転生
pixivにも投稿している作品ですが、こちらをメインとしてやっていこうと思っています。
これが1作品目なので拙い文章になっていると思いますがどうかよろしくお願いします。
ある日、俺のいつもの日常が一瞬にして幕を閉じた。
いつものように学校でどうでもいい授業を長々と聞いて、いつものように部活をして、いつものように長い帰路をたらたらと帰る。
しかし今日はいつものようにはいかず、黄昏時に俺は地面に寝転んでいた、否、立てなかったのだ。
その理由はこの光景を見ればすぐに分かる。
倒れてる俺の周りに赤い液体がじわじわと広がっていく。
そう、俺はこの日通り魔にあったのだ。
最近ここらで通り魔が出たという事件はニュースで聞いていたがまさか自分に関係があるなんてみじんも思わなかった。
周りには人の気配がしない。
俺はこのままいれば必ず死ぬ。
でもそれでもいいかな、なんて思う自分もいた。
退屈な毎日に意味なんてどこにもない。
ならいっそ死んでも何も変わらないんじゃないか。
来世はもっと面白くて退屈しない世界で生きたいな、なんてことを考えているうちにもうタイムリミットは直前まで迫っていた。
せめて父さんに別れの挨拶ぐらいしたかったな。
そう思いながら俺は目を閉じる。
さよなら、みんな。今までありがとう。
そんな思ってもないことを口にして俺は静かに息を引き取った…..
はずだった。
どこからか眩い光が目に届いてくる。
そろそろお迎えが来たのだろう。
そう思って俺は静かに目を開ける。
しかしそこには天使や神様などはおらず、代わりに見慣れない天井が俺を見つめていた。
どうやら先ほどの光は太陽光が窓から差し込んでいたもののようだ。
そんなことはどうでもいい。
ここはどこだ。
全く見覚えがない。
どうやら民家か旅館のようだがそんな場所に来た覚えもない。
俺は確かに先ほど死んだはずなのだ。
なのになぜ生きているのか。
刺されたはずの脇腹も何一つ傷付いていない。
身体もとても元気のご様子だ。
よくわからないことはさておけないのだが、とりあえず部屋から出て受付のお姉さんにここはどこなのかを聞いてみる。
…..面倒な事に巻き込まれたようだ。
先ほどのお姉さん情報によるとここは「レミルの町」という名前でトーライアス王国という国の郊外にある町らしい。
そ、そんな名前の国知らないっ!
宿屋「ラリス」のロビーでウロウロしているとある女性が部屋から出てきた。
そしてなぜかこっちに向かって一直線に歩いてくる。
なんだか恐怖を感じたので後ろを向いて逃げようかと思った矢先、その女性から声をかけられた。
「やっと目覚めたみたいだね」
まるで俺をずっと見てきたかのような言葉に少し戸惑う。
しかし話しかけられたのなら返すしかない。
話しかけられたなら返事をする、それぐらいのマナーなんぞ俺だって知ってる。
「おま…..あなたはなぜ俺のことを知ってるんだ?」
「やっぱり覚えてないか。まあいいや、昨日のことだけど、私ね、森に入って投剣の練習をしていたんだ。そしたら君が草むらで倒れていてしかも重症。これは大変だということで応急処置として簡易治癒魔法をかけてからこの宿屋に運んできたんだよ」
俺が草むらで倒れていた…..?
俺が倒れたのは草なんかないコンクリートの上のはずだ。
その前にこの娘、治癒魔法とか言わなかったか?
