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結婚とは適切な準備である~悪魔的少年の囁き 


いつもより少し長いです





――――ハイネ王都/商業区画/胡蝶之夢





何時もの如く事務所の掃除中。



「それでラッセル、アイラの実家には何時挨拶に行くの?」


「先週、今週と忙しかったので、来週に予定を付けてもらってますよっと。」



11月も終わりに近づき、前世と違わずみ~んな忙しい年末……の筈。


そんな中、一人ソファに腰かけ、優雅に紅茶を啜るハンター・パル・ロイへ、雑に積まれた本十冊ほどを持ち上げながら白い目を送った。



「そっか~、でもラッセル、あなた家名無いわよね?」

「ありませんけど。」



暇なのか、俺に抱き着きついて話し出すパルの胸が何とも……。



―――あなた。

「ちょっとハンターさん、本が運べないから離れてくださいよ~。」


「何だよぉ、この間きもちいいって言ってくれたじゃ~ん♪」

「ラッセル君!」

―――あなた。


「そっ、そんなこと言ってないでしょ!ヘラもアイラも見てますから離れてくださいって。ああっ!」


「ほ~れほれっ♪顔挟まれて気持ち良いでしょ♪」

「ちょっ♪、だれ、かっ、たしけてっ、息がっ♪」


「何を嬉しそうにラッセル君!自分から挟まりに行ってませんか!!」

―――良い度胸です。死になさい。


「「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」」



ハンターと二人、全身にドアノブ静電気レベルのダメージを暫く浴びせられるのでした。


俺は悪く無いと思うのだけど。



―――反省を。

はい。すみませんでした。





掃除が終わったのは丁度お昼時。


最近、仕事の日はアイラお手製の五段重を皆で頂いてる。

勿論、無遠慮なハンターと水妖精マルコも一緒なんだけどね。


だからアイラはいつも多めに作ってくれてるのですよ。

愛妻弁当って奴ですな。ぐへへっ♪

おにぎりと唐揚げうましっ!



「それでさっきの話の続きだけどね。」


「……何でしたっけ?」


「家名よ家名。いくら将来性があるからと言って、貴族のお嬢さんが御相手なのに、家名も無しってのはお姉さんどうかと思うのよ。」


「ほう、そういうものなのですか?」


―――確かに、それは失念していましたね。申し訳御座いません、あなた。

「私はぐへっ♪特に気にしてぐへへっ♪いまぐへへへへっ♪」


「家名ね~。」



ちょっとヘラがあなた呼びするのは何かテ~レ~るぅ♪



「時間も無いなら、ラッセルの親御さんへは後で報告すれば良いと思うけど、アイラの家へ挨拶に行く時までには決めて、ちゃ~んと役所に届けてきなさいね。」


「じゃあ今夜みんなで考えようか。」

「はい♪」

―――そうですね♪


「何だか楽しそうね。あたしもラッセルの妾になろうかしら。」


「ダメですっ!」

―――少なくとも生活態度を改めるまでは許可しません。


「はいはい、わかりましたよ~。」

―――パル、可愛そうに……(笑)

「マルコ、ひどくない?」



昼食後は事務所で楽しく雑談して過ごし、夕暮れ前には事務所を後にした。





――――ハイネ学術学園/学園寮




寮に戻ってすぐにベッドへダイブ。


ここでの暮らしにも慣れて来たのか、学園生活を謳歌しているイリナはまだ帰っていなかった。



「しかし家名か~。何つけても良いのかな?」


―――既存の貴族と被らなければ良いのではないですか?


「事務局に貴族の名簿一覧くらいはあるでしょうから、食堂に行く時にでも借りてきますね。」

「そうだね、良いの考えついても被ってたら意味無いし。」


―――それが宜しいかと。


「それに挨拶行く前にやっとかないけない事って他にもあるのかな?」


「家はそれほど上位の貴族では無いので、結婚についての形式等には……それほど五月蠅くは無いと思うのですが。」


「前にも聞いたけど、面子的なものは気にされる方だって。」

「そうですね、でもそういうのを気にしてるのは父だけだと思います。」


―――以前のアイラの様に、生真面目で頑固な性格なのでしょうか?


「そ、そうなのかもしれないね。それだけなら良いのだけれど……。」

「……何だかすみません。」


「まだ会っってもいないんだし、謝る必要なんて無いよ。アイラのお父さんが怖い人じゃ無かったら良いなって思っただけだからね。」



『ただいまー♪お待たせしたです!ご飯に行くですよ~♪』



謝るアイラを諭しているとイリナが帰って来たので、話を一度中断して皆で夕飯を摂るために食堂へと移動した。



そうそう、最近は子犬も連れて食堂に行ってる。

今までは気にしてなかったんだけど、寮生で犬や猫を飼ってる人は食堂で肉類を小さく刻んで、床に皿を置いて与えてるのに最近気づいた。


ペット可の寮と食堂に感謝。


というか、この子犬の飼い主見つからないのかな?

