三途の川も乳次第?~心の在り様と魂の器
――――ハイネ王国/北の街・マドラ
ハイネ王都から馬車で五日。
ようやく俺達は、11名の部隊員を連れ目的の街へとやって来た。
尤も「連れて来られた。」という表現の方が正しくはあるのだが……。
『……想像以上に寒いのです。早く宿にっ、い、きっ、っうぇックシュンッ!』
―――ほらほら、ちゃんと首巻きを。
「やはり北部は冷えますね。聞き込みは後にして、先に隊の皆さんと宿に向かいましょう。」
『ふえっックシュン!!』
―――もう、鼻が垂れてますわイリナ。これでお拭きなさい。
「いつも元気なイリナも、寒さには弱いみたいですね。」
『ズズズッ、ここが寒すぎるのですよぉ。』
「そうだね、イリナが風邪ひかないうちに行こうか。」
アイラの話では、王国北部では最大の街であり、人口は三万人ほど。
ハイネ王国騎士団も常時300名以上は駐在しているんだとか。
北部地域特有であろう急勾配の屋根には30cm程の雪が積もっている。
足元の雪は殆ど除雪されているので、日の光を浴びた美しい雪の街を眺めていたのだが、イリナに風邪を引かれても困るので、ロブ・ロイ御用達という安宿へと向かう事にした。
ロブ・ロイも来たがってのだが、急用が入って断念したらしい。
「マドラの冬は初めてですが、雪化粧がとても美しいですね御姉様♪」
―――そうね、雪はこのくらいが風情もあって良いわね♪
この街に来たのは、遂にというか、漸くというか、到頭というか……。
王家からの勅命により、この地にある妖精核の回収に派遣されたのですよ。
今回は初任務という事で、王家から派遣されてきた近衛騎士8人と馭者兼雑務係の3名が同行してくれている。
「見えてきましたね、あの御宿、ですか?」
『なんかお高そうなのですよ。』
新たに完成した学園のバスケ会場で、数日後に控えた『本物のバスケットボール』御披露目試合の打ち合わせを関係者達としていたら、王家の近衛騎士達がやって来て、「勅命で御座います。」と一言。
返事する間もなくヘラと一緒に城へと連れ去られてしまった。
城では回収担当責任者である土の妖精使いさんと、妖精核回収に関する注意事項の確認をして、忙しなく二日後の出発となり現在に至る。
―――安くても立派な宿なら良いではありませんか♪
「そうれもそうですね♪」
元々バスケの試合は貴族やら商人やらと直接関わるのが面倒臭いので、俺がその試合を見に行く予定は最初から無かったから……まぁ後の事は優秀な事務局長とバーネットが上手くやってくれるだろう。
アイラとイリナは、俺とヘラが心配だからついて行くというので連れて来た。
リズとフィズには大人しく留守番をしてもらっている。
二人は王都に着いたばかりだったしね。
そんなヘラ達のやり取りをBGMに、馬車は目的の安宿へと到着した?
