第十話:続きをやろう
チュートリアルの、続き。
今度は、少し趣向を変えて。
さて、ご飯も食べて、エネルギーは満タン。チュートリアルの続きだね。
神殿の外へ出て薙刀を構え、気合いを入れる。
『では、準備はいいな?』
「いつでも」
魔方陣の光の中から這い出る魔物に目を向ける。
「……あれ? ゴブリンじゃない?」
(おう、ゴブリンじゃない理由はさっき語ったな? ゴブリンを減らしすぎると不味いから、今度はコボルトだ。コイツらならどれほどヤっても問題無い)
目の前に現れたのは、二足歩行の、犬……?
うーん? 犬よりは、体は人に近いか? でも、顔は犬。ブルドックみたいに強面だ。
ゴブリンの時のような、体の内側から沸き上がるナニかは感じない。
あれは、なんだったんだろうね?
ただ、こいつは右手にハンマーを持っている。ほとんど素手だったゴブリンよりは、強いんだろう。体格も、僕とあまり変わらないか大きいくらいだし。
(付与魔法を使ってみろ)
「うん。……《付与・攻撃、防御、速度》」
(おまっ、……まあ、いいか)
付与LV1で使える《付与・攻撃》、《付与・防御》、《付与・速度》を、全部掛けてみる。
ぶっつけ本番は最初じゃないし、さて、どうなるか……!?
「うっわ……!?」
走り出したら、体感で倍は速く走り、薙刀をコボルトに向けて体当たりするように突き刺すので精一杯。それでも一撃。
付与魔法、こんなに違うの?
「ヤタ、ヤタ、付与魔法って、強すぎない? 倍くらい速くなった気がするよ?」
『いや、気のせいだ。そこまで速くはなってないぞ? せいぜい一~二割くらいか? ……いやしかし、レベルアップもあったから、昨日の戦闘前と比べるとまるで違うのは確かなんだが』
……うん? つまり、僕の認識は昨日の戦闘前のもので、ヤタの認識は、レベルアップして能力が上がった状態だと?
うん、そっか。ちゃんと見てくれてるんだね。
『休憩はいいか? そら、どんどん平らげろ』
それからしばらく、コボルト相手に薙刀のお稽古。
……30体撃破。ここから2体ずつ召喚される。付与をかけ直し。後ろを取られなければ平気だった。
……50体撃破。ここから3体ずつ。付与をかけ直し。レベルアップの影響か、体が思った以上に動く。
念のため、《回復》をしておく。
……71体撃破。途中、わざとダメージを受けて、《回復》を使用。《付与・体力》、《付与・活力》を取得。付与をかけ直し。
……100体撃破。一旦ここで休憩。《付与・装備強化》、《付与・自己修復》を取得。装備を弓に変更。付与をかけ直し。梓弓と桃の枝の矢に《付与・装備強化》と《自己修復》を付与。弓での戦闘開始。
……で、ここで、事件が起こった。
ポメみたいな可愛い系コボルトが出てきた瞬間、矢を射ち込む。
眉間に吸い込まれるように矢が刺さり、一撃で倒すことができた。しかし……。
「…………痛い…………」
一度も扱ったことの無い弓での戦闘の代償は、大きかった。
梓弓を落とし、膝を付いて、胸を押さえる。
「……胸が、痛い……」
矢を放った時、弓の弦が胸に当たったのだった。
僕の小さな手の平からはみ出るくらいに大きい、胸に当たったのだった。
…………正直、ちぎれるかと思った。
「…………ねぇ、ヤタ? 何か無い? これだと、弓が使えないよ…………」
涙目になってヤタに問えば、一応手段はあるようで。
『ガイド妖精は生産スキルを全部使える。任せろ……と言いたいところだが、胸当てに使える素材がゴミのような物しか……ん?』
「うん? どうしたの? ヤタ?」
『んー、第三次職解放ボーナスだと。そら、自分で確かめてみろ』
ワイバーンの魔石×5
ワイバーンの骨(全身)×1
ワイバーンの頭蓋骨×4
ワイバーンの骨×40
ワイバーンの尾骨×4
ワイバーンの牙(大)×20
ワイバーンの牙(小)×80
ワイバーンの爪×60
ワイバーンの翼(両翼)×1
ワイバーンの翼(片翼)×8
ワイバーンの皮(全身)×1
ワイバーンの皮(大)×4
ワイバーンの皮(小)×40
ワイバーンの鱗(全身)×1
ワイバーンの鱗×400
ワイバーンの肉(全身)×1
ワイバーンの肉(大)×40
ワイバーンの内臓×40
契約の結晶 (ワイバーン)×1
「……うん、つまり、ワイバーンの素材がたくさん、だね」
『そうだな。ちなみに、ワイバーンはレイドボスに設定されてるな。レベル自体は低いがな』
うーん? レイドボス……?
…………うん?確か昨日……。
『運営バカじゃねぇの? 二次職のレイドパーティー揃えないとまともな戦闘にならないデカブツの素材を五体分とか……運営バカじゃねぇの?』
禊で場を清めて、奉るで捧げ物を献上して。捧げ物って何にすればいいんだろう?
