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大掃除~近代スポーツの夜明け




という事で、スポーツ施設に到着。


時間で言うと17時といったところか。

晩御飯も近いので、何のスポーツ施設か分からないが、一番近い所にお邪魔した。



「―――やあ、よく来てくれたラッセル君。ヘラ様もようこそ、バスケ部へ。」



顧問の先生の言葉とゴ―ルを見て理解した。

ここは所謂バスケットボール部らしい。

まあ、ドリブルしてる学生もいるし、そうなのだろう。

 


「で、何かご存じの事はありますかな?」


「少し試合形式のものを見せて頂きますか?」


「じゃあ五分ほどお見せしますので、何か感じたら仰ってください。」



そういって始まったバスケモドキであるが、ダブルドリブルを普通にしているのが問題なんだろう。

あと30秒ルールだったかな?

そういうのが無いからいつまでも一人がドリブルして、長時間、点も入らない。

そりゃしんどいね。

あと、ゴ―ルの位置が少し低いのかな?

3mちょっとだっけ?

他の細かいルールは俺も知らないから、その三つを守ればそこそこ面白くはなるだろう。

いまいち顧問の先生も納得していないようだが、取り合えずそれでやってみて結果を報告してくれるそうだ。

挨拶もそこそこに、次に向かう。


サクサクいこ―!