魔法、まほう、マホウ….......嘘だろ。
「なるほど、状況はある程度は理解できた。運んでくれた事については感謝する。ありがとう。それでいくつか質問があるんだけどいいかな?」
目の前の彼女は二つ返事で了承してくれた。
「まず一つ目だ。なぜ俺を助けたんだ?いや、別に助けて欲しくなかったとかそういうものではなく、助けてくれたことは本当に感謝してるが、見ず知らずの人を助けて宿屋にまで連れて行くという行為にはなかなか普通の人は至らないと思うのだが」
「んー、なんというか、そういうのをみるとほっとけないタイプなのかもね。怪我をしていたら治療するってのが普通なんじゃない?」
そうか、この人は根っこからのいい人なのかもしれない。そうでなければ俺の財布や何か金になりそうなものを盗むだけのはずだ。俺もなかなか運がいいのかもしれない…..いや、その考えは少し不謹慎なのかもしれないな。
「なるほど、君に助けられてよかったよ。ありがとう」
「いえいえ、それほどでも。それで、他には何かある?」
「あぁ、さっき会話で出てきた"魔法"という言葉だ。この世界には本当に魔法、及び魔術が存在するのか?」
「…..魔法を知らないってどういうこと?」
やはり怪しまれるか。しかしここはこの世界で生きていくために必ず聞いておかなければならない事項だ。
もうこの世界で生きていくことに決めたのかって?
切り替えが早いのが俺の長所なんでね。
「説明すれば長くなる。とりあえず魔法について教えて欲しいんだ」
「よくわかんないけど、まあいいや。魔法っていうのはねある日、俺のいつもの日常が一瞬にして幕を閉じた。
いつものように学校でどうでもいい授業を長々と聞いて、いつものように部活(バドミントン部である)をして、いつものように長い帰路をたらたらと帰る。
しかし今日はいつものようにはいかず、黄昏時に俺は地面に寝転んでいた、否、立てなかったのだ。その理由はこの光景を見ればすぐに分かる。倒れてる俺の周りに赤い液体がじわじわと広がっていく。そう、俺はこの日通り魔にあったのだ。最近ここらで通り魔が出たという事件はニュースで聞いていたがまさか自分に関係があるなんてみじんも思わなかった。
周りには人の気配がしない。俺はこのままいれば必ず死ぬ。でもそれでもいいかな、なんて思う自分もいた。退屈な毎日に意味なんてどこにもない。ならいっそ死んでも何も変わらないんじゃないか。来世はもっと面白くて退屈しない世界で生きたいな、なんてことを考えているうちにもうタイムリミットは直前まで迫っていた。せめて父さんに別れの挨拶ぐらいしたかったな。そう思いながら俺は目を閉じる。さよなら、今までありがとう。思ってもないことを口にして俺は息を引き取った…..
はずだった。
どこからか眩い光が目に届いてくる。そろそろお迎えが来たのだろう。そう思って俺は静かに目を開ける。しかしそこには天使や神様などはおらず、代わりに見慣れない天井が俺を見つめていた。どうやら先ほどの光は太陽光が窓から差し込んでいたもののようだ。そんなことはどうでもいい。ここはどこだ。全く見覚えがない。どうやら民家か旅館のようだがそんな場所に来た覚えもない。俺は確かに先ほど死んだはずなのだ。なのになぜ生きているのか。刺されたはずの脇腹も何一つ傷付いていない。身体もとても元気のご様子だ。よくわからないことはさておき、部屋から出て受付のお姉さんにここはどこなのかを聞いてみる。
…..面倒な事に巻き込まれたようだ。先ほどのお姉さん情報によるとここは「レミルの町」という名前でトーライアス王国という国の郊外にある町らしい。
そ、そんな名前の国知らないっ!
宿屋「ラリス」のロビーでウロウロしているとある女性が部屋から出てきた。そしてなぜかこっちに向かって一直線に歩いてくる。後ろを向いて逃げようかと思った矢先、その彼女から声をかけられた。
「やっと目覚めたみたいだね」
まるで俺をずっと見てきたかのような言葉に少し戸惑う。しかしせっかく話しかけてくれたのだ。話しかけられたなら返事をする、それぐらいのマナーなんぞ俺だって知ってる。
「おま…..あなたはなぜ俺のことを知ってるんだ?」
「やっぱり覚えてないか。まあいいや、昨日のことだけど、森に入って投剣の練習をしていたんだ。そしたら君が草むらで倒れていてしかも重症。これは大変だということで応急処置として簡易治癒魔法をかけてからこの宿屋に運んできたんだよ」
俺が草むらで倒れていた…..?
俺が倒れたのは草なんかないコンクリートの上のはずだ。
その前にこの娘、治癒魔法とか言わなかったか?
