第百二話:今日はお休みの日
《ワールドクエスト:エルフの長老の書簡を人間の権力者に届けよう》
プレイヤー:ミコトに対しクエストを依頼。
エルフの《領域》に侵入した《忌まわしき黒》の危険性を共有するための書簡を、人間の権力者に届けてほしい。
報酬は前金で支払おう。よろしく頼む。
・依頼者:エルフの長老
・対象:エルフの書簡を人間の権力者に『確実に』届ける
・報酬:エルフの《樹宝》の苗各種と育成手二名
《クエスト:《街》に行こう》
第1次βテスター全員に対しクエストを依頼。
第2次βテストに合わせて、各1次テスターは一度《街》まで足を運ぶように。
冒険者登録に合わせて報酬を受け取れるように手配した。
・依頼者:運営
・対象:《街》に到達。
・報酬:前金:銀貨50枚、成功報酬:銀貨50枚。
・備考:すでに《街》に到達しているプレイヤーには、即時報酬が支払われます。
《クエスト:鉱石が足りない》
現在《街》では魔物素材は余っているが鉱石が全体的に足りない。
街より北東の《鉱山》で鉱石を採掘してきてほしい。
・依頼者:生産者組合
・対象:《鉱山》にて鉱石の採掘。
・報酬:鉱石の買取価格の上昇。種類、品質、量により変動。
・備考:移動だけで片道数日必要なため、準備を怠らないこと。
・備考:採掘隊の護衛依頼も同時に発行されている。団体で行動する場合はそちらをおすすめする。
・備考:生産者組合から冒険者ギルドに回ってきた依頼。《街》で十分な量の鉱石が出回れば終了するかもしれない。
《クエスト:鉱石採掘隊の護衛》
最近の魔物の発生状況により、武器や防具として消費している『鉄』が足りない。その他の鉱石も足りない。
街より北東の《鉱山》で鉱石を採掘する中規模な採掘隊を編成する。その護衛をしてほしい。
・依頼者:生産者組合
・対象:《鉱山》にて鉱石を採掘する坑夫の護衛。
・報酬:前金:銀貨30枚、成功報酬:銀貨50枚。鉱石の採掘量により追加報酬の可能性有り。種類、品質、量により変動。
・備考:冒険者ランク3以上、または、護衛依頼の経験者に限定させてもらう。クランでの参加も歓迎する。
・備考:準備期間3日の後、往路4日、採掘期間3日、復路4日の、計11日間の予定。十分に準備すること。
・備考:鉱石の値が上がっている現在、鉱石を狙った野盗の出現も考えられる。復路こそ警戒を怠らないように。
・備考:人数制限有り。依頼を受ける際はきちんと確認すること。
つらい夢を見て、泣いて。
三人一緒に、もっと幸せになろうとまた少し泣いて。
まだ暗いけれど、このまま眠ってしまうのはなんだかもったいない気がして、あれこれ語ってみる。
好きな食べ物とか、嫌いな食べ物とか。
そういえば、拠点の西側にある果樹園とかゴスケさんに任せっぱなしだったなあ。
あ、襲撃イベントに対応できる遠距離攻撃可能で頑丈なゴーレムとかいたなら、羊とか放牧できるかな?
北側の毒草やキノコがどうなっているか気になるね? って、トールくんが笑った。
僕は苦笑。気になるの意味がなー。
ミナトが食いついてきたのを見て、ちょっと笑う。
ミナトとはそっちまで回ってなかったっけか。
今日はみんなでのんびりしよう。
やらなきゃいけないこともあるけれど、それよりかは拠点のことも気になるし。
鶏や牛や豚を撫でて、野菜や果物の様子を見て、ハチミツをまた分けてもらいながら木の育ち具合を見て、それからキノコの様子を見に行こう。
あれこれ話をしているうちに、だんだん明るくなってきたから、そろそろ起きようかとなった。
体を起こして、ふと思いついたことを言ってみる。
「と、トールくん、ちょっとお願いがあるんだ」
「なんだいミコト。なんでも言って」
さすがに恥ずかしくてドキドキの僕と、優しく微笑んでくれるトールくんと、僕が何を言うのかと首をかしげているミナト。
心の準備に、深呼吸を一つ、二つ。
「あのね、できればでいいんだけど、これからは、おはようのちゅーをしてほしいなぁって。ミナトにも」
「オレもか!? …………いいのか?」
「二人が嫌じゃないなら、喜んで」
本日一回目はでこちゅーでした。
……その様子を、ミナトにばっちり見られているんだよね。
や、これは恥ずかしい。でも、それ以上に幸せな気分になれるね。
僕も、ミナトがでこちゅーされているのをにこにこしながら見る。
ぅわっ!? って声をあげながらビクッとしてたけど、すぐにぽーっと顔を赤くしてるのが可愛いね。
さあ、行動を開始しよう。まずは朝ごはんだ。
食品用の錬金釜で変換した白米に、オーク肉を使った豚肉の生姜焼き、これも錬金釜で変換した豆腐のみそ汁、拠点に供給される野菜と畑で採れた野菜を使った温野菜。
拠点の北西側に昨日造った小屋で寝泊まりしているエルフ母子もこれは喜んで食べていたよ。
