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渦巻く悪意~可愛い嫁(仮)



「教えてほしいんだが、坊主、おめぇは転生者か?」



この言葉をこんな所で言われると思ってなかった俺は、多分、相当驚いた顔をしたのだろう。



「ガァハッハッハ、そんなに驚かなくて良いさ。俺もちょいと人が悪かったかもしれねえな。驚かしてすまねぇ坊主」



そうして座ったまま頭を深々と下げると、ジャックはその事に纏わる話を聞かせてくれた。



「まあ、うちの店はこう見えても相当古い。だから過去の転生者にも代々世話したりされたりして来た訳よ。んでだ、大昔に最初にうちに現われた転生者がよ、初代にこう言ったらしい。

『この世界の馬車は乗り心地が悪い。だが、新たに転生してくる者の為に、簡単に儲ける方法は残しておいてやろう。』ってな。

その話が、うちでは先祖代々受け継がれててよぉ、転生者が来るたんび聞いていたそうだ。んで、今までうちに来た転生者達はそれが悔しかったのか何なのか、皆、辞めとくって帰ってった。だからうちも先祖代々、うちに寄った転生者達の中で、この話を聞いてもどうしても改良して欲しいって奴が来るまで、大昔の製造方法まんまの乗り心地のわりぃ馬車作ってんだよ。まぁ、義理立てって訳でもねぇんだがな、その方が面白れぇだろってこったろな。」



これは困った。

さっきの先輩方への謝辞を返してほしい。

確かにジャックの言う通り、この話を聞いてそれでも改造というのは恥ずかしすぎる。

それに俺が最後の転生者という事では無いような感じもするし。

それでもこの、腰にダメージ与えるマシーンみたいな馬車には慣れて来たとはいえ、長時間乗るのはあまり良い気分もしない。

どうしたものやら。

最初に来た転生者ってまあまあ厄介な性格やな。

面白い、確かに面白いけどシュール()過ぎるぅ。

絶対後から来る転生者が改良を躊躇する言葉を()()()に残しとる。


悪意やん。


思い切って電気自動車って手もあるけど、負けた気がするし。


悪意やん。


板バネをスプリングに変えるのでは無く、エアサスにするとかって言うのは、ってそんな騙しは自分にも負けた気がするのでやりません!


くそうっ!


多分、今までの転生者の中でこの店に寄った人達は、この話を聞いて自分の乗り物だけ改良したり、現行モデルで我慢していたのだろうと予想は出来る。

しかし、この剥き出しの悪意に何の抵抗もせず反抗もしないのは、それはそれでムカつきが収まらない。

(えぇ、昭和生まれですが何か?)

さてはてどうしたものかと思案していたのだが、まだ王都案内の途中だったので。



「ジャックさん、こちらの生活が落ち着いたらまたお伺いします。その時はきっちりとこの件についてお話ししましょう。」


「おう、いつでも良いぜ。まあゆっくり何年でも悩むといいさ、厄介な宿題とでも思っときゃいいんだ。」



そんなやり取りの後、ヘラとアイラを連れて店を後にした。


眉間がピクついて腹立たしいこの上ない。

それにあの店主ジャックめ、何が何年でも悩めだクソが。

奴が楽しそうに言ってるのも、更に腹立たしいし憎たらしい。


この恨み、如何に晴らしてくれようか。


どす黒いモノが腹の奥から湧き上がって来る。(例えです。実際には胃酸程度。)