あまり一緒に居ると別れる時に悲しくなっちゃうのよね。


刻んだ鶏肉を皿に入れ、足元に置いてやる。



元気に食べる子犬の頭を撫でて、俺も夕食を頂いた。







『やっぱり深淵の黒き邪竜、アビス・ブラック・ドラゴンに因んで、家名はドラゴンが良いのですよ!』


「深淵とか結局関係ねぇ~じゃねえか。何処の竜だよそれ?」

『おじいちゃんの若い頃のあだ名ですよ?』

「面白い爺さんだな♪」

『そうなのですっ♪』



部屋に戻ってから四人で家名を考えているんだけど、良さそうなのは大体貴族に使われてるんだよねぇ………。


俺も皆も飽きが入って来たので、今は休憩がてら、紅茶を頂きつつイリナと遊んでやってるんだけど……傍から見たら、俺が遊んで貰ってる様にしか見えないんだろうね………。



「てか、ドラゴンてイリナだけだし。俺等ドラゴン違うしドラゴンは却下で。」

『そんな~。』


―――ラスティ様に相応しい、落ち着いた姓が宜しいかと。


「う~ん。スミス、は使われてますね。ラドクリフとかクロウとかどうでしょうか?」

「それらはやめておこう。」


「何故ですか?」


「知ってる人と同じ名前になっちゃうから。」



簡単に決まると思ったんだけど、中々どうして難しい問題でして。



『じゃあじゃあ、ドラグーンは?』

「だからドラゴン系から離れなさい。じゃないと……食べてしまうぞ~っ!」

『きゃぁ~~♪』


―――ほんとに、子煩悩ですわね、あなたったら♪

「きっと良い父に成られると思います……ぐへっ♪」



五歳で子煩悩かよ。


その後も知ってる姓を皆で出し合い、何とか決める事が出来たんだけど、疲れのせいか何時の間にか眠りについていた。


 


翌日、役所に苗字の登録に行った際、俺の出生日の日付や名前が適当でスコットに怒りを覚えたが、まあ、あの親父なら仕方ないとヘラが慰めてくれたので許しておく。


ついでに家族みんなの姓を変更しておいた。







――――ハイネ王都/住居区画/ボンベイ邸




一週間後。




「只今戻りました。」


「御久しゅう御座います、アイラお嬢様。此度の事、大変喜ばしく。ルドラ・ボンベイ子爵様とカイラ様、長兄のオム様が客間で御待ちで御座います。」


「ありがとう、シモン。」


「では、皆様御案内致します。」



執事のシモンさんに案内され客間へ。


通された客間には、アイラと同じ浅黒い肌をした人達がソファに座っていた。



「お帰りなさい、アイラ。ヘラ様、ようこそ御越し頂きました。そちらがラッセルさんかしら?」


「良く帰ったアイラ。皆さん、良く来てくださった。どうぞ掛けて下さい。」


「久しいなアイラ。兄弟で一番最初がお前とはな。」



御家族は一応は祝福する気ではいてくれている様だが………。


視線が痛い。



「初めまして、ボンベイ子爵様。私はラッセル・ウィリアムズと申します。此度は、アイラさんとの結婚を御許し頂きに参った次第です。先ずは土産を御持ちしましたので、どうぞ御納め下さい。」


