表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2 第二次βテスト
126/194

第百二十六話:閑話:経験値

 俺は、前衛でパーティーのリーダーで《勇者》でパーティー唯一の男だから。


 だから、みんなのためにもできるだけのことをやろうと思う。


 そのための第一歩として、強くなることはなにより大事だと思うんだ。


 ……《勇者》ユーノ



 十四日目。


 主に移動手段を確保するべく、《街》へ移動中。


 午前の休憩時間に、とうとう我慢できなくなってしまう。



「マキさん、ちょっといいかな?」



 鉄の鎧とメイスと大盾で武装している、パーティー最年長の女性にして、頼れる前衛の壁役にして、パーティーの相談役的なポジションをすでに確立しているマキさんに声をかける。



「はぃ? ……ええ、いいわよ? でも、どうしたの? そんな緊張した顔で?」



「えっと、その…………俺…………」



「はいはい、落ち着いて。深呼吸深呼吸。まずは、間違ってもいいから言葉にしてみて? 言い間違っても、後で訂正すればいいから」



 内容が内容だけに、緊張して言い淀む俺を優しく諭してくれるマキさん。


 アキラやシオリたちも、状況を固唾を飲んで見守っている。




 ……ふと、シオリと目が合う。




 しっかりと頷いているのを見て、ようやく腹が決まった。


 でも、緊張はしているので、何度か深呼吸をしてから、内容を告げる。



「……マキさん……俺、……俺……」



「うん、なあに?」



「俺を、男にしてくれ!!」



「言い方ぁっ!?」



 ちょっと離れたところで状況を見守っていたシオリがすっ飛んできて、その勢いのまま頭にチョップされた。結構痛い。



「ええっ!? ……ま、まあ、いいけれど? 私でいいの?」



「いいんかい! …………じゃなくて、ちょ、ちょっと、マキさん、ちょっと」



 アキラも苦笑しながら寄ってきて、シオリとマキさんと3人で少し離れてから、小声で話し合いが始まった。




「(……マキさん、あのね、ユーノが言いたいのは……)」


「(大丈夫よ、シオリちゃん。私、結構経験豊富だから。付き合って、関係があった男は10を越えるから。だから、大丈夫よ)」


「(そ、そうじゃなくてね?)」


「(マキさん、マキさん、ユウくんはね?)」


「(大丈夫大丈夫。アキラちゃん、大丈夫よ。ちゃんと分かってるわ。かつて付き合った男の半分くらいは、経験不足だったり未経験だったりしたから。おばちゃんに任せて。ちゃんと導いてあげるわ)」




 顔を赤らめてこっちをチラチラ見ながらシオリとアキラがマキさんと話しているけれど、同じくらい顔を赤くしたマキさんには、なんだか微妙に話が通じてないんじゃないか?






 …………いや、その…………マキさんって、()()()()が豊富みたいだから、実戦形式での稽古をつけてもらいたいって話だったんだけど…………。






「……あ、あはは……。いやいや、ごめんね? おばちゃん、なんか、勘違いしちゃったわ? ごめんね?」



「それは大丈夫。誤解が解けてなによりだよ。それで、返事は? 結構激しくやりあいたいから、痛い思いもすると思うけど?」



「だからユーノ、言い方」



「大丈夫よシオリちゃん。さすがにもう、勘違いはしないわ。……で、ユーノくん? きみは激しいのがお好みなのね? 私の勘違いでないなら、今のユーノくんと私とでは、まだそれなりに差があるわよ?」



「ああ、うん。実力と経験の差は理解してるつもり。俺としては胸を借りるつもりでぶつかってみたい。その上で、経験を積めればいいと思ってる。マキさんにメリットはないと思うから、断ってくれてもいいけど」



「大丈夫よ。付き合ってあげる。何度でもいいわ。暇があるときに声をかけてくれればね。料理中とか忙しいときはさすがに無理よ? それより、まだなにか言いたいことあるでしょう?」



「うん。……その、俺さ、まだ頼りないかもだけど、パーティーのリーダーで、男なんだよ。なにがあっても、どんな敵と対峙しても、みんなのこと守れるくらい、強くなりたいんだよな。そのためには、マキさんと経験するのが一番いいって思ったんだよ」



 ほんとにちゃんと誤解なく受け入れてくれるかどうか、結構心臓ドキドキしている。顔も熱っぽいかも。


 対するマキさんは、もう顔真っ赤だ。

 俺の緊張が伝わってしまっているのかも?



「(……いやー……なんだろ? おっかしいわぁ……。私こんなに惚れっぽかったかしら? ずっと年下の男の子にまっすぐ見つめられただけで、こんなにドキドキするとか……。なんか、おかしくない? 体は健康で若返っても、心は二児の母のつもりだったけど……。体と一緒に、心も若返ってるのかしら? 息子たちより若い子に、愛の告白じみたこと言われて、その気になってときめいちゃってる? …………ま、まあ、戦闘経験を積みたいっていうのだから、ボコボコにしてあげればいいのよね? その後、みんなで優しくしてあげればいいか。……いいわよね?)」



「マキさん、どうだろう? 俺を男にしてはくれないだろうか?」



「何度も言ってるとおり、いいわよ? お望み通りに、激しくしてあげるわね?」



 顔を赤くしたまま、いきなりメイスと大盾を構えて突進してくるマキさんに、心の準備ができてない俺は、ろくに構えることもできずに突き出された大盾に弾き飛ばされて意識がどこかへいっちまった。




 その後、アキラに膝枕された状態で目を覚ました俺は、体に問題ないことを確認した上で、マキさんと二人でたっぷりと汗を流した。



 いい経験を積めたんじゃないかと。




 ……ほぼ一方的にボコボコにされたけどなっ!?




 ……あんまりボコボコにされてたせいか、終わった後はみんな優しくしてくれた……。


 もっと強くなりたいぜ……。


 ……《勇者》ユーノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] メッチャ羨ましい( ˘ω˘ )
[一言]  わざと煽ってるとしか思えないセリフの選択(^^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