第百二十七話:閑話:騎獣
十五日目の夕方《街》に到着し、宿で休んで明けた十六日目。
俺は、冒険者ギルドでうなっていた。
※※※
《クエスト:《街》に行こう》Clear!
第1次βテスター全員に対しクエストを依頼。
第2次βテストに合わせて、各1次テスターは一度《街》まで足を運ぶように。
冒険者登録に合わせて報酬を受け取れるように手配した。
・依頼者:運営
・対象:《街》に到達。
・報酬:前金:銀貨50枚、成功報酬:銀貨50枚。
・備考:すでに《街》に到達しているプレイヤーには、即時報酬が支払われます。
《クエスト:鉱石が足りない》
現在《街》では魔物素材は余っているが鉱石が全体的に足りない。
街より北東の《鉱山》で鉱石を採掘してきてほしい。
・依頼者:生産者組合
・対象:《鉱山》にて鉱石の採掘。
・報酬:鉱石の買取価格の上昇。種類、品質、量により変動。
・備考:移動だけで片道数日必要なため、準備を怠らないこと。
・備考:採掘隊の護衛依頼も同時に発行されている。団体で行動する場合はそちらをおすすめする。
・備考:生産者組合から冒険者ギルドに回ってきた依頼。《街》で十分な量の鉱石が出回れば終了するかもしれない。
《クエスト:鉱石採掘隊の護衛》
最近の魔物の発生状況により、武器や防具として消費している『鉄』が足りない。その他の鉱石も足りない。
街より北東の《鉱山》で鉱石を採掘する中規模な採掘隊を編成する。その護衛をしてほしい。
・依頼者:生産者組合
・対象:《鉱山》にて鉱石を採掘する坑夫の護衛。
・報酬:前金:銀貨30枚、成功報酬:銀貨50枚。鉱石の採掘量により追加報酬の可能性有り。種類、品質、量により変動。
・備考:冒険者ランク3以上、または、護衛依頼の経験者に限定させてもらう。クランでの参加も歓迎する。
・備考:準備期間3日の後、往路4日、採掘期間3日、復路4日の、計11日間の予定。十分に準備すること。
・備考:鉱石の値が上がっている現在、鉱石を狙った野盗の出現も考えられる。復路こそ警戒を怠らないように。
・備考:人数制限有り。依頼を受ける際はきちんと確認すること。
※※※
運営からのクエスト報酬で銀貨を大量にもらった上で、移動手段について冒険者ギルドの受付嬢に聞いてみたところ……。
「はい。私ども冒険者ギルドとしましては、馬や騎獣などを取り扱っている店舗や個人を紹介したり、仲介したりする事は可能です。……ですが、ユーノさんたちは人数が多く、また、馬や騎獣の世話をきちんとできない人を紹介してしまった場合、ギルド側の信用も損なう場合があります。
現状で馬や騎獣を買うかどうかはともかくとして、参考までに、馬、一般的な騎獣のランドリザード、戦闘もできるトラベルウルフなどの値段、特徴、世話に必要なものなどをまとめた資料がこちらになります。有料ですが、いかがです?」
「買います」
で、資料を買って全員で見ている最中だ。
……が、正直、全然ダメだ。話にならない。
馬は、速度は出るが餌と水がたくさん必要で、長時間移動し続けることができない。
ランドリザードは、揺れが少なく長時間移動し続けることはできるものの、馬ほどの速度は出ない。割と雑食で食事の量も多くは必要ないので現地調達も可能かもしれないが、夜は移動できず寒さに弱い。
トラベルウルフは、足も速いし長距離・長時間の移動にも耐えることができるし、オオカミなだけに戦闘力もある。また、環境の変化にも強くて夜でも移動できる。その代わり、乗り心地は悪いし値段も高い。しかも、餌は肉のみ。量も結構必要になる。
要するに、全員を運ぶには人数分の馬や騎獣が必要になるが、一番安い馬であっても、人数分揃えた上で世話するための資材一式揃えるとなると、資金が足りない。
では、荷物と人をたくさん運ぶことができる馬車はどうだろうか?
こちらもピンキリではあったが、メンバー全員が乗れて少し余裕があるサイズの馬車となると、値段が高い。
さらに、馬車を引くためにプラス馬2頭というと、完全に予算オーバー。
端的に言うと、今は無理、となった。
それは、みんなと相談してみても、今はまだいいんじゃない? となった。
騎獣を一体か二体用意しておいて、屋根のない荷車を引かせる程度なら……と思ったけれど、結局、テイマーや動物の世話をしたことがある者がいないと、難しいらしい。
村出身のカティとティアも、世話したことはあってもあくまで手伝いの範疇で、全部を担当するには自信がないという。
では、温厚で従順で手間がかからない騎獣は?
「扱いやすいといえば、ランドトータスという亀の騎獣もいますが……。やめておいた方がいいですよ? 動きがとても遅いので」
改めて受付嬢に相談してみたところ、そんな返事が。
レベルが上がれば、味方全体の防御力を上げる付与魔法の《防御陣》や、魔法の盾を形成して防御する《防盾》などのスキルを取得できるみたいだが、そもそも積極的には戦闘しないのでレベルを上げるのが難しいという問題もあるようだ。
他にも、飛べないけれど走る鳥のランナーバードというのもあるようだが、速い、賢い、長時間移動可能、ある程度の戦闘能力あり、餌の量は少なくてもいい、病気にも強い、水上移動もできるなどなど、至れり尽くせりな騎獣のようだが、なにしろ人気がありすぎて売る個体がいない上にめっちゃ高価とあって、現状は諦めざるを得なかった。
一番安い馬一頭でも、金貨が飛んでくみたいだしな。
そんな風に一旦諦めたところで、見知った人に声をかけられた。




