん謝ったから、許すことにした。ぼくも悪かったしね。


 ぼくが気絶している間に、ティータが色々作ってくれたみたい。



 汚い腰布×70を消費して鬼の腰布×7を生産。汚い腰布×5、鬼の腰布×27。

 鬼の腰布×18を消費して鬼の反物×3を生産。

 鬼の腰布×9、鬼の反物×7。

 鬼の腰布×6を消費して、グレーのジーンズ×3を生産。

 鬼の反物×3を消費して、白いブラウス×3を生産。

 鬼の腰布×3、鬼の反物×4。



 ブラウスとジーンズが三着ずつ。今はこれで十分だと思う。

 さっそく着よう。……女物だけど。


 鬼の反物は、トレードするって言ってた。

 なにと交換できるんだろ? ……てゆーか、誰と交換するんだろ?



 折れた鉄の剣×20を消費して、鉄の長剣×5を生産。

 錆びた鉄のナイフ×20を消費して、鉄のナイフ×10を生産。

 刃こぼれした鉄の鉈×20を消費して、鉄の鉈×10を生産。

 折れた鉄の剣×10、錆びた鉄のナイフ×10、刃こぼれした鉄の鉈×10を消費して、鉄のインゴット×15を生産。

 鉄のインゴット×5を消費して、鉄の胸当て×1、鉄の手甲×1、鉄板入りブーツ×1を生産。



 トレード:鬼の反物×4→契約の結晶 (ゴブリン)×2



『今はまだ使えないけど、もう少しレベルが上がれば下僕が出来るから、頑張んなさい』


 下僕って……。ティータ、言い方ぁ……。




・リザルト

 白いブラウス×3

 グレーのジーンズ×3

 鉄の長剣×5

 鉄のナイフ×10

 鉄の鉈×10

 鉄のインゴット×10

 鉄の胸当て×1、

 鉄の手甲×1、

 鉄板入りブーツ×1

 契約の結晶 (ゴブリン)×2


 頭:

 胸:白いブラウス

 腰:グレーのジーンズ

 腕:鉄の手甲

 脚:鉄板入りブーツ

 外套:鉄の胸当て

 その他1:白の水着 (ビキニ・上下セット)

 その他2:マント

 武器1:鉄のミドルソード

 武器2:鉄のダガー


(注)白の水着はビキニアーマーなどではない。

 アキラは騙されている。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 姫騎士も、〇〇でしたか。 あまりに酷いスキル構成に、 笑ってしまいました(笑) 自分なら、さっさとゲームを、 やめるレベルですね。 [一言] 前回の主人公に取り付いた何かといい、 いろいろ…
2020/04/26 07:53 退会済み
管理
[一言] 二人目キタッ!!!w やはり姫騎士といえば、くっころですよね!w
[良い点] おっと、場面転換! 新しい展開てすよ(*´∇`*) [気になる点] 妖精さんの名前の由来が気になります! あ、大丈夫なら教えて欲しいけど、 無理ならスルーで結構ですからね。 [一言] …
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