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SS ナイスミドルの肖像


お決まりネタです。

読み飛ばして貰って構いません

寧ろ飛ばしてください。





………ボロボロだ、ズタボロってのは、こういうもんかい。



体中、傷だらけで意識が朦朧とする。

闇市の中でも人が通らない路地裏で、もう動けねぇとばかりに座り込んで煙草に火を付けた。


一服。


煙を燻らしながら死んでったダチ公の顔が頭を過る。



「この仕事で俺もしめぇか……。」



口の中も切っちまってるな。

煙が沁みる。


今回は今までで一番ヤバい橋の様だ。

思えば闇市で小さなガキと極上の女の二人組に依頼を受けたのが始まりだった。





人探しなんざ簡単なもんさ。

顔見知り辿って行きゃあ、勝手にぶつかる。

情報を手に入れる為、闇市の中でも悪が集まる酒場に来た。



全く厄介な仕事だぁ。

テンで情報が集まらねぇ。


それでも昔馴染みに声を掛ければ何とでもなるってその頃は思ってたさ。


酒場を出て急いで移動する。

こんなに情報がねぇんだ、嫌な予感がするな。

おっと~。

案の定俺を狙ってたのか、酒場から出てきた男が空き瓶を思いっきり投げつけてきやがった。

もう一本手にしてやがるが、この道のプロだぜ俺は。

華麗に二投目を避けてトンずらさせてもらう。

 

良いか、覚えておけ。

男はこちらを狙って来てる相手とは向かい合って喧嘩しねぇ。

何故か。

それは、こちらを狙らって来てる相手が油断した所に牙を突き立てる為さ。


撒いたようだ。

根性ねぇ奴が最近は増えた。

業界もぬるくなったもんだぜぇ。

顔は覚えた。

きっちり落とし前はつけてやるさ。


そうやって古馴染みから新しい店まで色々廻ってみたが、さっぱり情報は集まらねえ。


そのうち店を出たら狙われるのが日常になって来た。


どこ行っても追い回されて、もう真面に表通りは歩けやしねぇ。

すっかり日陰者の仲間入りって話だぁ。


今思うと、あのガキと女が黒幕なんじゃねぇかと思えてくるぜ。

俺は嵌められたのかもしれねぇ。


そんなある日、いつも裏道でやってる情報屋の爺さんから、ようやくネタを仕入れた。

走ってその場所へ行くと、そこは見覚えのある酒場だ。

今度こそ命はねぇと思ったが、あの爺さんの持ってきたネタだ。


笑っちまうぜ、膝が震えてやがる。

この世界で生きて行くにはビビッてちゃぁ何にも出来ねぇ。

そんなひよっこはとっくにおっちんじまってらぁ。

舐められねぇ様に、膝を叩いて体中に気合を入れる。


もう大丈夫だ。


俺に怖えぇモンなんてねぇさ。


一人前だってダチ公に言われた日から何年経ったか。

その頃の気合を、生命力を全力で体に纏い、酒場の扉を勢いよく開けた。


中には30人ぐらいの男や女がこっち睨みつけてやがる。


そうかい。

結局、情報屋もそっち側だったってこった。

あぁそれだけの事だ。

何だか訳の分からねぇ事をピーチクパーチクうるせえやつらだ。

 


「とっとと掛かってきやがれ!!」



俺は叫ぶと同時に、群れのボスみたいな男をめ一杯、殴りつけてやった。


その後の事はハッキリ覚えちゃいねぇ。

罵られ侮辱され叱責されながらの大乱闘だ。

何言ってんのかさっぱりだが、皆、血走った目で殴り掛かってきやがった。

多勢に無勢とはこのこったな。

誰かに地べたに倒されてからは蹴り倒されてその上に乗っかられて殴るわ殴るわ。

何も音が聞こえなくなった俺に全員が何か叫んでるようだ。


不思議な事にその後、店の外に放り出された。


少しして納得したぜ。

次は殺すってことだなぁってよ。


そのあと必死に逃げた。足引き摺って顔中腫らしてすれ違う奴らに笑われもした。

そうして今に至る。



「もうこの街にはいれねぇな。」



もう一本煙草に火を付けて、煙を燻らすと、みっともないやら情けないやら涙が出た。

俺なりに、この街に愛着があったのかもなぁ。


年取るもんじゃねぇな。


路地裏に聞こえる喧騒を背に、その日、俺は街を後にした。










―――――トンネル都市、酒場ペパーミント




商店街の飲食店経営者が集まる。



「大丈夫ですかマスター?」

「あぁ、まったくなんて奴だ!」


「騎士団に通報する前に、話を聞いてやろうって言ってくれたマスターに、いきなり殴りかかるなんてとんでもない奴だぜありゃ」


「皆さん、今回こうして善意で行ったことが、マスターを傷つける結果になってしまいました。最初から騎士団に突き出しておけば、こんな事にもならなかったかもしれませんが、今度からこういう事が起きた場合は、すぐに突き出しましょう。」


「そうだっ!あんなことされちゃこっちも黙ってられねぇ。」


「なんなんだ、あんにゃろうは!」


「皆さんにはご心配かけました。今回は私が軽率だったかもしれません。」

「いや!マスターは悪くない。」


「「「そうだそうだ!」」」


「では次回からああいう輩はすぐに騎士団に通報する様にしましょう。」




こうして酒場ペパーミントから商店街メンバーは騎士隊詰所に向かい、その二時間後、連続食い逃げ犯はあえなく御用となった。




事情聴取に立ち会た騎士団員は後にこう話す。



「もう組織には手をださねぇ、とか、裏切られたんだ、とか、ガキと女に嵌められた、とか意味わからない事ずっと言うんですよね、食い逃げ犯なのに。頭おかしいんすかね?あいつ」






古いネタをすみません。

これでナイスミドルはもう出てくる事は無いと思います。

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