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ロブ・ロイからのお願い~説明役が居るのでどうやら鈍い系になれない僕 

いつもお読み頂きありがとうございます。

駄文失礼致します。



――――ハイネ王都近郊/牧場地域




『それじゃあ、また来るですよ~!』


「おう!気ぃ付けて帰れよ~!!」




早朝、集落の人達に見送られての出発である。


昨夜はジルはおっさんに、所謂『ばん馬』かその品種改良前の血統と思われる大馬の飼育、繁殖、調教の大まかな展望を聞いた。


大きな馬の活用法は幾らかある。

もちろん大型の馬車が欲しいというのが一番ではあるのだが、人に懐けば農業や林業、他にも利用価値は沢山ある。


ヘラは気性が荒いと言ってたけど、大型馬は比較的優しくて賢いはずだと思い込んでおこう。


デカイのカッコいいしね。


もしかすると、人間に化け物扱いされて不信感を持っているだけかもしれない。

まあ、地球とは違うのかも知れないけど、こればっかりは飼ってみないと分んないしな。

兎にも角にも、そこら辺はジルのおっさんに任せておきましょう。



『早くカレーが食べたいですよ~♪』


「そんなに好きなら実家で作り方習ってくるね♪」

『おお、それは良い事です!毎週カレーの日をつくるのです♪』

―――周期的に食べたくなる味ですね♪



「暑い時期でも寒い時期でも美味しい料理って他に無い気がするな。」


『もうお腹減ってきたです。』


「さっき食べたばかりだろ……デブゴンになるぞ。」


―――美味しそうですね。


『何ですかその目は。ヘラ姉、腕を噛まないで欲しいのです。アイラも何故腕を持つですか?ちょっとっ!二人共っ!痛いのですよっ!辞めるのですっ!アァッ♪何かっ、変な扉が、開いちゃうぅ~♪』



楽しそうで何よりですな。


昼食に寄った行きつけのエスニック料理店では、新メニュー『香辛料と発酵乳に付け込んだ牛モモ肉のコロナ風山賊焼き』がとても美味しくて、イリナはお持ち帰りまでしていた。


食い過ぎでしょう。



てか俺も太らない様にしないと………。






――――ハイネ王都/住居区画/ロイ家




12月末。


5連休の祝日に入り、イリナは朝早くから家族と狩りに出掛けた。


休み前日、ロブ・ロイの家から招待状が届き、『明日、家でパーティーやるからおいで』と誘われ、何とも急ではあるが興味もあるのでお邪魔してみた。



広い庭園には噴水。


その奥に聳えるのは、大きな白い御屋敷。


正直ロブ・ロイからは想像出来ない美麗な建築物である。

ちょっと失礼か。


ロイ家所有の馬車は守衛のいる門を素通りし、屋敷の前で停車した。



「凄い御屋敷だね。」


「ラッセル君。ロブ・ロイ様は伝説の妖精使いであり、元は上位貴族でいらっしゃいます。今は御自分から貴族の位を返上されましたが、当時のまま御屋敷も使用人も維持されていると聞いてます。とても凄い方なのですよ。」