「これは御丁寧に。さあ、どうぞお掛け下さい。」


「では失礼致します。」

―――失礼致します。



皆でソファに座り、土産を開けて貰った。


土産のチョイスはヘラとアイラである。

カイラさんにはアイラの手作り御菓子の詰め合わせ、ヘラからは白金(プラチナ)のネックレスだったから、否な予感がして昨日聞いたらそういう意味では無いらしい。


緊急時に身元が分かる様になっているのだとか。



「まあ、これはアイラが作ったの?一つ頂くわね♪」

「はい、お母様。どうでしょう、お味は?」

「―――とても美味しいわ。そう、アナタも頑張っているのね。」

「はい♪」


「ヘラ様からこの様な物を頂いても宜しいのかしら♪」

―――それは緊急時に居場所が分かる様になっています。御納め下さい。

「あら、緊急時って、こんな歳のおばさんが攫われちゃうのかしら♪」

―――それは、私達の夫に関わる女性なので、万が一の保険です。身に着けて置いて下さいまし。

「では、遠慮せず頂いておきます。有難う御座いますヘラ様。」



まあ、一応の保険である。


それはお金の無い俺が、この家に持ってこれる一番の土産と関連しているのですよ。

その事の意味に気付いたヘラが、黙って用意してくれたのである。


留め金部分にヘラが感知しやすい鉱石が使われている。

白金なんだけど、この世界では銀擬きとして余り重宝されていないらしい。


いつだって素晴らしい女性ですよヘラさんは♪


―――毎日言って下さい♪


ハイハイ。



「これはっ!」

「父上、これはとんでもない物です!ラッセル君、これを持ってきたという事は、そう取っても良いという事だね?」


「はい。それはこれからアイラさんと結婚させて頂くにあたり、私もまだ若輩の身故、大きな事業はまだ手に余りますれば、どうぞボンベイ子爵様に御納め頂きたく御持ち致しました。結納の代わりに御納め頂ければ幸いで御座います。」



何てことは無い。

バスケの会場施設の図面と、ユニホームのデザインに会場運営のノウハウ等。

本場アメリカのプロが使う会場を見本に、俺が考えて建築関係と服飾関係に造詣の深い学生に書いてもらった物だ。

スーパープレイを目の前で見れるのは勿論、ボールや、時に選手が客席に飛び込むという、ある種のアトラクション要素も含んでいる。


それにユニフォームも良い物が出来た。

俺の好きな黄色と紫を基調にした物だけどね。

この色合いは余り使わなさそうだから、ボンベイ家に優先的に使ってもらいたい。

一応、サードデザインまで用意しておいた。


ちゃんと学園長には既に許可を得ていますよ。


「幼い貴方が高価な物を持って行っては、逆に悪い印象を与えるかもしれません。安易な貴重品等では無く、貴方自身の器が分かる物を用意すべきです。」


と、言われたので、どうせ自分で運営しないのだからと、学園長にこの提案を聞いてもらったら、『最良』とお褒め頂いた。


実際、こっちよりも遥かに高度な文明社会から持って来た知識だから、狡い手だという事は分かっているし、末娘の結婚相手に人参をぶら下げられたら、否とは言えんだろうという非道極まりない手法だと自分でも理解している。


余程の馬鹿でなければ利益計算が過るから、天秤が傾いた状態での交渉になってしまうのが人心。


それにアイラと俺は相思相愛……ぐへ。(言い過ぎた!ヘラさん込だ!)


閑話休題。 


自分達にとって有為な人物が、わざわざ末娘と結婚してくれると言うのだから、ボンベイ家の誰も不満を漏らす意味がない。

色々な癖や、覗きの事実を知った時は確かに仰天したはしたけど、それはあくまでも彼女を構成するほんの一部であり、良い妻に成ろうと純粋に努力する姿も、それが目に見えて成果を出している事も俺は知っている。


確かにアイラの容姿はとても美しい。

しかしそれを上回る物が彼女にはあることを知っている。

ヘラやイリナ、俺に対する優しさと愛情を常に感じる。

向上心を持ってしっかりと人生設計し、失敗しても前を向いて進める強さ。

蟠りがあっても、許せるようになった心の広さ。

見習うべき所の多い、素晴らしい女性である。


それらを考えれば、多少の癖など大した事ではないし、どんな手段を使ってでも確実にアイラを嫁に貰いたい。


とは言え、食べたり塗り合ったりするやつは俺も無理っすけど。

そうして俺はヘラとアイラに目線を送る。



「ラッセル殿。私は兄として、アイラとの結婚を認めたいと思う。」

「そうね♪アイラも幸せそうだし、アナタもオムも篭絡されちゃったみたいだし、私もこの結婚、反対する理由はありません♪」


「五歳の子供に何をとも思っていたが、如何やら目を曇らせていたのは私自身であったようだ。この書類に目を通して、直ぐに皮算用をしてしまったが………君は既に、男の器で私を上回っている様だ。そんな男との結婚であれば、反対の言葉など鼻から言える立場に私は居ない。アイラを幸せにしてやって欲しい。これは親としての願いだ。よろしく頼む、ラッセル・ウィリアムズ君。」


