第十三話:神……降ろせない。
誰かが呼んでいる……。
深夜に目を覚ます。
部屋の床に、正三角形になるように。和紙を配置し、和紙の上に同じ量になるように塩を盛る。
《禊》LV1だと、正三角形が限界。
プレイヤーとしてのLVも低い。つまり、最大MPも低い。
やれることはまだまだ少ないけど……。
「スキル:《禊》」
正三角形の中心で正座し、スキルを声に出して発動する。
MPがぐっと持っていかれる感覚。一瞬、意識が途切れかけて体がふらつく。けれど、これで第一段階は終了。次は……
契約の結晶 (ワイバーン) と、ワイバーンの魔石 を取り出し、目の前に置く。
その二つと、大量のMPを献上すれば、第二段階は終了。
「スキル:《奉る》」
……なにも、起きない。
ステータスから、ログを確認する。
……うん、結果は単純。MPが足りなかった。なら……。
契約の結晶 (コボルト)×2 と コボルトの魔石×2 を消費して、コボルト二体と契約が可能です。
契約しますか? Y/N
もちろん、イエス。
「スキル《奉る》」
契約の結晶が光を放ち、光が消えたあとには、結晶と魔石が消えてなくなった。
けれど、二体の従魔の存在を感じることが出来た。
コボルトなら、《神降ろし》まで使う必要はない。
MPの消費も大したことはない。
これで、今出来ることは全部。
ワイバーンとの契約は、ミコトのレベルが上がるまでお預けだ。
『なあ、お前、誰だ?』
気が付けば、妖精がそばにいた。
生意気だけれど、気持ちが不安定で弟みたいに放っておけない印象。
《私》は、微笑んで妖精の問いに応える。
《ミコトの中に取り込まれた……怨念? ……それとも、残留思念かな?》
『ミコトをどうするつもりだ?』
感じるのは、強い警戒心と、ミコトを案ずる気持ち。……《私》まで心地よく感じるくらいの、心配する気持ち。
……うん、この子、とてもいい子だね。
《どうもしないよ。少しでもミコトを強くしてあげたいの……。うん、その上で、魔物の被害を少しでも減らしてあげたい》
『……残留思念だと……? お前は、何のために、誰のために、何をしようとしている?』
《……うーん、大きな街って、たくさんの兵隊さんたちに守られているでしょう? けれど、小さい村って、戦える人も少ないのよ?》
『だから、ミコトを代わりに戦わせるつもりか?』
《ううん、そんなことしない。ただ、ミコトを強くしてあげたいの。この子なら、きっと、自分を犠牲にしてでも誰かのために戦いそうだから……《私》みたいにね》
優しい妖精は、可愛い顔を歪めて、歯を食いしばっている。
妖精は、世界を構成する元素が、自我を持った存在なのだとか。
なら、妖精は、世界そのものと言っても過言ではないと思う。
……だからだろうか、《私》には、妖精が、《私》のことを、《私》の想いを正確に理解しているように思える。
……小さな村で、何が起きているか、とか。
……魔物によって、誰が犠牲になっているか、とか。
そういうの、全部。
《妖精さん、ミコトのことを、よろしくね? 《私》も、できる限りのことはするから》
『……それが、オレの役目だ』
あからさまに、不満だ! と顔に出ている。
妖精は、嘘を付けないって話、本当なのかも。
少し笑って、今日のところはこれでおしまい。
身体をミコトに返してあげる。
《妖精さん、おやすみなさい。ミコトを、守ってあげてね?》
ベッドに入って、目を閉じる。
明日の朝には、ちゃんとミコトに戻っているはず。
…………おやすみなさい。また明日。
『……それが、オレの役目だよ……』
どこか悔しそうなヤタの声が、深夜の拠点のどこかで、静かに響いた。
・リザルト
コボルト二体と契約。
・スキル:
最大MP上昇LV1
回復強化LV1
付与強化LV1
を取得。
スキル『付与』と『生産』取得ボーナス。
スキル:『装備付与』を取得。
称号:『従魔の主』、『?の加護』を取得。