『まあ、いいか。とりあえず必要なものを……そら、出来たぞ』
はやっ。一瞬で出来上がるようだね。
考え事をしている間に、複数の防具が出来上がったみたい。
『で、出来上がったコイツらに、付与しとけ。付与するのは《装備強化》と《自己修復》にしとけ。生産スキルと付与魔法の合わせ技だ……特別だぞ?』
言われるがままに、胸当て、弓掛、手甲と皮手袋と内履きの布手袋、ロングブーツにソックスにリボンに襦袢と、皮製は二組、布製は三組。……それから、女性用の下着が複数……。
『次はコイツらだ。ほんと、運営バカだと思う』
骨、牙、爪で作られたのか、白い薙刀、弓、矢、刀、小太刀、短刀、各二本ずつ。矢は20本。皮で矢筒と矢筒用のベルトも作ったみたい。
仕事が早いね。
付与する僕は大変だよ。
『《強化付与》。装備の強化枠を消費して、付与魔法の効果を永続化させる……。本来ならば、生産職の二次職以降で解放される《共同作業》のスキルが必要なんだがな』
えっへんと胸を張るヤタ。えらいえらいと頭を撫でてあげると、ますます胸を反って鼻高になっていくみたい。そのまま鼻が伸びたら面白いのに。
出来上がった防具は、全部装備しろとの事。
それはいいんだけど……。ここで着替えるの? 神殿戻っていい?
『メニュー画面を開いて、装備の項目からポチポチやれば一瞬で切り替わるぞ?』
いちいち着替えなくても、だそうな。
そう言われて、なるほど、便利だね。と言いながらポチポチ。
巫女服着るのって、ちょっと大変なんだよね。助かるなぁ。
さて、防具を切り替えて、戦闘再開。
付与をかけ直して、梓弓を構えて、さあこい二足歩行の犬っころ。
……150体撃破。ここから2体ずつ。付与をかけ直し。後ろ歩きして距離を取りながら矢を射てば、問題なし。
……200体撃破。気が付けば、とっくに昼の時間も過ぎ、今日の戦闘はおしまいとの事。
昼ごはんを食べて休んだあとは、神殿の周辺を散策する予定だそう。
……うん、昼ごはんは僕が作ったよ? 麦ご飯と小さめに刻んだハムと野菜と卵でチャーハン。あと野菜スープ。
朝ごはんのあと研いでおいた小麦の実を炊いて、炊き上がるまでの時間を使って小麦粉を捏ねてうどん玉にしておいたよ。うまくいけばいいなぁ。
あ、ヤタに頼んだら、小麦の実を挽いて小麦粉にしてくれた。最初からやってくれてたら良かったのに。
チャーハン、ヤタの食べっぷりがすごかったなあ。
ヤタの顔より多い量のチャーハンが、吸い込まれるように一瞬で消える様子、不思議だね。
・リザルト
コボルトの魔石×200
コボルトの尻尾×200
コボルトの爪×171
コボルトの牙×103
コボルトの毛皮(小)×116
コボルトの毛皮(大)×31
コボルトの毛皮(全身)×4
獣の骨×137
犬の頭蓋骨×85
獣牙の剣×8
獣牙の槍×6
獣爪の手甲×3
獣爪の足甲×4
契約の結晶 (コボルト)×2
・スキル
《回復》LV1→LV2
《キュア》を取得。
《付与》LV1→LV3
《付与・体力》、《付与・活力》、《付与・装備強化》、《付与・自己修復》を取得。
汚い腰布×190を消費して鬼の腰布×19を生産。汚い腰布×2、鬼の腰布×55。
鬼の腰布×54を消費して鬼の反物×9を生産。
鬼の腰布×1、鬼の反物×12。
鬼の反物×9を消費して各種装備を生産。
・天女のリボン×3
・天女の内履き手袋×3
・天女のソックス×3
・天女の襦袢×3
・天女の下着(上下セット)×3
鬼の反物×3
ワイバーンの皮(小)×8ワイバーンの鱗×32を消費して、各種装備を生産。
・飛竜の胸当て×2
・飛竜の弓掛×2
・飛竜の手甲+皮手袋×2
・飛竜のロングブーツ×2
ワイバーンの骨×14、牙(大)×4、牙(小)×12、ワイバーンの爪×2ワイバーンの皮(小)×2を消費して、各種装備を生産。
・飛竜骨の弓×2
・飛竜牙の矢×20
・飛竜皮の矢筒×2
・飛竜牙の薙刀×2
・飛竜牙の太刀×2
・飛竜牙の短刀×2
・飛竜爪の小太刀×2
・装備変更
頭:決意の鉢巻 → 天女のリボン
胸:巫女の襦袢 (インナー) → 天女の襦袢
腰:巫女の緋袴
腕:火伏せ猪の弓掛 (左右非対称) → 飛竜の弓掛 (左右非対称)
脚:巫女の白足袋&巫女の草履 (セット)
→ 飛竜のロングブーツ&天女のソックス (セット)
外套:巫女の白衣
その他1:火伏せ猪のお守り
その他2:絵馬 (無病息災)
その他3:天女の下着(上下セット)