馬車の中でヘラの膝の上に座り、抱きしめてもらう。

それだけでイライラも収まるってもんですよ♪

勿論、アイラともお喋りしたよ。

彼女は水の精霊と仮契約しているらしい。

帰ったら挨拶だけでもさせて頂こう。

そうしてヘラニウム(安息元素)の補充を暫く続けていると、次の目的地であるレストランに到着。

やっと昼食だよ。


店の前で馬車から降りると、エスニックな香りが。

まあ、それだと只の民族料理という意味になってしまうが、日本人的感覚のエスニックな香りと言っておこうか。

店内に入ると、意外に広い。

内装はシンプルに床も壁も天井も板張り。

だが、食欲をそそる刺激的な香辛料の香りが充満していて、腹が鳴る。

開いてる席に案内され、おすすめのランチを注文して辺りを見回す。

結構賑わっている店内だが、総じて亜人種の方々ばかりだ。

犬耳、猫耳、ウサギ耳と尻尾もついて、総じて可愛らしい印象の獣人族。

耳の長さは部族によって違うそうだが、総じて綺麗な顔立ちに金髪か緑髪のスレンダーなエルフ族。

俺と背丈は変わらない、100cm位だが筋骨隆々、立派な髭を携え色黒でずんぐりむっくりだが何処か愛嬌があるドワーフ。

この店で見当たるのはそのぐらいかな。

勿論他にも多くの種族がおり、その中で部族もある。

エルフさんの中には数は少ないが、種族としてはダークエルフさんも含まれるらしい。

ドワーフさんで言えば、更に背丈が低いホビットと呼ばれる部族や、ノームにレプラコーン何かも同じ種族だが、別の部族という事らしい。

元の世界ではエルフもドワーフもホビットもノームもレプラコーンも皆、妖精に非常に近しい存在だったから、俺的には容姿が違う親戚みたいな感覚で見えてしまうが、それはこの世界では失礼な事かもしれないので、口には出さないでおこうと思う。

まあ、この店の中でも種族同士固まってる訳では無く、寧ろ種族バラバラでテーブルを囲んでいる。

皆、楽しそうに食事とお喋りに興じている姿は何とも微笑ましい。

そんな風にして料理を待っていると



「―――お待たせしました~♪本日のおすすめランチになりま~す♪」



テーブに置かれたのは小さな茶碗に盛られたカレーらしき物が5種類とライス、少し薄めではあるがナンらしきものと、ラッシー的なって、普通に日本で見るインド料理屋のメニューやん。(ここにも転生者の影が)

まあ、結果的には味も大変宜しく、大満足でお店を後にしました。

また食べに来たいと思える味ですな。

日本のインド料理屋さんは、ほとんどネパール人の方が経営してるって聞いたことあるけどほんとかな?

でも、だとしたらネパールのカレーも美味しいんだろうね。

元の世界でもっと海外旅行しとけば良かったぜ。



食後店を出て、そこからは歩きで商業区画をブラブラ。

ウィンドウショッピング何かしながら、到着した日に見かけた出店のスィーツを購入。

シュークリームでした。

クレープ屋でもと考えた時に、悪意ある笑い声が聞こえた様な気がして少しイライラしそうになる。

しかしヘラに甘えて復活。

そうして結構歩いたなと思ったら、いつの間にか商業区画と公共区画の間まで来ていた。

芝生の公園が目の前なので、近くのお店で瓶入りの飲み物を購入。

日陰になっている芝生の上で取り合えず横になり、ヘラの膝枕で休憩。

靴も脱いで裸足になり、目を瞑ると心地よい風が吹いて。

思えば日本でこんな風に芝生に寝そべった事は無かったような気がするが、懐かしく感じるのは何でだろう?

そう考えてすぐに分かった。

自分が子供の頃、親に連れて行ってもらったりしたのだろう。

それで今の俺は幼い頃の記憶が曖昧。

体は子供!頭脳はおっさん(至高の魔法使い)