移動も面倒なのでバスケの横の施設に来た。

そこはサッカーというかフットサル部。

一目見て分かるのは、ゴ―ル裏の壁がひび割れだらけな事である。

予想はつくが、顧問に話を聞く。



「獣人やドワーフが――――――――」



じゃあ外でやりなさいよ。


それにキ―パ―地獄ですな。


ここでも一応ミニゲームを見せてもらったのだが、やはりロングシュートの雨あられである。

破壊力ある種族にすぐパスが入り、()()、シュートが量産されて来たからであろう。

それが駄目だとは言わない。

だが、サッカーが面白いのはそれだけじゃない。

仕方ないので真打登場の時間である。

俺はドワーフ用のユニフォーム借りて子供靴のままピッチに立った。

時間間隔にして凡そ10年ぶり。



―――か、可愛い、ハァハァ♪


「おっ、御姉様、わたしっ、限界ですっ!」



何故か一名お花を摘みに行ってしまったようだが、お気に召したようで良かったですよ、えぇ、ほんとに。


ボールの感触は重いってのが感想だ。

四歳児には厳しい。

とりあえず並んでパス練習してもらい、顧問に明日の練習メニューをその場で紙に書いて渡しておく。

俺も久しぶりにパス練習だけさせてもらったが、久々に良い汗を掻いた。

興が乗ったので、ちょくちょくお邪魔してしっかりと指導していこうと思う。

だって、異世界で才能の塊みたいな連中に指導って絶対面白いでしょ。

時間かけてプロリーグとか作るのも良いかもね。

という事で、夕食の為にお暇させて頂いた。

食事前に寮でシャワー浴びようとユニフォームのまま馬車に乗ったら、二人の変態(ヘラとアイラ)さんにクンカクンカの刑に処せられた。


夕食後、ヘラと部屋に戻って暫くするとアイラがやって来た。

俺はこの体なので深夜までは起きてられない。

なので起きている間だけここでお喋りをして、寝たら帰るというシステムにヘラとの協議で決まったらしい。

羽目を外し過ぎないのなら問題ないだろう。



「それで今週末に事務所の掃除をしようと思うんだけど。」

「私も行きます。でも探偵のお仕事って憧れますね~。」


「そうだね、だけどアイラの家の方は大丈夫なの?」


「基本的には自立する為に学園に来たので、以前は少し風評で迷惑かけた時もありましたが、全て私が悪いので、これから頑張っていきます。」


「そっか、でも無理しないようにね。」


「分かりました。何かあれば相談させて貰います♪」


―――そうしなさい。



その後、アイラの身の上話と仕事の話で、俺が眠くなるまで色々話し合った。






――――ハイネ王都/商業区画/胡蝶之夢




週末。



「凄い埃だなこれ、途中で手拭い買って正解だったよ。」


「ですがこれらの本は何処にしまえば良いのでしょうか?本棚が見当たりません。」

「そういえばそうだ。ヘラ、本棚は何処かにある?」


―――私も見た事がありません。この本は何処から持ってきたのでしょう。


「取り合えず棚とか置くにしても一回全部退けちゃおう。アイラは本を階段前に集めて。ヘラは二階の窓全部開けて、本以外の小物を一度応接セットの上に集めよう。」



前回訪問時に、三人で狙いを付けていたパン屋のテラスで朝食を取り、現在清掃中なんだけど……まあ酷い。

前回気付かなかったが、積み上げた本の山の間に大量の埃が。

どうやら思った以上に苦戦を強いられそうだ。

何か退ければ埃の山。

アリコット村にいた頃から考えても、ここまで環境の悪い場所は無かった。

煙草の灰と埃が物を退けるたび舞い上がる。


空き瓶、何か食べ物の包み紙、ビリビリに破れた衣類って、只のゴミ屋敷じゃねーか!!


マスク代わりに手拭い買っといて良かったよ、ホント。

非常に残念なのが、この世界にはゴミ袋が無い。

こういう時に感じる前世の便利さ。

田舎だったら燃やしていたんだろうけど、こんな街中で燃やせないし、いちいち表のゴミ回収箱に行かないと捨てる事すら儘ならん。

面倒だから洗濯用だろう桶に纏めてアイラとヘラに捨てて来てもらう。

俺が行っても良いのだけど一人で持てないし、背丈が違い過ぎて運びにくいだろうからね。

一階は倉庫で、武器や防具の他に何やら良く解らないものも沢山あった。

でもちゃんと整頓されている様だったから、一階が主な仕事部屋なのだろう。

そうして何とか主だったゴミを捨てて、大量の空き瓶を玄関前に並べ、本を纏めて、何か分からない小物を一か所に纏めただけで昼になってしまった。

既に俺とアイラは埃で真っ黒である。

ヘラは何故か綺麗なまま。

でもちゃんと手伝ってくれてたし、埃被った物も運んでた筈なんだけど、こんな時まで美しいままなんて、流石。



―――もっと褒めていいですよ♪


「毎晩褒めてるでしょう♪」


―――キャッキャ♪


「……………私にもお情けを。」



アイラさん、冗談で遊んでるだけですよ♪

取り合えず手と顔を洗い入念にうがいをして、食事を買いに行く事にする。

この汚れ方じゃ店に入るのは失礼だしね。

事務所を出て近くを散策する事、5分。

噴水のある小さな広場に出た。

ちょっとした憩いの場なのだろう。

移動販売のリヤカーには5人の列が出来ていた。

近づくと見えて来たのは、どんぶりを持って、ハフハフいいながら麺を啜ってるおじさん達。

これはっ!!

と思ったのだが残念、フォーみたいなやつだった。

久々にラーメン食いたいな。

他には屋台もないのでそれで済ます事にする。

まあ、可もなく不可もない感じではあるが非常にお安かった。

一杯銅貨1枚也。


麺を啜っていると、アイラだけ驚いた顔をしている。

ヘラは旅先かどこかで麺を啜る料理を知っているのだろう。

アイラはそれがマナーとしてダメなのでは?と思っていたらしい。



―――ラスティ様に、はしたない音を聞いてもらいなさい。


「は、はい!ズズズズズッ、ズズズズズッ――――――――」



面白い人達だ。


しかし、今後活動するにも近くに飯屋が無いってのは困ったもので。

次からはお昼持参にしようと話しながら、三人で仲良くお昼を頂きました。


事務所に戻るが、先輩二人は帰ってないようだ。

昼からは、はたき掛けと箒、塵取りである。

まあ、とんでもなかったとだけ伝えておきます。

そこそこ綺麗になって来たので、アイラに本の乾拭きを頼み、俺とヘラは雑巾がけに移る。


勿論、俺は床専門ですよ。

高い場所は届かないし、小さいからどこでも入れるし、こういう時は便利。

どんどん綺麗になって行く事務所を見て何故か嬉しくなるのは性格なのだろうか?