肉やミルクのような生物由来の食品や、味噌なんかの発酵食品はにおいがダメかもしれないと思ったけれど、薬草をもしゃもしゃ食べてる牛から採れた薬草牛乳は臭みもないみたいで喜んで飲んでいたっけ。
さて、食事を終えて後片付けも済ませたら、東側の鶏舎から始めて拠点をぐるりと一周しよう。
鶏舎、牛舎、豚舎と3棟並んだ畜舎では、朝早くからゴスケさんが入り口を開放。家畜たちは自動で供給される餌そっちのけで、畜舎の周りに広がっている薬草をむしゃむしゃ食べていた。
……薬草の増え方も、もはや異常といってもいいと思うけれど……。
豚や猪はすぐに薬草の根っこを掘り起こして食べようとするけれど、そこはゴスケさんが待ったをかけていた。
あのゴスケさんは……3号だね。
「なあミコト、あれもゴスケさんなんだよな?」
「うん。あれは3号だね。……おーい、おつかれさまーっ」
呼びかけるのに合わせて指を3本立ててみたら、ゴスケさん3号は正解! とばかりに骨の両手で大きく丸を描いていた。
「なんで分かんだよ……?」
と困惑気味なミナトに、
『まあ、ミコトだからな』
と呆れ気味のヤタ。
「そうだね」
と苦笑するトールくんの胸を、
「もう、なんで笑うのさー」
と軽くぽこぽこ叩いておく。
南東の穀物区画のじゃがいもやとうもろこしはまだみたいだけれど、南西の野菜区画と西の果樹区画では、食べ頃の野菜や果物を収穫して、北西の樹木区画に行けば、ちょうどゴスケさんがハチミツを分けてもらっているところだった。
「ゴスケさんおつかれさま。きみは4号だね?」
と声をかければ、うなずくだけの控えめな反応。
謎が多いゴスケさんにも、それぞれ個性があるのかもしれないね。
「なあ、ミコト? 《鑑定》スキルとか使ってないんだろ? なんで分かるんだ?」
「なんでって言われても……ねぇ?」
『正確にいうと、骨どもを造り出したのがミコトだからだな。自分で造ったから『繋がり』ができていて無意識下で認識できているんだよ』
ミナトの質問に首をかしげながら答えると、ヤタが正しい答えを教えてくれた。
『ま、ズボラなやつが造ったら自分で認識できないかもしれないがな。ミコトだからちゃんと認識できるんだぞ』
あれ? ヤタからほめられた? 嬉しいね。
……あ、や、その……。ゴスケさん、今このタイミングでミツバチの死骸とか差し出されても……。
……おや? なんか、レシピが?
・ミツバチの死骸 + 虫系魔物の魔石 + ハチ系魔物の素材 = ハニータンク(魔物)の卵
・ハニータンク + 虫系魔物の魔石 + ハチ系魔物の素材 = ミードビー(魔物)の卵
・ミツバチの死骸 + 虫系魔物の魔石 + アリ系魔物の素材 = ハニーアント(魔物)の卵
・ハチミツ + 酒類 = ハチミツ酒
「ヤタ、ちょっと質問。エルフの里に行く途中でなんかハチを大量に倒して大きな巣を潰したじゃない? その素材と魔石とこのミツバチの死骸を掛け合わせると、ミツバチの魔物版が造れるってこと?」
『否定はしないが、対応する《契約の結晶》が無いと魔物の卵が孵化しても敵として襲ってくるぞ? ……基本は』
「ダメじゃん……うーん? 基本は?」
『獣系や鳥系の他に、グリフォンやドラゴンみたいな非常に賢い幻獣種に龍種、虫系なら虫限定のテイマー職なんてのもあるから、全部に《契約の結晶》が必要とは言わないが……』
「手段はあるってこと?」
『虫のことならエルフに聞いてみろ。たとえ本人が知らなくても、これまで脈々と蓄えられてきた森の叡智に手が届く位置にお前は居るだろう?』
「なるほどー。『街』にお届けものしたら、報告ついでにおじいちゃんエルフに聞いてみようかな?」
まずはリラとステラ母娘に聞いてみて、ダメなら街に行ったあとエルフの里に、なんて考えていたら、ミナトが腕を組んで首をかしげていた。
「なあ、ミコト? あのでかいスズメバチを素材にして、飛行可能なゴーレムとか造ったら、拠点の守りに使えないか? レーヴェみたいにヒト型にして大量に配置したら、それなりの戦力になるんじゃないか?」
「……うーん……。あのデカキモいスズメバチを素体にするの……? なんか、やだなぁ……」
『虫系は基本的に火に弱い。ビッグホーネットも例外じゃない。羽があっても飛行能力はそこまで高くない。そして、飛行する魔物は風属性が多いが代表的なブレスは火が多い。大量の虫系ゴーレムがワイバーンの火炎放射で虫ケラのようにバタバタと墜とされる様子が目に浮かぶな』
「ヤタぁ、少しは容赦しろよぉ……」
ヤタから容赦なく言われて、ちょっと涙目なミナトがトールくんに頭を撫でられて慰められていた。可愛い。
僕も撫でてほしいなぁ。
……なら、逆にさ? 火のブレスに耐えられるように火耐性を付与できたら、スズメバチ部隊イケるってことじゃないかな?