魔法、まほう、マホウ….......嘘だろ。
「なるほど、状況はある程度は理解できた。運んでくれた事については感謝する。ありがとう。それでいくつか質問があるんだけどいいかな?」
目の前の彼女は二つ返事で了承してくれた。
「まず一つ目だ。なぜ俺を助けたんだ?いや、別に助けて欲しくなかったとかそういうものではなく、助けてくれたことは本当に感謝してるが、見ず知らずの人を助けて宿屋にまで連れて行くという行為にはなかなか普通の人は至らないと思うのだが」
「んー、なんというか、そういうのをみるとほっとけないタイプなのかもね。怪我をしていたら治療するってのが普通なんじゃない?」
そうか、この人は根っこからのいい人なのかもしれない。そうでなければ俺の財布や何か金になりそうなものを盗むだけのはずだ。俺もなかなか運がいいのかもしれない…..いや、その考えは少し不謹慎なのかもしれないな。
「なるほど、君に助けられてよかったよ。ありがとう」
「いえいえ、それほどでも。それで、他には何かある?」
「あぁ、さっき会話で出てきた"魔法"という言葉だ。この世界には本当に魔法、及び魔術が存在するのか?」
「…..魔法を知らないってどういうこと?」
やはり怪しまれるか。しかしここはこの世界で生きていくために必ず聞いておかなければならない事項だ。
もうこの世界で生きていくことに決めたのかって?
切り替えが早いのが俺の長所なんでね。
「説明すれば長くなる。とりあえず魔法について教えて欲しいんだ」
「よくわかんないけど、まあいいや。魔法っていうのはね───」
この世界には魔法という概念が何千年も前から存在しているという。この異世界において、魔法というのは大きく分けて6つの種類がある。それは、火、水、風、土、光、闇の6つだ。目の前にいる彼女は三つ持ち合わせているらしく、これでも珍しい方なんだよと言っていた。大体は1つか2つしか相性を持っていないらしく、3つからは"[[rb: Umcommon Magician> 多属性保持者]]"(以下"UK")と呼ばれるというのだ。ちなみに6つの属性を持った人は何千年も前に1人だけいたらしいがある時突然いなくなったらしく、今では暗殺された説が最も有力である。その者の名誉のためにつけられた6つの属性使いのことを"[[rb:Absolute Magician> 全属性保持者]]"(以下AM)と呼ぶ。しかし、彼がこの世を去った後AMは1人たりとも出てきていない。
「ーーーと、まあこんな感じかな」
「なるほどな。ところでその魔法の相性とやらはどうやったらわかるんだ?」
「ギルドに行ったら無料でみてもらえるはずだよ。私も今からギルドへ向かうけど、どうする、一緒に行く?」
「そうさせてもらうよ、えーっと…..」
「そういえば名前言ってなかったね。私の名前はミリア=ハーヴェスト。あなたの名前は?」
「俺は今村亮太。よろしくな」
「よろしくね、リョータ」
軽い握手を交わして俺たちはギルドへと向かった。
××××××××××××××××
「ここが…..ギルドか」
もう少し大きいイメージを持っていたが、想像以上に小さな建物だった。大きさでいえば、ガ◯トとかサイゼ◯アとかそこらへんと思ってもらえばいいと思う。ここまで来る途中にギルドについて教えてもらった。ギルドというのは、この世界の冒険者の管理をしている、いわば冒険者の拠点といったところだ。冒険者という職業は、魔獣の討伐や薬草の採取など人々から寄せられた依頼をこなしてその報酬を得るといった命のギャンブルである。この世界には他にもお金を稼ぐ方法がたくさんあるため冒険者の人数はそこまで多くはない。この職業はいつ死ぬかわからないといったデメリットもあるが、一気にどっとお金が手に入るというメリットもある。運がいいときは他の職業の1ヶ月分の給料を1日で稼いでしまう日もあるという。そんな話を聞いているうちに自然と俺の心は冒険者へ惹かれていった。