「こちらこそ、宜しく御願い致します。」



ボンベイ子爵と握手をすると、隠れて見ていたのか、アイラのお姉さん達が客間に飛び込んで来た。


アイラは他の兄姉に祝福されながら、涙ながらに御礼を言っている様だ。

5人兄弟の末っ子で、結婚はアイラが一番乗りだという。


長男のオムは二十二歳で、婚約はしているが結婚は三年後だそうだ。

まあ、アイラも16になったばかりだし、こちらの常識ではそこまで早婚ということでは無いのかもしれないね。

カイラさんは、他の娘達に『早く良い人見つけなさい♪』と、ご機嫌だが、娘達は顔を引き攣らせている。


まあ………末っ子が一抜けじゃあねぇ。





祝いムードで始まった、ボンベイ家のおもてなし食事会。



「おお、その料理が気に入ったかね、ラッセル君。」

「はい、凄く美味しいですね。これは郷土料理なのですか?」



少しがっつき過ぎたか、ボンベイ子爵に声を掛けられた。



「うむ、私達の肌の色で分かると思うが、南方の血が流れていてね、商人として香辛料を商っていたのだよ。数千年前から似たような物は食されていたそうだが、辛すぎるのが難点だったらしくてね。王都に持ち込んだ先祖達が流行りに合わせて食べやすく美味しく改良したのが、今並んでいる物なんだよ。親戚が最近商業区画に出店したのだが、そちらも盛況なようでね。気に入ってくれて嬉しいよ。」


親戚やったんかい。

アイラは知らないっぽかったけど。



「そちらのお店はアイラさんと時々御邪魔させて貰っています。美味しいですよね。」

「ほお、あの子が。」



顎を触りながら、アイラを眺めるボンベイ子爵。



「正直なところ、アイラは先祖返りとも言うべき容姿で……あの髪や瞳の色だね。親戚等からは余り良くは見られていなかったのだ。幼少から余りこの手の料理が好きでは無いと思っていたから少し驚いたよ。」



カレー大好きっ子なんだけどな、アイラ。



「……そうか。親のというよりも、望郷や郷愁の念が湧くような思いをしたのだろう。そんな思いをさせていたとは……本当に、アイラにとって私は酷い父親だったのだろうな。ラッセル君、あの子を幸せにしてやってくれ。私達も、16年も掛かってしまったが、これからあの子に償いをしていくつもりだ。あの子を、アイラを救ってくれて、ありがとう。」


「死ぬまで大事にします。素敵な御嬢様を、有難う御座います。」



俺の言葉を聞くと、ボンベイ子爵は笑顔で頷きながら、執事さんと一緒に部屋を出て行った。

彼の瞳にもまた、光るモノがあったのだが、それは俺の心の奥にしまっておこう。



「ちょっと良いかな、ラッセル殿。」



いつの間にか殿付けして来ていた長兄のオム氏に声を掛けられた。



「今回の縁談、私からも感謝を。アイラの事、本当にありがとう。」

「いえいえ、こちらの方こそ平民には勿体ない妹さんを、何かすみません。」


「いや、特別な事では無いよ。ラッセル殿が少々御若いというだけさ♪」

「お恥ずかしい。」



中々に気さくな人の様だ。



「こんな祝いの場で不躾なのは分かっているのだが、今回持ってきてくれた物は本当に我が子爵家で扱っても良いのか聞いておきたくてね。上の貴族方に目を付けられないかと……少し心配で相談させて欲しかったんだ。」



そうか、直接的な貴族同士の力関係は盲点だったかも知れない。

もっと陰湿なものだと思ってたけど、意外とパワーバランスとかハッキリしてるのかもしれない。

どちらかというと、注目を集め始めてからが危ないかなとは思ってたんだけどねぇ。



「では実際に施設を作り、御披露目の試合に王家の方を御招きされてはどうでしょうか?そうして王家からの後ろ盾を得て、他の貴族様にはノウハウを格安で提供させてもらう代わりに、特許料としてユニフォームや関連商品収入の数パーセントを徴収するというのはどうでしょう?」


「君はやはり本物の天才なのだね。確かにそれならこちらも身の安全を担保しつつ、相手によって色々仕掛けられるか。」

「いえ、それは一律に、公平にされた方が良いと愚考します。」


「おや、それは何故かね?」


「まず、その様な事をされては、潜在的な敵を作る可能性があります。敵対関係があるのかは存じませんが、優遇されなかった貴族の方々はボンベイ家に良い印象は持たれないかと。敢えて敵が出来る様な事はされないのが得です。」


「なるほど、一理ある。それで。」


「そこで他国の友誼ある貴族様方にも良い話があると一枚噛ませておいて、その人脈を使い他国の貴族様の窓口をボンベイ家で掌握してしまいます。それを国内の貴族様方にも強く印象付けて、特許料徴収は世界的に一律であり特別扱いは出来ないけども、お手頃で誰でも参加しやすい設定であると理解と納得をさせ、ボンベイ家はハイネ王家以外に媚びを売ったり、利権を笠にきて欲深い事はしないと、世界中の人々に印象付けるのです。味方にして得はあれど、敵対するのは損だと印象付けられれば、愚かな行動に打って出る者も居なくなるでしょう。」