(潜在記憶)が思い出したんだろうね。


気が付いたら馬車の中だった。

窓からは夕焼けの色を建物の壁が映し出している。

どうやら疲れて眠ってしまっていたようだ。



「………、すみません、アイラさん。眠ってしまっていたようです。」

「いえ、お気になさらず。それよりも疲れがたまっておられるようですね。」


「そうかもしれません。ですがゆっくりもしてられないので。」


「では、明日からは少し休憩を多めに致しますね。御体を壊されては大変ですから。」


「お気遣い感謝します。」



少し早いが、本日はこれで終了。

そのまま寮に帰る事になった。

アイラの言う通り、確かに二十日ぐらい休みなく動いてるな。

四歳児には少々ハードなスケジュールではあるね。

でも、こっちの世界がいくら厳しすぎない環境だとはいえ、俺がやってたのは馬車に乗って誰かの説明聞いたりお喋りしたりぐらいのものだ。

勿論それはそれで気を使ったり、考えたりと疲れる要素にはなるが。

それでもやはり体力は付けたほうが良いだろう。

武術なり、剣術なり、ああ、馬術とかもやっときたいな。

帰ったらヘラに相談してみよう。

ロブ・ロイにも一度聞いた方が良いかもしれないね。

そうして馬車は夕暮れる前に学園寮に到着した。



部屋に着いてそのままベッドに倒れ込んだ。

暫くそうしていると、ヘラがお湯の入ったバケツぐらいの大きさの桶を持ってきた。

桶をベッドの横に降ろすと、何処からともなく手拭いを取り出す。



―――では……()()()()


()()?」



俺の返事を聞くや否や、上着を剥ぎ取られ中に来ていたロングTシャツをスポーン!

ズボンのボタンに手をかけ始めた。



「………ちょっと待って!何で脱がすの?!」


―――ええ?いえ、御体を拭かせて()()()かと


「だって、この間こういうのはちゃんと許可を取ってって言ったでしょ!」

―――はい。ですから、先程()()()()と言いましたら、ラスティ様は()()と仰いましたので



うん、言ったは言ったけど、うん、言ってるねぇ。

上にスクロールしたら書いてあったよ。

知能犯(ヘラ)はニヤついてこちらの反応を見ている。

言い訳させないつもりだ。


俺が疲れている

    ↓

癒しや休息が必要

    ↓

寮にはシャワー室しかないから風邪ひいちゃうかも

    ↓

じゃあ、体ぐらいは拭いて寝ないと気持ち悪いわよね♪

    ↓

♪いつ拭くの♪

    ↓

今でシャァァァァッ!!!


ヘラの思考はそんな所だろう。

おまけに言質は取ったでしょと言わんばかりの悪い笑みまで見せている。

今日は疲れてるからもう諦めるか。



「分かった、でも見られながらは恥ずかしいから、ヘラは目隠しして。」


―――分かりました。



そう言って、ヘラはもう一枚の手拭で目隠しすると、手探りで俺のズボンに手をまわし、脱がされてしまった。

下着もスポーンですよ。

見えてんじゃねこれ。



「………ねぇ、ヘラ?何で腕はそこそこに股間の方を拭こうとするの?」


―――大丈夫で御座います。ヘラにお任せを♪



「いや、全然御任せできないから!さっきから僕ずっと股間の防衛に必死ですから。」

―――大丈夫で御座います。ぐへっ 大丈夫でぐへへっ。


「だめだって、拭くんでしょ!何で背中とか舐めるのっ!あははっ」

―――ぐへっへっへっ♪うっひゃっひゃっひゃ♪



こうしてこの日の夜はヘラに玩具にされながらも、何とか最終防衛ライン(貞操)は守り抜いた。

まあ、ちょっとエッチなくらいが楽しいってのもあるしね。

ヘラの胸に抱かれながら、そんな事を考えたら可笑しくてにやけてしまった。

もしかしてヘラは元気づけようとしてくれてるのかも知れない。

優しい人だから無意識でやってるのかもしれないが。

そういえばアイラの妖精さんに挨拶できなかったな。

明日謝んなきゃいけないね。


そんな事を思いながら俺は深い眠りへと





「そこは触っちゃダメ!」


―――えぇ~~~~~。





眠りへとついた。





インドカレーは無性に食べたくなるので、月一必ず近所のお店で頂いております。

「うまっ!」連呼ですよw

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