そうして随分と綺麗で広くなった事務所の窓に夕日が差す。

あの魔の巣窟の様だった事務所が、何という事でしょう!

ぐらいには綺麗になった。

そうして手と顔を洗い、うがいをして着替える段になって、アイラが目の前で脱ぎだした。



「ちょちょちょっ!」


―――チッ、その手がっ!


「ちゃんと見てください、ラッセル君♪」



蕩けた顔でこっちを見ながらガンガン脱いでいく。

何とも思ってない女の子だったら目を背けられるかもしれないが、アイラは凄く可愛いし、いつか一緒になる約束もしている相手。

目が離せません!!

全部脱ぎ終わっても見せつける様に体をくねらせる。



「どうでしょうか?」


「申し分ないかと。」


―――チッ!



でもなんか下着が、そこがそうなってるという事はつまりそういう事で。

目が回りそうになって鼻の頭を押さえる。


が、目が離せません!!!


怪しからん!ひっじょ~に怪しからんぞ、アイラ君!もっとやれ―!


その後は時間も時間だからと服を着させて、寮に戻った。

しかし、良きものをお見せ頂いた。

少女というか、女性の完成形に近いあのお姿は目に焼き付いて離れませんな。

浅黒い肌が何とも、ぐふふっ

それに、あんな事になるですねアレは。


シャワーを浴びて夕食の運びとなるのだが、用事があると言ってアイラが居なくなり、ヘラと二人で食事を取る。

まあ、今日はあの日だからヘラに言われて気を使ってくれたのだろう。

帰って来てからというもの、ヘラは上機嫌である。

少しお酒を嗜みながら、近隣国の建国話や、ロブ・ロイやハンター店長の幼い頃の話とかを嬉しそうに話している。

大きくなったら旅行に行きたいね、何て話をしながら楽しい時間を過ごした。

 

そして部屋に戻り、その夜は可愛いヘラをたくさん見れたと報告しておく。

何故なら、何時間もお楽しみタイムがあれば、ツボが分かって来るからである。

勿論、こちらのツボはとっくに攻略されてはいるが、突撃兵よろしく徐々に戦線を有利に進めていくつもりだ。



しかし、数年後に控えている洞窟での全面戦闘では、敗戦確実であるからして、覚悟をして頂きたい!





翌朝。


いつもの様に三人で朝食を取っていると、教師が7名やって来た。

部活顧問の先生達である。

話は簡単で、バスケに関しては点の取り合いと、各自の役割の違いが明確に出始めて、何が楽しい事なのか理解し始めたとの事。

バスケ部が早くもゲーム性の面白さに気付きはじめたのを聞いて、ウチにも助言してくれって事である。

フットサル部は既に廃止してサッカー部に作り替えるよう指示をした。

チェアマンとしては当然である。

あれはキックベースみたいになってたからな。

今はスカウトである学園事務局に、体が大きくて頑丈な種族の人を探してもらっているのだ。

大砲みたいなシュートが飛んでくるからね。

今の俺なら死ねる。

グラウンドは現状無いので、学園敷地内の空き地を利用させてもらっている。

上手く行けばサッカー専門の競技場が、ウッシッシ♪


それは置いといて。


どの部も『楽しみ方が分からない』というのは深刻である。

ボール追いかけて、飛んで跳ねて点が入っても楽しくない。

そんな事、誰もやろうとは思わないもんね。

その為に、『転生者の世界に近い形へと昇華する為の会議』を、月一開催する事で了承してもらった。

個別に各顧問とのランダムエンカウントなんて相手してられないし、他の顧問も同じように知って行けば、指導力のレベルアップになるからね。

といっても、俺も全部のスポーツの楽しさを知っている訳でもない。

大方のルールや、何をする事がより楽しむことに繋がるかぐらいは、オリンピックなんかの中継で見たり聞いたりしているが、思い出す作業もしないで、聞かれてすぐに答えられるのは正直サッカーぐらいである。

まあ、取り急ぎちょとだけ見て改善できるようなら助言はするつもりだけど。



そうして慌ただしい学園生活と、迷い犬猫専門探偵の二足の草鞋が本格的にスタートしたのである。






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