「ふむふむ。それで。」


「あ、後は貴族様や富豪等に格安で会場建設のノウハウを与えて恩を売り、商人に関連グッズを制作展開させて特許料を半永久的に受け取り、信用と世界中から集まる莫大な特許料を日々得ながら、ボンベイ家を盤石の体制に持って行きます。」


「それは凄い。それでそれで。」


「そして全ては王家に最初に見て頂けた事で、他国の貴族様とも深く友誼が結べたと、王家に恩を感じているよと思わせつつ『外交でも役立つボンベイ家』と逆に王家からの信用も得るのです。その功績だけでも爵位が上がるかもしれませんが、きっとボンベイ子爵様も功名心を得る為では無く、御家安定を願われ、それがオム様含め、子々孫々と継がれていく事を願われるのでしょうから、国内でも中立を保つのです。そうすればどれ程の御家であっても、こちらが無理を聞く事は無くなり、王家の後ろ盾もあるのですから、どの御家とも公明正大な御付き合いだけが出来る様になるでしょう。」


「……君はすごいね。本当に頭が下がるよ。」


「因みにこれは大きな声では言えませんが、上手く行けば他国の王族や大富豪からの婚姻依頼が殺到する事もあるやもしれません。もしそうなれば、ボンベイ家はやんごとなき御家に成られる訳でして……それはそれは大変なことになるかと。」


「なん、だと……。それは、既に賽は投げられたと言っているのかね、ラッセル殿。」


「全てが動き出しておりますれば、この機に動かざるは後の世にどう揶揄されるか。オム様はボンベイ家の行く末を輝かしいものにされる為、今この時より時代を動かされるのだと信じて居ります。」


「そうか、そう思うかラッセル殿!」


「歴史が変わる瞬間を、今まさに目の当りにして居りますれば。」


「では私は父上と相談し、他国との交渉を進める。国を空ける事が多くなるだろから式には出れないかもしれないが、アイラの事、宜しく御願いする。」



そう言い残して颯爽とオム君は………まぁまぁの小走りでルドラ子爵の元へと向かった?のだろう。


面白い人だ。


乗せられ易いタイプなんだろうな。


少し悪い事をしてしまっただろうか?


いやいや、早く動いて出来るだけ多くの貴族と交渉を進めておいた方が良いのは確かだ。

数年後には国内リーグが始まっているだろうから、それまでに本格的なクラブ運営を始めなきゃいけないしね。

そうなれば直ぐに世界的に人気になるだろう。

そうしてそのパイプとノウハウを使って、他のスポーツも世界で愛されるようになる。


悪いがオム君には人柱になって貰う事にした。

ボンベイ家の為にも、頑張ってもらいたい。


まぁ、数年もすればまた会えるだろう。



そうして宴会の最後まで帰って来なかった、ボンベイ家の主人と跡取りは放っておいて。

宴は堅物達が居なくなったのでとても楽しく進み、その日はお泊りまでさせて頂いた。




◇◆◇◆




翌日。


ボンベイ家で朝から楽しく美味しく過ごさせてもらい、昼食まで御馳走になって学園への帰路についた。



「何か、凄い夢を見ているみたいです、私♪」

―――正式に家族になるのです。家の事は頼みましたよアイラ。

「御任せ下さい御姉様♪家を守るのが第二夫人の役目です。御姉様とラッセル君がお仕事で居られない間も、きっちりと守ってみせます!」


「無理しないで、苦しい時や辛い時はちゃんと僕かヘラに言うんだよ。」

「ラッセル君!大好きですっ!」



馬車の中では両側から奥さんに抱き着かれて、何とも甘々な時間を過ごさせてもらった♪


今までも特に夫婦らしい事もしてないし、恋愛関係の延長線みたいな感じだったけど………本格的に家族を養える程度には稼ごうと、強く意識する一日となった。




追伸。


オム氏はこの後、歴史に名を残す偉人となるんだけど、それはまだまだ先のお話。



パパ/ルドラ・ボンベイ  黒髪  黒目

ママ/カイラ・ボンベイ  黒髪  黒目

兄1/オム・ボンベイ   黒髪  黒目

姉1/アドラ・ボンベイ  黒髪  黒目

姉2/アユーシ・ボンベイ 黒髪  黒目

姉3/アイシャ・ボンベイ 黒髪  黒目


アイラたんは末っ子です。


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