「「「いらっしゃいませ~♪」」」
あれ、メイド服着た十人ほどのお姉さん達に出迎えられてるんですけど……。
ロブ・ロイから安宿ってたん聞いたんだけどな……。
聞いていたより立派な宿に、皆で宿名の確認やらロブ・ロイ手書きの地図を見てあれこれ話し合っていると、恰幅の良い店主らしきオジサンが出て来た。
「いらっしゃいませ♪ご予約は頂戴しておりますでしょうか?」
「ロブ・ロイからの紹介なんですが。」
「失礼ですが代表者様の御名前を頂戴しても宜しいですか?」
「ああ、すみません。僕が代表者のラッセル・ウィリアムズです。」
「これはこれは、ウィリアムズ様は本当に御若い方でいらっしゃったのですね♪此度の御来店、ロブ・ロイ様の執事、キール様よりご予約賜って居ります。さあさあ、どうぞ館内へ。そこでは冷えますから、早速お部屋へと案内させて頂きます♪ウィリアムズ家御一行様ご案内~♪」
「「「ようこそ!温泉宿フォックステールへ♪」」」
宿のメイドさんに聞いたら、一泊最低でも一人金貨3枚は取られる、貴族御用達の御宿なのだそうだ。
そりゃ温泉宿だもんね。
今回の任務に同行してくれている近衛騎士さん達の中には貴族の子弟が二人いる。
ロイ家を取仕切る最強執事キールさんが気を回してくれたのだろう。
御代まで済んでいると店主が言うのだから、ロブ・ロイとキールさんには帰ったら御礼を言わないといけないね。
荷物搬送は宿のメイドと馭者さんに任せ、着いて早々近衛騎士さん達には、街へ聞き込み調査に向かって貰った。
勿論、温泉に入って温まりたいのは山々だったけど、そこはグッと堪えて俺とヘラも聞き込みの為に街へ繰り出しましたよ。
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今は観光客相手の屋台や土産屋の並ぶ、街のメインストリートで聞き込み調査兼観光と、お土産の物色中である。(デート感覚では…ありませんよ。えぇ決して♪)
実際は親子か何かだと思われてるんだろうけど、自然にしている方が街の住人も商店主の口も滑らかになるしね♪
アイラには、宿の店主お抱えの情報屋から話を聞いて貰うことになっている。
それにイリナの面倒も見てて貰わないといけない。
今回はこの街から馬車で二時間ほどの、街道から外れた湖の辺りが目的地となる。
雪が積もる往来の少ない道の場合は、道幅を見誤って馬車を脱輪させてしまう危険があるので、地理に詳しい案内役を探すと同時に、近隣で異変が起こっていないか聞き込むのである。
要は妖精核が原因で天変地異や凶悪な獣が暴れ廻ってる何て事になってたら、もっと大勢で対処する為に援軍を呼びに行かなければならない。
情報の無い辺境での活動等や突発的な事故等では無く、俺の気の緩みで人死が出たら誰に慰められても立ち直れる気がしないし、その後でいくら頑張って結果を出した所で、死んだ人が良くやったと思ってくれてるなんて到底思えない。
それは、俺自身が一度死んで転生しているから。
もしもあの時の飛行機事故が人災だったとしたら、俺は里奈を殺した奴を、前世の記憶が失われる死が訪れるその日まで絶対に許せないし、絶対に許さない。
例え普段が如何に善人であり、罪は償ったという全ての法的手続きが終わっていたとしても、もしそいつがこの世界に転生して来たら絶対に殺す。
思い出すのは辛いけど、死ぬ前の記憶があるという事はそういう事なのだ。
まあ暗い事を考えるのはやめておこう。
それに、さっきから誰に聞いてもマドラの街は平常運転だという事だし、考え事しながら回っていたら日も随分と傾いてしまった。
「ヘラ、そろそろ宿に戻ってアイラや騎士さん達の話を聞こう。それに――
―――温泉で妻達の胸を蹂躙したい。」と?
「ヘラさんや、言葉を途中で奪う『願望の擦り付け遊び』はしない様に♪」
―――あぁん、ラっくん鋭い~♪
「フッ、それにそんなのは毎晩の事じゃないか♪」
―――きゃぁ~♪エロイ~、うちの旦那がいつもよりエ・ロ・イ~♪
と、そんな言葉遊びをヘラとしながら、イチャイチャと宿へ戻った。
(※普段から蹂躙はしてませんよ。)
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宿に戻るとアイラとイリナが出迎えてくれた。
二人が聞いてくれた情報屋の話でも、マドラ周辺は平和そのものなんだとか。
報告を聞き終わった所で、丁度 近衛騎士さん達も帰って来たけど、彼等の報告は後で聞く事にした。
近衛騎士さん達も旅の疲れはあるだろうし、外も寒かったしね。
先ずは温泉でゆっくりして貰って、夕食の後に軽くミーティングする運びにしておいた。
俺も休憩したかったしね。
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ぐっふっふ♪前言撤回じゃ~!やってきました!温泉すっぽんぽん回!
