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Another Eden Online  作者: 平民のひろろさん
2 第二次βテスト
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第百十三話:ギルド長の事情

「失礼します。みなさん、お茶をどうぞ。……ごめんなさいね、ミコトちゃん、ミナトちゃん、ステラさん。ギルド長にも事情があるのよ」


「その話は私が言おう。ナリエくん、きみは下がっても……ああ、その赤髪の少年と同じ院の出身だったか」


「はい、ギルド長。さあ、冷めないうちに飲んでみて。とても良いお茶だから、美味しいわよ」


 陶器のカップに注がれた透明な黄色のお茶は、湯気とともに良い香りがして、美味しそうだった。


『うん、良い茶だな』


 さっそくいただこうかな、と思った矢先に、ヤタが自分の羽くらいの幅のあるカップを軽く持ち上げて中身を一気に飲み干してたよ。


 ……うーん、この、サイズ差を無視した不思議な光景は、何度見ても気を引かれるね。


「おほめに預かり光栄ですわ、妖精様」


 満足げなヤタと嬉しそうなお姉さんを見て、僕も1口。

 ……うん、香りも良いし、美味しい。


「まあ、貴族をはじめとした賓客をもてなすための特別な茶だからな。……ふむ、きみたちも賓客であることには変わらんか」


 ギルドマスターは、なにか迷っているような素振りを見せてるね。

 ……さっきお姉さんが言っていたとおり、なにか深刻な事情があるのかな?


「おいザック、このお嬢ちゃんたちは問題ねぇ。さっさと言っちまえよ」


「……はあ、……ダク、その根拠は?」


「勘だ」


「………………はぁ………………」


 話が進まないことにだんだん()れてきたのか、偽マスターの細マッチョさんが壁に寄りかかったまま口を挟んできた。


 どうでもいいけど、ギルドマスターと細マッチョさん、仲良さそうだね。


「はぁ、仕方がないか。……まだ内密にしておいてほしいことなのだが、実は私は、つい先日白昼堂々暗殺されかけてな。それも、今回に似た状況で。

 高位冒険者のエルフが、面会を望む者がいると連れてきた冒険者が急に襲いかかってきてな。もっとも、その高位冒険者のエルフによって即座に処理されたから、ケガひとつ無く済んだのだが」


「えっ?」


 暗殺と聞いて、つい声が漏れてしまった。


「しかも、その暗殺者を調べてみると、人の皮を身に纏った黒いゴブリンであることが判明した。また、詳しく調べてみると、行方不明となっている冒険者が数名いることが分かった。

 その者たちに共通している点は、この《街》より北に位置する《魔の森》を狩り場にしている点と、冒険者ランク3~4の、ほどほどの実力を持つ者たちであることと、《街》に数名いるエルフの冒険者と比較的仲がいいことが分かっている。

 それをふまえて、我らは混乱を防ぐため内密に調査を開始したところだ」


 そのタイミングで僕らがエルフのステラと一緒に訪ねてきたから、警戒してたんだね。


 それなら話は分かる。分かるんだけど……。


「この、エルフの里からお願いされた書簡はどうしたらいいの?」


「預かって構わぬか?」


「うん」


 返事して木製の筒をギルドマスターに手渡せば、確かに、と(うやうや)しく受け取りあちこち見て何かを確認している様子。


「どうしたの?」


「……うむ、エルフの刻印はあるが、封蝋などは……ないな。中身には目を通しておこう。……いや、今読もう。エルフの長老から、誰に渡してほしいと頼まれた?」


「え? ……誰にだっけ?」


「権力者、とだけ。ですが、最終的には国王陛下の耳にもいれておいた方が良いかと」


 ギルドマスターは筒を開けないまま何かを確認した上で、筒のふたを開けて手紙を取り出していた。

 続いての問いにとっさに答えられないでいると、トールくんが答えてくれた。


「…………ああ、この内容は、確かに、国王陛下の耳にもいれておいた方がいいな。しかし、私が王城に出向いて奏上(そうじょう)するにしても、時間がかかる。なにせ、立場が違うからな」


「では、まずは《街》の領主様に?」


「それもそうだが、先に元伯爵のご隠居に話を通すべきだろう。そのご隠居に王都と連絡を取り合ってもらいつつ、街の領主と冒険者ギルド合同で情報を共有しこちらでも王都と連絡を取る方向でいこうと思う。

 ところで少年、きみは引退し家督を譲った元伯爵様と縁があるのかね?」


「はい。現役だった頃の父の寄親(よりおや)でした」


 あら、ギルドマスター頭抱えて深くため息吐いちゃった。


「きみは……。いや、よそう。ご隠居にはこちらからも書簡を送ろう。今すぐ書くからしばし待ちたまえ」




《ワールドクエスト:エルフの長老の書簡を人間の権力者に届けよう》clear!


 プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。

 エルフの《領域》に侵入した《忌まわしき黒》の危険性を共有するための書簡を、人間の権力者に届けてほしい。

 報酬は前金で支払おう。よろしく頼む。

・依頼者:エルフの長老

・対象:エルフの書簡を人間の権力者に『確実に』届ける

・報酬:エルフの《樹宝》の苗各種と育成手二名



《チェインクエスト:《街》の冒険者ギルドのギルドマスターの書簡を貴族街に住むご隠居に届けよう》new!


 プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。

 エルフの《領域》に侵入した《忌まわしき黒》の危険性を共有するための書簡を、引退した元伯爵のご隠居に届けてほしい。

 よろしく頼む。

・依頼者:冒険者ギルド ギルドマスター ザック

・対象:エルフの書簡を貴族街のご隠居に届ける。

・報酬:なし (通常の依頼扱いで、依頼成功に加算される)

・備考:ご隠居に書簡を届けたあと、冒険者ギルドのギルドマスターに報告すること。

・備考:相手は隠居しても貴族なため、服装、行動、言動には細心の注意を払うこと。

・事前に訪問を通達し、許可をもらうこと。また、相手方の都合に合わせて訪問すること。



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― 新着の感想 ―
[一言] きな臭くなってきましたね( ˘ω˘ )
[一言]  人の皮を被ったゴブリン、ですか。  忌まわしき黒?
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