ゴーレムなら、後から素材を足して強化できるみたいだし、属性に耐性を持つ素材とか手に入ったら、考えてみてもいいかもね。
まあ、理想は、ドラゴン系の素材を組み込んだレーヴェの量産なんだけどね。
それはいつになることやら。
拠点の現状
北:
キノコ、苔、毒草および毒を持つ薬草(未確認)
北東:
薬草類。
甜菜とサトウキビ。
東:
牛舎(乳牛×12頭)と鶏舎(鶏×29羽 + ヒヨコ×14羽(保育器設置済み) + 有精卵×11(孵卵器設置済み))と豚舎(食肉用豚×8頭 + 魔豚×6頭 + 猪×4頭)。
空いてる土地に薬草類 (勝手に増殖中)。
南東:
じゃがいも、とうもろこし。
お米は錬金壺で作れるので水田は考え中。
南西:
トマトとか、拠点に供給されない野菜類。
大豆などの豆類。
西:
りんご、ぶどう、桃、柿、みかん、ラズベリーなど、果物各種
北西:
木。材木用、装備の素材用、栗、ドングリ、楓など。
西側との境目に、ミツバチの巣あり。
※拠点内施設
○鶏舎・牛舎・豚舎各1棟
《鶏舎LV1》 : 最大飼育可能数 : 200羽
飼育中 : 鶏29羽 + ヒヨコ14羽。
・雄 7羽
・雌22羽
・ヒヨコ14羽
・卵11個(孵卵器に設置済み)
《孵卵器LV1》2基設置。10個/1基
《保育器LV1》2基設置。10個/1基
《牛舎LV1》 : 最大飼育可能数 : 20頭。
飼育中 : 牛12頭。
・乳牛12頭。薬草牛乳生産可能。
《自動給餌設備LV1》 × 20頭分
《自動給水設備LV1》 × 20頭分
《自動空調&管理LV1》 × 20頭分
《自動搾乳器LV1》 × 20頭分
《快適化施設LV1(各種)》 × 20頭分
《豚舎LV1》 : 最大飼育可能数 : 20頭。
飼育中 : 豚18頭。
・食肉用豚8頭 + 魔豚6頭 + 猪4頭。
《自動給餌設備LV1》 × 20頭分
《自動給水設備LV1》 × 20頭分
《自動空調&管理LV1》 × 20頭分
《快適化施設LV1(各種)》 × 20頭分
ミツバチの巣×1 : (拠点内施設/初回限定・条件付きランダム発生)
施設LV : LV1
最大数 : 50/200匹
最大量 : 1Lリットル
充填率 : 22%
ミツバチの巣×3 : (拠点内施設/追加設置)
施設LV : LV1
最大数 : 20/200匹
最大量 : 1Lリットル
充填率 : 10%
ウツボカズラ×4 : (防衛用施設/対虫特化)
施設LV : LV1
最大数 : 100匹/一日(一株あたり)
最大量 : 1Lリットル
充填率 : 0%(0%消化中)
羽喰いカラス×12 : (防衛用施設/対鳥特化)
施設LV : LV1
最大数 : 10匹/一日(一羽あたり)
動くカカシ×4 : (防衛用施設/対亜人・獣特化) new!
施設LV : LV1
対抗LV : 冒険者ランク1相当