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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2 第二次βテスト
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第百十九話:閑話:十五日目、激おこ

 AEO開発スタッフの視点

 部長とケンカ中



 第二次βテストが開始され、第二次テスターが次々とログインしていくのを確認して、ひとまずホッと一息。



 二次テスターたちの行動は、だいたいが予想通り。



 チュートリアルに従い、それぞれ職人の弟子となるものたち。

 異世界(ゲーム世界)だヒャッハーと、町の外の草原という名の戦闘フィールドに吶喊(とっかん)していって、すぐさま死に戻るものたち。

 チュートリアルにて、あらかじめ通達してある禁止ワードを連発して、垢BANされたバカども。


 ……それと、報酬目当てに《街》を目指すものたちと、逆に《街》に寄り付こうとしないものたちに分かれる一次テスターたち。



 事前に把握していた人物評価から割り出した行動予測が、ぴったりとはまりすぎててつまらないくらい。


 ……いや、つまらないなんてことはない。なるべく幅広いサンプルを取りたいと、あえて選定された性格に難ありとされたバカどもは、本当にトラブル起こしやがってるし。



 ともあれ、真面目にやってる連中には報酬を出すが、予想通りにトラブル起こしてやりすぎた奴らは、事前に説明した通り垢BANされた時点でテスト終了。以後、配布されたテスター用のVRゴーグルではログイン不可。禁止行動を取った方が悪いということにしてくれ。


 というか、禁止行動を取ったらどうなるか、など、なぜわざわざ試す? ちょっと俺には理解ができないんだが。


 ……まあ、正式サービス開始されたら、垢BANされた連中も普通にログインできるだろうけどな。テスター用のVRゴーグルは、テスト最終日まで満了した奴ら以外は返還義務を課してるけど。そして、テスト満了した奴ら以外のVRゴーグルでは正式サービス以降にログインできないようにしてるけどな。



「赤井くん、状況はどうかね?」



 スタッフ全員で状況を見守っていると、勤務時間にも関わらず部長が開発室に顔を出してきた。


「万事想定内で推移しています。今のところイレギュラーはありません」


 画面から目を離さずに答えだけ部長に放り投げる。


 上司に対してなんとも失礼な態度だが、地下の運動場で自爆テロ紛いの大惨事一歩手前を引き起こしやがった部長には、これくらいの態度でいいと思うんだ。


 なにをやったか知らないが、直下型地震でも起きたような大きな揺れと、落雷が直撃したような轟音+設備への異常。


 それをやらかしたのが、部長と鈴原さんだっていうのだから、正座させて説教は当たり前でしょうよ。



 だって、さあ? 下手すっと、これまでの俺たちの頑張りが無駄になったかもしれないんだぜ?


 機嫌悪いですって態度で表明してもいいと思うんだ。



「……赤井くん、機嫌直してくれんか? 先日の件は謝るから」


「……さて、俺にはなんのことやら。部長が謝ったところで、サーバーが落ちてデータが壊れる可能性があったというのに、なんか気分が乗ったからとかいうふざけた理由でテロ起こすような人とは会話したくないので」



「…………コホン。ま、まあ、皆もご苦労。差し入れを持ってきた。先日の()()()が好評だったようなので、それを」



 マジっすか? あざッス。これがあると、いざという時も安心だよな。


「いただきます。……辻、配っといてくれるか?」


「……別に俺も暇な訳じゃねぇんすけど……」


 お前が一番部長に近いところにいるからな。他意はねぇぞ。


 一人2本ずつという、ビン詰めの青緑色発光茶をみんな喜んで……おや? 一部困った感じのやつがいるな?

 まあ、エナドリより疲労回復と眠気覚ましの効果が高かったからな。それでいて胃が痛くなったりとかの副作用もなかったみたいだし。だから、なんか変なの混ざってると思ったとしてもおかしくないわな。


 さっそく1本。キュポン、グビリ、ふぅ。


 薬(くさ)さとか変な甘さとかないから、やっぱ飲みやすくていいわこれ。




「……ところで、赤井くん?」



 恐る恐るといった感じで声をかけてくる部長。


 なんだ、まだいたんだ。なんすか?



「……なんですか? これでもちゃんとした業務中で暇じゃないんですけど」


 モニターとにらめっこしている現状は、部長にしてみれば動いてない働いてないように見えるかもしれんけどな? 状況の監視とトラブル対応への待機って、立派な業務よ? これでも、過重労働でくたばって仮眠室に放り込まれてるやついるからな? わざわざ部長が巻きって言って急に追加の仕事させたもんだからさ。



「う、うむ。暇でないのは分かっている。私が言いたいのはね、(かんなぎ)の娘にクエストを発注させたかどうかの確認をしたかったのだよ。宿舎があれば、多少なりとも雇用も生まれるだろう?」



 いや、正直、ハコものは現地人に造らせた方が雇用創出に繋がるだろうさ。


 ただ、実際のところは……。



「発注はしたものの、ミコト嬢の妖精で止まってますわ。どうにもならんっす。あの妖精を怒らせたら、また変な影響が出ませんかね?」


 あのヤタって妖精、運営からのメールを確認したら、額に青筋浮かんでたように見えたしな。舌打ちしてたし。


 慌てて、「強制ではない」って追加のメール送ったわ。キレたらまたなにが起きるか分からんし。



「……そうか……ううむ……」



 妖精のシステムを持ち込んだのは部長だぜ? しかも、ほとんどがブラックボックスで手がつけられなかったし、そもそも、手をつけるなって命令だったしな。


 その妖精からのプチ反抗。ねえねえ部長、今どんな気持ち?





 部長が退室後、今度は秘書さんが菓子折り持参で頭下げてきた。


 スタッフ全員でいただくからってさっさと追い出したら、梅原が「秘書さんのお尻見すぎ」ってからかってきやがった。


 ……おい、梅原。お前今夜お仕置きな? 覚悟しとけ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >だから、なんか変なの混ざってると思ったとしてもおかしくないわな。 本当に混ざってない?( ˘ω˘ )
[一言] >今夜お仕置きな  お幸せそうでなにより
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