「大きいかどうかでいえばそこまで大きい建物ではないんだけど、中にはたくさん人がいるから出会いがあって楽しいと思うよ」
「一期一会ってやつか」
「その意味はよくわからないけどとりあえず入ろ」
そう促された俺は少し緊張を孕んだ手でその扉を開けた。
すると目の前には剣や盾を装備した男の人や女の人も老若男女様々な人がいた。その光景は普段何気もなく過ごしていた俺にはキラキラと輝いていた。なぜ初めからこの世界に生まれなかったのだろうと思ったほどだ。緊張と興奮の両方が混合した眼で周りを見渡しているとある掲示板が目に入った。
「なあミリア、あの掲示板って何が書いてあるんだ?」
「ああ、あれはパーティーメンバー募集の張り紙が貼られてるんだよ。1人では限界があることが多いからね。例えば、魔獣の討伐とかかな。私も今募集中なんだ」
…..魔獣か。向こうの世界ではアニメでしか聞いたことのないワードだよな。たしか魔力を持ったかなり強い獣だったはずだが。この世界でも同じなのだろうか。それよりパーティーというのは気になるな。仲間と一緒に冒険か…..より興味が湧いてきたな。
「なるほどな。まあ冒険者にならないと何もできないからとりあえず行くか。ここまで案内してくれてありがとうな。この礼はいつかするよ」
「じゃあお言葉に甘えて。またどこかで会おうね」
ここまで案内してくれたミリアに別れを告げ、俺はギルドの受付へ向かった。
受付らしき場所(文字が読めないので雰囲気で察した)には20代前半と思われるお姉さんが2人横に並んで座っていて、背筋を伸ばしながらこのギルドの雰囲気を楽しんでいるというように微笑んでいた。とりあえず話しかけてみるか。
「あのー、ここ冒険者の登録ってできますか?」
「もちろんですよ。それもギルドの仕事の一環ですからね」
「じゃあ、登録をお願いします」
「冒険者の登録ですね。少々お待ちください」
すると1人が立ち上がって奥へと入っていった。書類か何か取りに行ったのだろうか。色々考えていると、残ったもう1人が声をかけてくれた。
「お名前はなんというのですか?」
その声は少しか細いとても女の子っぽい声をしていた。
「亮太です。今村亮太」
「初めまして。私はラミーと申します。以後お見知り置きを。それでリョータさんはなぜ冒険者になろうと思ったのですか?」
…..異世界からきた、と言っても信じてはもらえないだろう。街の噂になっても困るしな。適当にごまかすしかないか。
「前から冒険者になろうと思っていて、拠点をどこにするか決めるために旅をしていたんだ。そしてたまたま通りかかったこの町の風景、この町の人の温もりに魅了されてここで冒険者になろうと思ったんだ」
「なるほど、そういうことでしたか。確かにこの町はあまり有名ではありませんが、この町を訪れた人は皆口を揃えて"また来たい"と言ってくれますね」
意外と俺は嘘をつくのはうまいのかもしれない。まあ嘘も方便っつう言葉もあるぐらいだし、少し罪悪感は覚えるが仕方のないことだよな。そんなことを思っていると奥から先ほどの受付嬢が歩いてきた。しかし手には何も持っていない。まさか冒険者にはなれません通告とか…..な、ないよな…..?