「面白い爺さんって感じだったから、貴族って感覚は無かったな。」


―――ロブ・ロイは歳こそ取りましたが、今でも有能な妖精使いですよ。


「まあ、これ見せられたら信じるしかないよ。」

「何だか信じたくないみたいですね?」

―――ウフフッ♪



馬車から下り、出迎えてくれた侍女さん案内の元、高い天井の通路を進み、とても大きな部屋に案内された。


パーティー会場になってるらしく、多くの人で賑わっている。

そのままパーティー会場の奥の部屋に案内され、ようやくロブ・ロイに会う事が出来た。



「おめでとう、ヘラ、アイラさん。ラスティは抜け取るとこもあるが、儂の可愛い孫みたいなもんじゃ、これからよろしく頼むよ。」


「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」

―――任せておきなさい、ロブ・ロイ。ラスティ様はちゃんと幸せにするわ。


「そうじゃな、二人がおれば安心じゃわい♪」



二人に頭を下げるロブ・ロイを見て、俺は少し恥ずかしくなった。



「ラスティ、いやもう結婚したのじゃからラッセルと呼ぼうか。」

「どっちでも良いよ、ロブ・ロイ。」



嬉しそうな顔をしたロブ・ロイに頭を撫でられる。

そうして豪華な円卓を囲むように皆、椅子に腰を掛けた。



「それで今日は何のパーティー?」


「ああ、これは毎年やってるめんどくさいもんでな。孫のハンター・パル・ロイとの求婚を求める阿呆共の為に仕方なくやっとるんじゃ。」


「ハンターさんモテるんだねぇ。」


「いやぁ、金目当てじゃよ。坊なら予想はつくじゃろ。」

「まあねぇ、でもハンターさんに求婚って……本人居ないんだよね?」


「いつもならあんな阿呆共は無視して出かけるんじゃが、坊の結婚祝いをと思っての。お~い、キールよ、あれを持ってきてくれんか。」



暫くして執事の男性が、ロブ・ロイの後ろの扉から台車を押して現れた。



―――それは。



ヘラは何か知っている様だ。

ロブ・ロイは台車の上に幾つも置かれた、手の平サイズのアクセサリケースの様な物をこちらに見せた。



「これは妖精の石棺(ようせいのせっかん)と言うもんじゃ。儂らは単に(ハコ)と呼んでおるが、(ヒツギ)と呼ぶも者もいれば、揺り籠(ゆりかご)とも呼ばれとる。」



それをパカリと二枚貝の様に開くと、中には美しい青い宝石が入っていた。



「こいつは通称、妖精核(ようせいかく)。つまりは仮死状態の妖精じゃ。」



とんでもない事をさらっと言われても困惑するしかないんだけど……てか異世界で妖精のヘラに好かれてから、いや、きっとこの世界で前世の自分を思い出してから、何かあるんだろうとは思っていたけど……。


やっぱり何かあるのね。



「まあ、こいつは良く出来た偽物(フェイク)なんじゃが、色や形は千差万別じゃのぉ。詳しい事はパルが話すと言っておったのじゃが、そうも行かなくなってな、出来るだけ早く坊には教えて置きたかったんじゃ。それに結婚したんじゃし丁度良いと思っての。」


「それは結構大変な話なの?」


「儂が生きとる間は出来るだけ手を貸す。どうじゃ、聞いてくれるかの?」


「ロブ・ロイには良くして貰ったからね、詳しく教えてくれる。」



軽く微笑んで頷くと、ロブ・ロイも頷き返し話を始めた。



「先ずは、胡蝶之夢の事から説明しようか。元の名前は知らんが、あれは何千年前じゃったかに転生者が作った組織の名前じゃ。昔から仮死状態になった妖精を王家からの依頼で回収しとる。」



まあ、そんな所だろうけど……王家か。

余り関わりたくなかったのに。



「仮死状態になってしまった妖精は災厄を齎す。凶暴な獣や人間、植物や泉に取り込まれると、取り込んだ者の理性や力が暴走し、暴れまわって人死にが出たり、森が枯れたり水が汚れたりといった……所謂、災害みたいな事が起こる。」



……とても厄介な事になってるよねぇ。



「まあ、それは仮死状態で数年から数十年は経ての事じゃ、滅多には起こらん。だが回収作業をやる妖精使いが極端に減って来てしまってのぉ。ハイネ王国に居る現役はパルだけなんじゃ。」



確かに一人しかいないのは問題かな。

ハンターも最近殆ど王都に居ないみたいだし。



「そこで坊には近隣だけでも良いから回収を手伝って欲しいのじゃ。他国の妖精使い達も手一杯でのぉ、儂も現役復帰を決めた所じゃ。」



「まあ、近場ならヘラと一緒に行けるから手伝えると思うけど。」


「そうか、受けてくれるか。近場だけでも十分助かる。」


「でも何で他の妖精使いは回収やらないの?」


「それは……妖精の石棺を作ったのが雷の妖精じゃからじゃよ。」

「雷の妖精使いにしか使えないの?でもハンターさんの相棒は土妖精のマルコだし、アネルは水の妖精だよね?」


「うむ、儂とパルが使えるのは適正とでも言うのかのぉ。ヘラ?」



―――適正と言うよりは、因果と言うべきでしょうか。昔は沢山の妖精使いが使えたのですが、今では盟約を結ぶ相手との深い関係が……その弱くなって来たと言いますか……。


「つまり昔ほど強く妖精との契約関係が結べなくて、誰でも使えないという事?」



―――簡単に言えば……ですが。私はとても長い時を生きていますが、本契約、つまり契りを交わす相手はラスティ様が初めてという事です。



何か遠回しな言い方だな。

契りを交わすのが初めてなのは聞いたけど。



「ラッセル君、分かりますよね?鈍い系じゃないですよね?そういう事ですよ。」


「益々分からん。どういう事?」



ヘラとロブ・ロイが顔を背ける。



「ラッセル君、耳を。」

(何でしょうか?)

(ですから、重なると言いますか、繋がると言いますか、尾が交わると言いますかですよ。)


「ああ!つまりはそういう事ね。」



そりゃロブ・ロイがヘラに振る訳だ。

アネルに奪われたというか奪ったというか奪わされたんだものね……ということは、ハンターとマルコもそういう関係という事な訳で………。



「ゴホンッ!まあ、なんじゃ………本来妖精とは、妖精使いとそういう関係になる事を、前提として……ここからはヘラの方が詳しいじゃろ?」



―――私は……想いを交わす相手は、生涯一人と、教えられましたし、そう決めて、いましたので、軽い、契約はしたく、無かったのです。



ヘラの恥じらう姿ってやべーな。

てか初めての人を探して一万年か……。

これはもっと愛を注入せねばなるまいよ!!



