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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2 第二次βテスト
133/186

第百三十三話:拠点へ行く前に

 朝ごはんのとき、騒ぎになっちゃった。


 上質なハニーバタートースト、オーク肉のみそ漬け焼き、具だくさんの野菜スープ。

 それらは全部、できあがった直後の熱々の状態でアイテムボックスに収納して、食べる直前に出してならべたので、どれもホカホカ温かい状態。


 その上で、上質な食事を作るのは、僕自身初めてかもなので、甘く見ていたのはあると思う。


 上質な食事を食べた子どもたちは、興奮して落ち着かなくなったり、美味しいと大きな声で騒いだり、泣き出しちゃったり、お腹いっばいなのにおかわりしようとしたり、とにかく興奮しちゃって、落ち着くまでに時間がかかってしまった。


 お腹いっばい過ぎて動けなくなってしまった子どもたちの中には、お腹苦しいって泣き出す子もいて、少し慌てちゃった。


 回復魔法 《ヒール》をしたりステラと一緒にお腹さすってあげたりしてるうちにだんだん眠くなってきた子もいるから、午前中はこのままお休みかな。


「ミコト、洗いもの……って、寝ちゃったか」


「うん。何人かはもう寝ちゃった。ミナトも、洗いものありがとうね」


 報告ついでに様子を見にきたミナトの頭を撫でてあげると、くすぐったそうに目を細めてる。かわいい。



「ただいま。……なにやら、院の中に魔物が……魔物? がいるのだが……?」



 知らない誰かの声がしたかと思えば、戸惑いの声をあげている。


「「リンド兄お帰り~」」


 元気な方のちびっこたちが走っていくのに合わせて顔を上げると、ステラより少し年上くらいの男性。

 緑色のセミロングな髪を一つに括っている耳の長い青年……。


 あれ? そういえば、とステラの方を見れば、


「リンド兄さん、……その……久しぶり……」


 借りてきた猫みたいにおとなしく声をかけていた。


「ステラ、大きくなったなあ。それに、綺麗になった。トールも生きていたのをこの目で確かめることができたし、今日は良い日だ」


 ライラさんやトールくんがちびっ子たちを見るような優しい表情でステラのそばに寄り、抱き締めて、頭を撫でていた。

 ステラも、耳まで真っ赤にしていても、嫌そうには見えないね。


「こんにちは。はじめまして」


「こんにちは」


 少し間を置いてから、僕とミナトがあいさつ。

 それに対して、緑髪の彼は一つ大きくうなずいてから名乗った。


「ああ、こんにちは。リンドだよ。すまないね。客人をあとにしてしまって。昔馴染みと会って、やはり嬉しかったみたいだよ」


 リンドくんが僕やミナトを見る目は、トールくんみたいに優しいものだった。

 そのリンドくんの匂いをふんふん嗅いでるコボルトのジョンとメグに戸惑う姿がちょっと面白い。


「これは……この2体は……コボルト、で、いいのかな? 存在の格が、オーガを凌駕しているように思えるんだが……。でもまあ、なつっこいから、従魔、なんだよね?」


 2体とも、リンドくんに顔とか背中とかこすり付けてマーキングしてる。行動がまんま犬だよ。

 でも、この様子なら、心配はなさそう。


「2体とも僕の従魔だよ。短毛で精悍な顔立ちなのがジョンで、毛がふさふさで優しい顔立ちなのがメグ。あいさつして」


「「よろしくお願いしますワン」」


 ジョンとメグが声を合わせればリンドくんもうなずいてよろしくと言っていた。


「ところで、そろそろ状況を説明してほしいんだが……」


 苦笑しているリンドくんの視線をたどれば、まだ午前中であるのにも関わらずお昼寝タイムなちびっ子たち。中には、まだちょっと苦しそうな表情の子も……。


 これは、僕らが《街》に来た経緯も話さないとダメな感じかな?

 でもまあ、エルフの人なら経緯の説明自体は問題ないか。




「……と、いうわけで、この孤児院を僕の《第二拠点(セカンドホーム)》にさせてもらったんだよ。今日これから、僕の《拠点》の方に行くつもりだったんだけど……」


「ちびっ子たちが食べすぎでお腹痛くして、今はおねむなわけか」


「そんな感じだねー」


 時おり難しい顔もしていたリンドくん。説明を聞き終えて納得しているようだけれど……。


 ……なんか、ミナトがふくれてる? というよりは、警戒してる?


「ミナト、どうかした? リンドくんのこと気に入らない?」


「……彼がどうこうというか、エルフの若い男が、なあ」


「《里》でのことだね。異常な事態があって気が立っていたにせよ、同胞が迷惑をかけたね。すまない」


 ミナトの様子に得心がいったようで、神妙な表情で頭を下げるリンドくんに、ミナトは困った様子。


「いや、その……。悪かったよ。オレも、いつまでも気にしないようにするからさ、頭を上げてくれ」


「そう言ってもらえると助かるよ。でも、知らない相手に対して、警戒するのは大事なことだよ? きみたちはとびきり可愛いのだから、油断していると、さらわれてしまうんだからね?」


「……そういうのは、ステラに言ってやれよ」


 とびきり可愛いと言われて、ちょっと照れてるミナトはとびきり可愛いね。




 ……うーん? ところでステラ、リンドくんになにか渡してほしいってリラさんから頼まれてなかったっけ……?



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― 新着の感想 ―
[一言] みんな可愛いゾ( ˘ω˘ )
[一言]  うん、孤児にあんまりいいもの食べさせちゃダメだよね(^^;)
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