「お待たせしました。ではその横の扉から奥へとお入りください」
「わかりました。ではまた話しましょうね、ラミーさん」
ラミーさんが微笑んだのを見て俺は扉を開けた。
部屋の中にはそこには風呂桶サイズの半円の透明なガラスが真ん中にポツンと1つだけあるだけだった。何をされるのかと少し身構えているとその様子に気づいたのか受付嬢さんが今からすることの説明をしてくれた。
「今から行うのは魔力量と魔法属性の測定です。冒険者になるには3000以上の魔力量が必要です」
「え、ちょ、ちょっと待った。もしかして魔力量がないと冒険者になれないとかないよな…...」
「ええ、もちろんなれませんが」
…..オワリマシタ。
魔力といったアニメでしか聞いたことのない言葉に戸惑い、さらにはそれがないと冒険者になれないときやがった。動揺と絶望を隠せない俺は職員におどおどと聞いてみた。
「い、一般人はその…..魔力とかもっているものなのですか?」
「そうですね。普通の人は3000ぐらいは持ってると思います。今まで聴いた中で一番高い魔力量は50000ぐらいですね」
…..率直な感想を述べよう。基準が全くわからん。3000とか50000とか言われてもねぇ。そして俺にはおそらく魔力なんてものはない。さて、これからどうするものか。絶望に打ちひしがれていると職員さんが意外なことを口にした。
「でも大丈夫だと思いますよ。貴方から魔力が微量に放出されているのが確認できます」
「お、俺に…..魔力が…..?」
「ええ。実は私はエルフ族なのです。ほら、耳が少し尖っているでしょう?」
確かに彼女の耳は少し尖っている。まさかエルフが本当にいるとは。アニメでしか聞いたことないんだがな…..まあ魔法なんぞあるこの世界ではもはやなんでもありか。
「エルフ族は生物が放出する魔力を感じ取ることができるのですよ。たとえそれが微量であったとしても感知することができます」
「それで俺に魔力があることがわかったのか」
「はい。では今から魔力量を測らせてもらいます。目の前にございます、この半球の石に触れてください。この石は魔石と呼ばれ、触れた人物の魔法属性がわかるようになっています。例えば、火なら赤、水なら青に光ります」
「魔石か…..もう驚くのも疲れてきたな。まあいいか。とりあえず触ればいいんだな」
そういって少し緊張を孕んだ手で魔石に触れた。するとたちまち魔石は光り輝いた。
…..しかしその色は赤でも青でもなく、ただ真っ白な光がこの部屋をつつみ込んだ。
この状況に俺は混乱もせず、戸惑いもせず、ただただその白い光を見つめていた。横には何がどうなっているのかという表情のギルド職員が俺と同じように無言でその光を見つめていた。
「「………………………………………………」」
俺たちは無言でその光をずっと見つめていた。
この静寂を破ったのは横にいる彼女だった。
「なに…..これ…..」
彼女が発した言葉は俺の気持ちを代弁したものだった。なんなんだ、この色は。
「い、今すぐマスターを呼び出しますので少々お待ちくださいっ!!」
慌てた表情の彼女は小走りでこの部屋から出ていった。そして数分後、身長190cmぐらいあると思われる男性がこの部屋に入ってきた。おそらくこの人物が先ほど言っていたマスターなのだろう。
「魔力測定に来たということははじめましてかな。私の名前はモーラス。それで君が白い光を輝かせたのだね」
「はい」
「..…おそらく6つ全属性の持ち主だろうな。10000年に1人の逸材だと言っても過言ではないと思われる。それで、マリア、魔力量は測ったのか?」
サラッと1万年に1人の逸材と言ったな。それにこの人の名前、マリアっていうのか。そう言えば聞いてなかったよな。まあ今はそんなことはどうでもいい。俺の身になにが起こってるんだよ。
「あ、忘れていました。これに気をとられすぎて。じゃ、じゃあ今から測定しますね」
「あ、はい、お願いします」
するとマリアさんは胸ポケットから折りたたまれたB5サイズの白い紙を出した。
「この紙はある魔法を組み込ませた紙になっています。これを思いっきり握ってもらうと魔力量が紙に浮かびあがるという構造になっていますので。お願いします」
「思いっきり握る…....ふんッ!」
「はい、終了です。では紙をこちらに」
「あ、はい」
その紙は不思議なことに思いっきり握ってくしゃくしゃになったはずが手を開くとどんどんシワが消えていって最後にはさら紙になっていた。
「では結果を….......えぇぇっ!?」
「ん、ミリア、どうした?」
「こ、これ……………」
「なっ…….…...!!」
「嘘だろ…..魔力量228000だと…..」
ん?今なんて言った?22万8000?
さっきマリアさん、現存5万が一番高いって言ってたよな…..?