見渡せばウチの家族だけではないのでござる~♪
近衛騎士である御嬢様方三名様までもが、産まれたままの姿で湯と戯れて居られるではア~リマセンカッ♪
美しき御嬢さん方のサクランボと、花のビラが入り乱れて見え隠れして。
マスターエロスが言っていた世紀末モヒカン野郎の気持ちが初めて解った気がする。
これが「ヒャッハー!」なんだね、里奈ちゃん。(涙)
「ラッセル君はこっちですよ♪」
―――さあ、ここにお座りになって♪
「二人共、引っ張らなくても行くから~♪」
「ラッセル君は年齢的にまだ女湯で大丈夫ですから♪」
「あははっ♪でもっ、むぐうぅ!!」
―――あん、やはり蹂躙されるのではありませんか♪
『相変わらずラッセルはエロいですね~。』
「ぷはっ!い、息できないよ、ヘラ、ちょっと、アイラまっ、むぐぐぅ!」
「あはん♪動いたら変な感じになっちゃいますよ、ラッセル君♪」
極楽の湯かと思えば三途の川だったという事実!
そう、今まさに湯の中で妻達の豊かな胸に顔を挟まれ息も出来きない。
溺れに溺れ、賽の河原の石をもすがる思いで手を伸ばし、必死の思いで突起の付いた柔らかい石を強く握りしめ這い上がる。
『まったく、ラッセルのエロさには困ったもっぎぃやぁぁーーっ!!ラッセルっ!離すのですっ!もげるもげるもげるもげるっ!おっぱいもげるーーー!!!』
「ぶはっ!!はぁはぁ、しっ、死ぬわっ!溺死するわっ!!」
『乙女の胸に何するですかラッセル!手形が付いてるですよっ!もうっ!』
こういうのと違う~。
もっと優しゅう触れ合いたいのよ~。
温泉回で溺死しかけてたら、水着回はトラウマで嫁に近づけんくなる~。
激レアなイリナの双丘も土塊握ったみたいになってしもうた。
「ちょっ、ちょっと待ってみんな。息が出来なくてホントに死んじゃうから、そういうのは部屋でねっ。ねっ!」
―――ウフフッ、少し燥ぎ過ぎましたわね♪
「ラッセル君とお部屋で、御部屋で、ベッドで、無理やり、ハァッハァッ、無理からっ!、はぁはぁっ♪」
『赤くなってるのです。ラッセル、痛みが引くまで撫でて欲しいのです。』
「こう?」
『上手なので、す♪はぁん♪摘まんじゃダメなのですよ、撫でてぇん♪あぁんっ♪ラッセルは上手すぎるのですぅん♪』
「摘まんでないし、ただ上の方を撫でてるだけでしょ。冗談言ってないの、もう平気?」
『ありゃりゃっ、バレたのですよ♪』
交換条件の提示で何とか溺死の脅威から逃れ、その後は桃色桜色飛び交い乱舞する温泉を満喫する事が出来た。
洗いっこは大変に楽しゅう御座いましたよ♪ムッキャッキャ♪
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夕食は大きな食堂で、今回の旅の仲間全員と一緒に頂いた。
女湯で会った女性近衛騎士さん3人とは気まずい雰囲気になってしまったのだが……まあ色も形もどれが誰のかちゃ~んと脳内フォルダに記録させて頂いています。うっひょっひょっ♪
料理は非常に豪華で、ジビエ的な物と一緒に件の湖で取れるという淡水エビが、日本でいう車エビのような大きさで味も食感も良く、どの料理も大変美味しゅう御座いました。
その後のミーティングでは、俺とヘラの聞き込みと変わらず、どの報告もマドラの街が平常運転であると云うものだった。
今のところ異変や何かは起きていないという事で間違いないようだ。
明日の午前中も聞き込み調査はするが、それでも変わった事が無い様であれば、明後日の早朝に任務遂行となる。
回収予定日までは各々体調を整えるよう皆に指示して、その日のミーティングは終了した。
因みに。
ミーティングが終わったのは夜の十時を過ぎていたので、俺は部屋に戻って直ぐに寝てしまったそうだ。
なので次の日の朝、ヘラ達3人がテカテカしてた理由を俺は知らない。
――――マドラの街/三日目の早朝。
