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鍛錬3
『視覚』を獲得した私は、それを鍛錬する。
一度出来てしまえばそれを繰り返し、より精度を上げていくのみだ。
想像での視覚には特徴がある。
像を見るのは容易だが風景を見るのは困難だ。
人は無意識に見たいものに焦点を合わせるが、想像での視覚はその差が顕著なのだ。
像を『見た』あとに意識的に背景を『見る』。
それを繰り返し、鍛錬し、スピードを上げ、同時に像と背景まで見えるようにする。
その次は像を動かす。
『記憶』と照らし合わせながら不自然な『見え方』をしている箇所を修正する。
光を当て影をつける。
光量によって色の濃度を変える。
遠近により見える大きさを変える。
重さを取り入れる。
加速度や重心を加え早い動き、遅い動きの違いを表現する。
もちろん最初はうまくいかない。
あちらを意識するとこちらが疎かになる。
動きを付け出すと途端に色が抜け落ちそうになる。
少し動かすごとに光量、色濃度、遠近、重心など全ての項目をチェックし、修正を加え、繰り返す。
睡眠は必要ない。
疲労もない。
ただひたすらに繰り返す。