第百六話:十五日目、朝
「んん~~。……ふぁぁ……」
体を起こして大きく伸びをする。
その後にあくびを一つ。
まだねむい目をこすりつつ、寝巻きを着替えてから冷たい水で顔を洗ってようやく頭がはっきりしてくる。
今日の朝ごはんは何にしようか?
拠点の設備は過剰なほど整っていて、かまどに火を起こす必要もなく、ほんの少しのMPを消費すれば水も火も遠慮なく使える。
そうだ、今日は白パンに挑戦してみよう。
異常繁茂している薬草をもりもり食べる牛たちから採れる臭みのない薬草牛乳を使って、料理スキルでバターを作成。
砂糖は拠点に無限供給される塩を利用して食品用の錬金壺で変換。サトウキビや甜菜はまだ増やしている最中だからね。早く安定供給できるようになりたいよ。
イースト菌とかそういうのは無いので、ブドウを料理スキルで発酵させてから、生地に混ぜてこねこね。
ある程度こねたところで料理スキルをもういっちょ。発酵して膨らんだ生地から、少しちぎって取り分けておく。
生地を型に入れてオーブンへ。
パンが焼けるまでに、野菜を刻んでスープを作る。
ここで、お行儀よくおすわりしたまま待機しているコボルトのジョンとメグにみんなを呼んできてほしいとお願いしてから、オークの肉で作ったハムを使ったハムエッグを人数分焼いていく。
卵はまだ安定して人数分供給できているわけじゃないから、毎日出せないのがつらいところだね。
できあがったハムエッグは皿に移してアイテムボックスに入れておいて、パンの焼け具合を見ながら人数分のハムエッグを次々焼いていく。
野菜スープの味を見つつ、火伏せ猪の弓掛をリサイクルした耐熱手袋をはめてオーブンからパンの型を取り出す。
焼きたてのパンの良い香りが広がり、思わずつまみ食いしたくなるけれど、それは我慢しつつ熱いうちにパンを型から取り出せば、それだけでごちそうといえるくらい良い香りの食パンが姿を見せた。
さっそく切り分けて、トーストにする分とそのまま食べる分に分けてトースト分はオーブンへ。そのまま食べるのはアイテムボックスへ。
これで足りるかなあ? と思ったところで、みんな集まってきたので料理スキルで食パンだけ追加で用意してしまおう。
きっと、うちの食いしん坊たちは食パン二枚じゃ足りないだろうからね。
今日のメニューは、バタートースト、焼きたての食パン、薬草卵とオーク肉のハムのハムエッグ、拠点で採れた野菜を使った野菜スープ、薬草牛乳にカットフルーツ。
食パンは料理スキルで手早く用意するからおかわり自由ってことで。
「…………母さま、私はこんなに贅沢な食事を毎朝いただいてよいのでしょうか……?」
「臭みのないミルクやバターや玉子料理に肉料理。エルフの里でも簡単には用意できないわねぇ」
『気にしてもしょうがないぞ。それより、冷めないうちに食べた方がいい。いただきます』
「まあ、ミコトがやることだしな。あ、手伝えなくてすまんと思ってる。片付けはやらせてくれ。いただきます」
「美味しいごはんをいつもありがとうね、ミコト。いただきます」
ステラとリラのエルフ母娘は呆然としていて、ヤタから冷静な言葉をもらっていた。
ミナトやトールくんはいつも美味しそうに食べてくれるから僕も嬉しいんだよね。
『『いただきますワン』』
ジョンとメグの2体のコボルトは、気持ちいいくらいがっついてるんだよね。
僕も食べよう。いただきます。
ん~~♪バタートースト美味しいなあ♪
これにハチミツかければきっともっと美味しいんだろうね。
次パン食べるときに絶対試そう。
チーズとか自作できないかな? 料理の幅がぐっと広がるよね。バターにお酢を混ぜればいいんだっけ?
……なんか違う気がする。レシピがほしいなあ。
生クリームなら、牛乳を撹拌すればいいんだよね?
焼きたてのパンにカットしたフルーツと生クリームでフルーツサンドとか、きっとすっごく美味しいよ……。
うんうん。やりたいことは尽きないね。
・レシピ入手 : 《白パン》