生憎の曇り空ではあるが、夜明け前に出発する。
アイラとイリナは宿で待機。
俺達が夜になっても街に帰らなかった場合は、翌朝に街駐在の騎士団と捜索に来て貰うことになってる。
案内役として湖で漁師をやっている男性が6名と、マドラ駐在の騎士団員が追加で10名。
その為に馭者も3名増え、総勢32名の大所帯になってしまった。
まあ、少ないよりは良いだろう。
暖かそうな狼の毛皮で作られたロングコートを着たアイラと、達磨の様に着膨れしたイリナに見送られ、俺達は湖を目指し出発した。
――――マドラの街近郊/スリング湖・湖畔
移動中に雲は消えて晴れ渡り、地元漁師さん達の正確な案内と誘導のお陰で、二時間後には難なく目的地の湖に到着した。
漁師さん達曰く~♪
標高300m前後の小さな山間にあるほぼ円形の湖で直径は約1km。
水深は最大15mで、湖に繋がる河川は二つ。
大昔に北の山から清流が流れ込み、渓谷に沿って流れる川として大河へと繋がっていたが、ここの地盤は石灰岩を多く含んでいた為、徐々に浸食され現在の様に湖を形成したと考えられている。
湖へ流入するのは北の国境付近にある高山地帯が源泉の清流、クローネ川。
流出するのは流れの穏やかなブルグ川で、エール川の右支流となる。
エール川は北のレーベン共和国からハイネ王国の東を流れ、南のコロナ獣王国を通り海へと繋がる大河である。
石灰岩の地盤が流された為、たまたまその下を通っていた温泉が湖底から湧いており、気温が低い時期は毎日のように湖面から立ち昇る蒸気霧が見れる。
流入するのは山からの冷たい雪解け水であるが、湖底から湧く温泉の影響で、一年を通して水温が高く、海老養殖等も盛んに行われているんだとか。
柔らかな朝日が湖上の蒸気霧と周囲の雪景色を白金色に染め上げている。
それらが相まって何とも朧々で幻想的な風景を見せてくれていた。
説明乙な漁師さんには感謝するが、言わずもがな絶景である。
こんな景色が見れるならアイラとイリナも連れて来たかったな。
そんな事を思いながら、手を繋いでいたヘラの顔を見上げると、残念ながら俺とは反対方向にある北西の林を見つめていた。
―――すぐ近くに居るようです。
「すぐって、妖精核?そんなに簡単に分かるの?」
―――向かいますか?
「そうだね。場所が分かってるなら、早く迎えに行ってあげよう。」
―――感謝を。
俺に振り向いて話すヘラの声はとても穏やかで。
少し寂しそうな笑顔は凄く綺麗で、何だか急激に耳と顔が熱くなる。
「で、でっ、どっちかな?」
―――彼方の林の中です。うふふっ♪
どうやら見惚れていたのがバレていた様だ。
マドラで合流した人達と馭者さん達には、馬の世話と昼食の準備や休息場の確保、それと広範囲の警戒を指示。
俺はヘラと手を繋ぎ、回収部隊の近衛騎士8名を連れ、林の中へと踏み入った。
―――見えてきましたね。
「聞いていた通り、とても綺麗な姿だね。」
林に入って五分ほど。
木漏れ日を反射して輝く小さな粒子が揺らめき、凡そ5m程の球形空間を形成しているモノを見つけた。
もちろん初めて目にしたが、ロブ・ロイに聞いていた通り、結晶化する前の思念体で間違いないだろう。
「では回収を始めるので、皆さんは周囲の警戒をお願いします。」
「分かりました。皆、二人一組で―――」
同行の近衛騎士さん達に周辺警戒をお願いして、俺とヘラは思念体が作る球形空間の傍まで移動する。
傍には丁度大きな切り株が有ったので、そこに持って来た鹿の毛皮を絨毯代わりにして、ヘラと腰を下ろした。
「……怖いからヘラがやってくれる?」
―――ですが……。
思念体を妖精の石棺に納めるには、妖精使いの血液と毛髪が必要なのだが……。
髪は抜かずに一本の半分ほどで十分……だけど、血も一滴で良いとは言え、血が出るまで指に針を刺すなんて自分で出来ないっす。
「……おねがい、ヘラ。」
―――おっ、おまかせをっ!
