第十一話:草の種類はたくさんある
素材がなければ生産もできない。
『さて、腹ごなしに、神殿周りの散歩でもしようぜー』
自分の体より大きい平皿に山盛りになったチャーハンを凄まじい勢いで平らげたヤタは、なんだかとてもわざとらしいことを言い出した。
外へ出て、少し移動。
うーん。実に分かりやすく、わざとらしく、視線をある一点に固定している。
そこに何かあるの?
《ナオリ草》:葉を傷口に張り付ければ傷が治りそう。乾燥させて粉末にすると、ポーションの材料になる。
……なにこれ? ダジャレ? つまり、これを採取すればいいの?
何気なく手を伸ばして、ふと思う。
「ねぇヤタ、これ、どう採取すればいいの?」
『お、良くそこに気付いたな』
ヤタが言うには、《ナオリ草》の周りの土ごと採取するのが一番良いそう。けれど、根っこが残っていれば、また生えてくるという。
メインは葉で、茎も薬効が少し。根っこまであれば、葉だけと比べて効果が倍近いそう。
しかし、根っこまで採ってしまえば、もう生えてこない。
うーん。悩むなあ。
……で、悩んでいると変なものが目に入るわけで。
《イタ草》:葉に、長く鋭く固いトゲがたくさん生えている草。トゲが刺さると痛そう。
トゲは乾燥すると細くなり、縫い針の代わりになる。葉や茎から出る汁は、神経を過敏にする。痛覚を過敏にさせ、拷問に使用されたり、感度を高める薬に使用されたりする。
《クダリ草》:煎じて粉薬にしたり、煮出して茶にして飲むと、お腹が下りそう。お通じをよくする薬として重宝される。
《ネムリ草》:早朝、葉に乗った朝露を集めて、乾燥させ粉にした根と混ぜると、無味無臭にして強力な睡眠薬になる。不眠症の改善に利用されるが、資格を持つ医者以外が扱うと、重罪に処される。
《コロビ草》:葉の先から出る甘い匂いを嗅ぐと、一時的に平衡感覚が失われて転びそうになる。葉の匂いの素を大量に集めて精製すると、強烈な眩暈、自立不能になり転倒、意識障害など、危険な症状が発生する。麻痺毒などと合わせて使用される。
《ナキ草》:花粉が目に入ると、しばらく涙が止まらなくなる。煙幕などに利用される。
《ハキ草》:葉を刺激すると、とても臭い汁を出す。臭いを嗅ぐと、吐きそうになる。
嗅覚に優れた獣系の魔物が嫌がる。
《ワライ草》:よく山菜に間違われて食べられる。ほどよい苦味とシャキシャキした食感が美味しいが、食べると笑いが止まらなくなりそう。毒性はない。
《ニガ草》:かなり苦い草。乾燥させて焼いて出た煙は、虫系の魔物が特に嫌がる。
《オコリ草》:見た目はクローバー。しかし、食べるとイライラが止まらなくなりそう。混乱、魅了等、精神系状態異常にかかりやすくなる。
《ヤリ草》:槍のようにまっすぐ生長する竹の一種。尖端は固く鋭く尖り、刺突槍のように扱うことが出来る。さらに生長すると、尖端が膨れて白い液体が溜まる。白い液体は、ある薬剤に使用される。
《死呪苦水仙》:水仙の一種。花の中に溜まった蜜は甘いが、強い毒を持つ。月光を浴び続けた花に溜まった毒蜜を特定の条件で取り出せば、呪術の素材になる。
《笑いカボチャの若芽》:生長し実が成ると、ケタケタ笑うカボチャになる。とても栄養があり美味しいが、ヘタの部分に火を付けると、爆裂し、鉄の盾も貫く非常に固い種を周囲に撒き散らす。食用として、長く保存できる。
《マンドラゴラモドキ》:植物系モンスター《マンドラゴラ》によく似た葉を持つニンジン。効能はない。生で食べると独特の臭みやエグ味があるが、熱するとほのかな甘味に変わる。食用として、長く保存できる。
……ヤバい草ばっかりじゃん!!
危険物は焼却しないと!
そう思ったけど……。
「うーん、ねぇヤタ? この草とかって、植え替え出来るの? えーと、例えば、鉢植えとか」
『うん、よく気付いたな。この世界の住民は、《ナオリ草》を見つけたら、まずは根っこごと採取して、群生地に移して管理する。そうして、ポーションを安定して生産するわけだ』
へぇー。よく考えられているんだね。
危険な草を意図的に視界から外して、《ナオリ草》だけを見る。
なら、この《ナオリ草》も、根っこごと集めれば群生地が作れるのかな?
なら……。
「ヤタ、ゴブリンとコボルトが落とした鉄製品から……ううん、ワイバーンの骨からスコップを作って」
ぶぶっと、ヤタが吹いた。汚ないなぁ。
『ちょ、おま、なんてもったいない使い方するんだよ?』
「え? 駄目なの? 鉄よりは強いだろうし、たくさんあるからいいじゃん」
僕が素材を出せば、ヤタは『しょうがねーなー』とか言いながら、白い骨を白いスコップへと変えていった。4本ほど。
あと、爪や牙から、採取ナイフや包丁を。
さっそく出来上がったスコップ等に、付与を掛けて《ナオリ草》を採取……って、このスコップすごい。草がみっしり生えた地面に、まるで豆腐に刺してるみたいに刺さっていくよ。
《ナオリ草》を無事採取。けれど、そこでまた悩む。
他のいろんな草、どうしよっかな……?
うーんと少し悩んで、よし決めた。
『《付与・攻撃、速度、体力、活力》それじゃ、いくよ!』
付与・攻撃は力も上がるみたい。スコップが扱いやすくなる。速度と体力を上げて、付与・活力で体力が少しずつ回復するようにすれば、サクサクとかなりの速度で穴を掘れる。そして、目に映る、効能のある草や野菜なんかを、手当たり次第に掘ってはアイテムボックスへと収納していく。
『お前ぇ…………』
ヤタが呆れているようだけど、いいじゃないの。
植え替えが終わったら、ポーションたくさん作るんだからね?
……あ、でも、《ナオリ草》とか、足りるかな……?
・リザルト
ワイバーンの骨×4を消費して、飛竜骨のスコップ×4を生産。
ワイバーンの牙(小)×4を消費して、飛竜牙の採取ナイフ×4を生産。
ワイバーンの牙(小)×4を消費して、飛竜牙の小包丁×4を生産。
ワイバーンの爪×4を消費して、飛竜爪のナイフ×4を生産。
ワイバーンの爪×4を消費して、飛竜爪の大包丁×4を生産。
ワイバーンの鱗×8を消費して、飛竜鱗のシャベル×4を生産。
・残り
ワイバーンの魔石×5
ワイバーンの骨(全身)×1
ワイバーンの頭蓋骨×4
ワイバーンの骨×26 → 22
ワイバーンの尾骨×4
ワイバーンの牙(大)×16
ワイバーンの牙(小)×68 → 60
ワイバーンの爪×58 → 50
ワイバーンの翼(両翼)×1
ワイバーンの翼(片翼)×8
ワイバーンの皮(全身)×1
ワイバーンの皮(大)×4
ワイバーンの皮(小)×30
ワイバーンの鱗(全身)×1
ワイバーンの鱗×368 → 360
ワイバーンの肉(全身)×1
ワイバーンの肉(大)×40
ワイバーンの内臓×40
契約の結晶 (ワイバーン)×1