俺の頭の中は混乱に混乱を重ねた。
なぜ俺は魔力を持っているのか。
なぜ俺は属性がこんなにも多いのか。
なぜ俺は魔力量がバカみたいにあるのか。
考えても仕方のないことだとはわかっている。しかし、この状況で考えない人がいるだろうか。地球では俺は普通の生活を送っていたはずなのだ。
普通に起きて、
普通に食べて、
普通に学校に行って、
普通に授業を受けて、
普通に部活をして、
普通に風呂に入って、
普通に歯を磨いて、
普通に寝る生活を送っていたはずなのだ。
この世界とは全く関係のないことをしていたはずなのだ。
しかし、俺は通り魔によって殺され、気づいたらこんな世界に来ていた。
これから俺はどうなっていくのか。客観的に見ていれば面白いのかもしれない。しかし主観的にみると不安の一文字しか浮かばない。でも一度決めた"この世界で生きていく"こと、決めたことを実行しないのはあまり好きじゃない。俺は一度死んだ身なのだ。死以上に恐れることはなにもない。もう一度俺は決意する。
この世界で生き抜いてみせる、と。
「こ、これで魔法の測定はおしまいです。2日後にギルドカードを渡しますのでここへまたお越しください」
「了解です。ありがとうございました」
そういうと来た時よりも清々しい顔で俺はギルドを出た。
それから2日後、言われた通りにギルドカードをもらった。お金が一切合切なかったので八百屋で住み込みのアルバイトをさせてもらっている。もちろん宿泊費=賃金だ。その後、魔法を教えてくれる人を探すため もう一度ギルドに顔を出した。ラミーさんに聞いてみると、前ミリアが言っていたあの掲示板で自分を入れてくれるパーティーを見つけて、その人に教えてもらうのが一番と言ってくれた。なので適当に掲示板の張り紙を一枚とってラミーさんに渡した。断られたらまた違うパーティーに入れてくださいと言えばいいだけの話だ。ラミーさんはこう言ってくれた。15時にここにまた来てください、この方と面会を行います、と。
そうして15時現在、俺はこの張り紙の持ち主と面会している。しかし…..
「ミリア!?」
「なんでリョータが…..!?」
「あらあら、お知り合いだったのですね。では自己紹介と嫌でなければ自分の魔法属性、魔力量をお互いに情報交換してください」
「じゃ、じゃあ私からいくね。ミリア=ハーヴェスト、17歳です。えーと、食べることが好きです…..って私食いしん坊みたいになってるじゃん!…..コホン、私の魔法属性は火と水と光。魔力量は39000です」
「えーっと、今村亮太、17歳だ。八百屋でアルバイトしている…..はいいか。んで、魔法属性は火、水、土、風、光、闇。魔力量は22万8000」
「…..あんた、私をバカにしてる?」
「じゃあこのギルドカードを見てみろよ。ほら、書いてあるだろ?」
「信じられない…..」
「どうだ、仲間にしてくれないか?」
「…...まあ面白いかもしれないね。いいよ、加入を許可します…..っ言っても私しかいないんだけどね」
「ありがとう。精一杯頑張るよ…….って言いたいところなんだけど、家はないし、魔法も使い方がわからないんだ」
「はぁ…..なんだかそんなことだろうとは思ったよ。こんな人が魔法を使っていたら町の噂にならないのがおかしいのにそんな噂聞いたことなかったもん。まあいいよ、家は私の家に来て。一人暮らしだから大丈夫だよ。魔法も教えるから」
「本当か!ありがとうございます」
「その代わり、その魔力があるんだったら有事には私を助けてよ」
「ああ、それまでに魔法も使えるようにしておくよ」
「なら今から私の家に案内するわ。ラミーさん、ありがとうございました」
「いい相手が見つかってよかったですね。では私はこれで」
「じゃあ、行きましょ」
はい。ということで仲間ができました。とても嬉しいです。はい。そして今から女の子の家に行きます。というかこれから一緒に住みます。
….....ここは天国の楽園か何かなのか?
「ここだよ」
そこは…..まさかの豪邸だった。
「お前…..金持ちなんだな」
「まあそうかもね。ほら、そんなところで突っ立ってないで早く入りましょ」
そうして俺とミリアの冒険の幕が開いた。
これからぼちぼちやっていくのでよろしくお願いします。