ヘラの胸元に抱き着いて、上目遣いで甘えてお願いしたら簡単に了承してくれた。
子供の特権だな。うっしっし♪
ヘラが慎重に刺してくれた左手の親指から出た血を、切った一本の髪と一緒に妖精の石棺に入れる。
―――レロレロレロレロレロ~♪
と、俺の親指を当たり前のように口に咥え、小さな傷口を念入りに舐め続けているヘラさんの表情は恍惚としていて……人には見せられない。
とにかくヘラはそのままにして、俺は妖精核の回収作業を始める。
作業と言っても難しい事ではない。
妖精達の想い出を、彼等が満足するまで黙って聞いてあげるだけだ。
それらは心に直接語り掛けてくるのだが、どれも断片的な想いの数々であり、追体験ほどの物ではない。
愛した人や楽しい仲間達との穏やかで賑やかで、とても楽しかった幸せな日々。
しかしその者達が瞬きの間に年老いて訪れた、幾百の悲しい別れ。
どれも嫌悪を抱くような怨念や憎悪では無い。
只々、彼等がどう生きて来たのかを、どんな人達とふれあい、どんな別れをして来たのかを。
それらすべての想いから、人々へのとても強く深い愛情を見る。
―――ありがとうございます。最後を聞いてもらえたのがラスティ様で、きっと満足して逝ったと思います。同胞として最大の感謝を。
ヘラの言葉で我に返ると、目から熱いものが流れ続けていた。
手に持っていた妖精の石棺に目を落とすと、いつの間にか赤とオレンジが入り混じった、とても美しい宝石が納まっている。
その蓋を閉めて懐に仕舞い、ヘラに抱擁されたまま、俺はその場で泣き続けた。
決して悲しいとか辛いとかではない。
妖精の、彼女のとても純粋で、果てしない時間の中で得た様々な想いに心が震えて、泣くことでしか自分の感情を表現する方法が分からなかったから。
「……そう、だと良いな……。」
こんな自分が情けなかったのかもしれない。
俺にはここまで純粋に人々に愛情を向け、優しく許すなんて出来ないだろう。
それでも彼女から受け取った想いはとても大切なモノだと解る。
誰にでも愛情をもって接することは出来ないにしても、もう少し広い心で人の過ちを許せと教えてくれたのかも知れないね。
本当に頭が下がる思いだよ。
暫くして、ヘラは甘えた俺を胸に抱き上げ、絨毯を片付けて歩き出した。
近くを見張ってくれていた近衛騎士さん達に指示を出している様だ。
俺はというと、そんな母性溢れるヘラさんの豊かで柔らかな胸に抱かれ、艶めかしい首筋に手を回し顔を埋めて、甘い香りのする美しい髪で顔を隠し、何を聞きかれてもイヤイヤする子供になって甘えている。
それをにこやかに頬擦りして返してくれるヘラさんの胸の中で、いつの間にか眠りについていた。
精神年齢が中年でも、甘えたい時だって多分にあるのですよ。(ぐへへっ♪)
目が覚めたのは夕方で、いつの間にか添い寝していたアイラの頬擦りで目が覚めた。
自分では気付かなかったけど、回収作業に四時間ほど掛かっていたらしい。
マドラに帰ったのは昼過ぎで、案内役の漁師さんやマドラ駐在の騎士団は、アイラが解散しといてくれたそうだ。
全員に御礼の金貨一枚を渡してくれてた様で、流石アイラさんマジ有能である。
夕食の際、隊員達と相談した結果、王都に帰るにも準備が必要なので、二日後の出発となった。
これ幸いと翌日は昼から帰路の準備日にして、アイラとイリナを含む全隊員で早朝のスリング湖の絶景を見に行く事が出来た。
二人が大変喜んでくれたので、一緒にマドラに来れて良かったと思う。
出発の朝には漁師さん達が、天然氷に閉じ込めた大量の海老を土産に持たせてくれた。
また来ると見送りの人達に手を振り、馬車は帰路につく。
帰りも5日の予定だから、帰ったらもう2月。
妖精使いの仕事を知る事が出来た旅でもあったし、妖精の優しい想いに触れる良い経験が出来た旅でもあった。
この任務が成功したのだから、これから近場の任務は俺とヘラが行く事になるだろう、
今回は初見だったので、近衛騎士さん達が来てくれたけど、次からの為に傭兵さん探さないと行けないなぁ。
ハァ~、どっかに都合よく凄腕剣士とかいね~かな~。
長くなってすみません。
無能な焔魔堂をお許しください。




