第百二十四話:頼みごと
《チェインクエスト:《街》の冒険者ギルドのギルドマスターの書簡を貴族街に住むご隠居に届けよう》clear!
プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。
エルフの《領域》に侵入した《忌まわしき黒》の危険性を共有するための書簡を、引退した元伯爵のご隠居に届けてほしい。
よろしく頼む。
・依頼者:冒険者ギルド ギルドマスター ザック
・対象:エルフの書簡を貴族街のご隠居に届ける。
・報酬:なし (通常の依頼扱いで、依頼成功に加算される)
・備考:ご隠居に書簡を届けたあと、冒険者ギルドのギルドマスターに報告すること。
・備考:相手は隠居しても貴族なため、服装、行動、言動には細心の注意を払うこと。
・事前に訪問を通達し、許可をもらうこと。また、相手方の都合に合わせて訪問すること。
《チェインクエスト:ご隠居のおじいちゃんが王都へ向かう準備を整えるまでに、お願いを聞こう》new!
プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。
現在《街》には鉄を始め武器や防具の素材になる金属が不足している。
《街》の北にある《魔の森》から東に徒歩で2~3日のところにある《鉱山》から、鉱石を取ってきてもらいたい。
よろしく頼む。
・依頼者:ヘンリー・ナイツ元伯爵
・対象:《鉱山》にて鉱石の採掘。
・報酬:ナイツ伯爵家の紋章が刻まれた短剣。
・備考:鉱石の納入は冒険者ギルドにすること。
・備考:依頼達成した際は、伯爵家に報告すること。報酬は伯爵家にて渡す。
・王都へ向かう準備ができ次第出立するので、道中の護衛依頼を引き受けてくれると助かる。
「ところでな、ミコト嬢。ワシらが王都へ経つ準備を整えるまで、ひとつ頼みごとを聞いてはもらえぬか?」
「うん、なにをするの?」
聞けば、今《街》では、武器や防具を造るための鉱石が不足しているのだという。
代わりに、魔物素材は余っているものの、どれも弱い魔物から採れる質の低いものばかりで、本格的な武器防具を造るには心もとないものばかりだとか。
そのため、今は《街》の北東にある《鉱山》から鉱石を採取する中規模な採掘隊とその護衛の依頼が冒険者ギルドに出ているのだという。
採掘隊やその護衛に参加してもよいものの、貴族が指名依頼を出すケースもあり、おじいちゃんの名前で僕やトールくんを指名して依頼を受けてもらい、箔をつけておきたいとのこと。
冒険者としては、貴族から指名の依頼が来るのは名誉なことで、その後も様々な面で有利に働くという。
……うーん? 身内がそんなことやったらそれ、マッチポンプ? というか……。なんだか変じゃない?
まあ、トールくんにとって良い方向になるなら、それでいっか。
ぐれ太に乗って行けば、そんなに時間かからないだろうしね。
指名依頼の話は了承して、一端《拠点》に戻ってから《鉱山》を目指す方向で話がまとまったので、孤児院のみんなとお昼を食べてから、拠点に帰ることになったけれど……。
「やぁーーだぁーーっ!」
「いっちゃーーやーーっ!!」
お腹いっぱいごはんを食べられることよりも、単純に、懐かれたのが原因みたいで。
ごはん食べられなくてもいいからいかないでって、ちびっ子たちがギャン泣きして、困り果ててしまったよ。
院長先生やトールくんがなだめても全然ダメで、みんなで手分けして、だっこしたりあやしたりして落ち着くまでに時間がかかっちゃった。
「…………どうしよう?」
なにが理由でこんなに懐かれたのか分からないけれど、僕らが孤児院を離れるのをここまで嫌がるなんて考えもしなかったよ……。
「……うーん……。オレたちが街から離れようとするのを嫌がってるみたいだしなあ……」
僕やミナトが腕を組んでうんうんうなってると、思い当たることがあるのか、トールくんが遠慮がちにいう。
「……その、おれみたいに、離れたら二度と会えないかもしれないと思っていたなら……」
「でも、トールくんはちゃんと戻ってきたじゃないのさ」
「…………ミコト、トールは、死んだと聞かされたはずだ。その時の喪失感は、働いてある程度分別が着く年長組ならともかく、小さな子どもには耐えがたいものがあっただろう。離れてしまったなら、またそれを感じてしまうと思い、不安でしたかないのかもしれない」
思い付くことがあるのか、ステラが神妙な表情でいってくる。
……もしかすると、ステラもまた、離れて暮らす近しい人を亡くしたことがあるのかも。
「…………ポータルゲート」
不意に、ステラが、ぽつりと呟く。
「我らエルフの里に設置したポータルゲートを、ここにも置けないか?」
「おれは反対だ。この地区はそれほど安全じゃない。ミコトの拠点に悪しき心を持ったものが侵入するおそれがある」
『いや、違うぞトール。ポータルゲートは、通過する者を設定できる。悪しき思惑のあるモノどころか、設定したもの以外は通過できない。……問題は、設置できるゲートの子機がないことだが……』
『…………ところでミコト。これはなんだと思う?』
《クエスト:寮の建設》
素材は支給する。
こちらの指定した場所に《宿舎》を建ててもらいたい。
きみならば、《生産》スキルを使えばすぐだろう。
・依頼者:運営
・対象:指定した場所に宿舎を建設。
・報酬:ポータルゲートの子機×2
・備考:依頼を受理した後、素材と設計図を送る。
・備考:完成次第、妖精を通じて報酬を送ろう。よろしく頼む。
「ヤタ、これは?」
『前からあったが、ついさっき、報酬が切り替わった。……だが、指定された設計図と素材で一気に造ろうとすると、ミコトが三回倒れるはめになる。到底許可できん』
うわぉ、ヤタの顔が怒りの形相に……。どうどう、落ち着いてよ。
……うーん?
《クエスト:《第二拠点》の設定の許可》
一定以上の広さを持つ庭付きの建物を、《街》などで確保したプレイヤーには、《第二拠点》を設置する許可が降りることになっている。
正直、テスト段階で条件をクリアできるプレイヤーが現れることは想定されていなかったが、まあ、ミコト嬢だしなぁ。
頑張って、《第二拠点》の入手条件をクリアしてくれ。
・依頼者:運営
・対象:一定以上の広さを持つ、庭付きの建物と土地を所有すること。
・報酬:《第二拠点》の設定の許可、および、ホームポータルの使用の許可。
・備考:《街》での土地や建物の所有には、許可が必要になる。冒険者ギルドを通じて、所有者の変更を申請すること。
・備考:ホームポータルは、《拠点》と《第二拠点》を繋ぐ転移ゲートのこと。
・備考:《第二拠点》も《拠点》同様、許可したものしか進入できないので、安心してほしい。
…………うーん…………。
いや、これ、どう考えても、僕用に設定されたクエストだよね?
……い、いいのかな……?