「まあ、知っとるとは思うが儂もパルもそういう事になっとる。じゃから箱を使える様になったみたいじゃ。ヘラの言った通り、妖精達はそう教わっていたようじゃから、何らかの意味があるんじゃろう。」


「という事は、最近の妖精使いは何というか、そういう事をしない様になっているという事だね。」


「そうじゃ。まあ聞いとるかもしれんが、妖精使いから妖精への求婚はしておる。じゃが妖精側が中々その気にならん。これは推測の域を出んが、ヘラが言う様に大切な者に先立たれて操を立てておるとか、生き物への博愛精神から仕事だけの関係と割り切っておるのかもしれん。儂もそこら辺をアネルに聞いてみたんじゃが、なんせあれじゃからのぉ。ヘラに話を聞くまで嘘ばっかり教えられたわい。」



妖精は実は仮死状態になって、それを回収しないと大変な事になって、手伝えるのは俺とヘラだけって事か。


でも何で仮死状態になるんだ?

深い関係にならないと箱が使えないってのも良く解らん。

妖精を創造した者は何がしたかったんだろ?

それに王家も絡んでいると……。


話疲れたのか、ロブ・ロイは執事が出してくれた紅茶を飲み、一服ついている。



「その辺は分かったけど、色々と謎が多いね。」


「儂も太古の人間が何故に妖精達に美しい容姿と性格、更には心まで持たせたのか、仮死状態になる要因、そもそも何故に妖精が作られたのかに関しては、70年程関わってきたが、推測どころか憶測での話しか出来ん。ヘラも含め、それはどの妖精にも教えられていないそうじゃ。」


「予防線を張りたくても、諸々要因が分からないから出来ない、けど仮死状態の妖精確保は待った無し。」


「だが一つだけ……解明に至る方法がある。」


「そんなのあるの?」


「そう、妖精との間に子を設け、妖精郷に行く事じゃな。」


「でも過去には行った人達も多いんでしょう?」


「確かに行った者はおる。じゃがその尽くが、暫くすると子を残し姿を消しておる。」

「死んだってこと?」


「これは憶測の域を出んが、妖精郷に至った者には何かしらの条件や約束、もしくは役目が与えられるのかもしれん。実際に至った者達の伝聞や手記は沢山残っておるのじゃが、どれも向こうでの礼儀作法だ土産は何だとどうでも良い話ばかり。」


「隠してるか、隠さなきゃいけない事が有ると。」

「儂はそう思っとる。」



そういう意味では、ロブ・ロイもハンターも相方が同性だから行く事は出来ないのね……。



「じゃから坊には頑張ってもらわんとの。なぁ、ヘラよ。」

―――余計なお世話ですっ!ラスティ様はきっと立派に役目を果たされます!


「立派にのぉ♪」

―――うるさいっ!


「りっ、立派に御姉様の御姉様をラッセル君は……はぁ、はぁっ♪」

―――アイラまで……いい加減にしなさいっ!!



ここらが辺が、今のところ解ってる事かな。

ハンターにも会ったら話を聞かせてもらった方が良さそうだ。


その後は仕事の流れの説明。


仕事の依頼は王家からの手紙で来るという事。

依頼の確認をしたら、数日中には出発して依頼に向かう事。

もし危険だと判断した場合、対処出来ないと判断したら速やかに騎士団詰所に報告する事。

回収した妖精核は、王城に持参して担当係である土の妖精使いに直接渡す事ets。



てか王家から依頼が来るのね………何かやだな





違和感半端ないが、ロブ・ロイとの話を終え、パーティー会場の食事にありついた。

どれも美味しい御料理で♪


ロブ・ロイは話の後、学園長の別荘に向かったらしい。


あの二人、実はデキてるのか?

なんて軽口をヘラとアイラの三人で話しながらロイ邸を出る。


帰りの馬車には五つの妖精の石棺と、パーティー料理の折り詰めが積んである。

本当の結婚祝いは、胸ポケットに入れた金貨1000枚の小切手。


さすがはロブ・ロイ、太っ腹♪


それはともかく、急いだ方が良いのは何かあった時用の防衛手段だろう。

次に安全な移動手段。

それに戦闘能力が高いという亜人種を最低二人は仲間にしたい。


ヘラは強いので守る必要は無いのかもしれないけど、それでも夫としては心配である。


獣ごときなど一撃に屠れる兵器を開発するべきか。

もしくは対抗できる獣を使役するか。


でも今の姿で熊とかに跨ったら金太郎さんだな。


不謹慎かもしれないが、少し楽しくなって来たので色んな構想を練りつつ、寮の事務局へと向かった。

銀行で小切手の換金にですよ♪




取り合えず、明日は実験施設の筋肉姉妹に会う予定だから、序にマッドサイエンティストでも紹介してもらおうと思います♪







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