第八話 おくりもの
第八話 おくりもの
2236年 ロンドン
夜になり、辺りは月の光に照らされている。
カールは海岸に向かって歩いていた。
「ふ。ふ〜ん。」
うれしそうに鼻歌を歌っている。
海岸に着いたとき、カールは先客を発見する。
相手は足音に気がついてこちらを向いた。
「おっ。テリーか。」
カールはテリーであることに気がついた。
「大尉、こんな夜遅くにどうしたんですか」
テリーは不思議そうにカールを見上げる。
「まぁ、勉強終わりに海でも見て寝ようかなって思ったんだよ。」
カールはテリーの隣に座り彼に言った。
「きおくを見ていたのですか。」
テリーは勉強の意味を理解したようだ。
「そうだよ。奴らにはおくりものをしたんだ。俺たちはその上を行かないとね。」
そしてカールはテリーを見て
「あとはぁ、面白そうだから。」
笑顔で言った。
あの内容は笑顔で見られる内容とそうではないものがある。
しかし、それ以上にそこへの好奇心がある。
「そうですね。」
テリーはそう答えて目の前の海を見る。
しかし、テリーはすぐに何かを思い出したかのようにカールを見て言った。
「大尉、ご報告いたします。」
「ん?」
カールはテリーを見る。
テリーは言った。
「明日、こちらに拠点を築くための人材が船にて運ばれてきます。」
「そうか、わかった。俺は帰る。眠い」
カールはテリーに告げてその場を離れようとする。
「大尉、あと一つお話が。」
テリーjはカールを引き止めて言う。
「なんだぁ。早く済ませろよ。」
そういってテリーの隣に座りなおす。
「私は大尉に彼ら親子をおくりものとして送るよう進言しました。」
「それがどうしたんだ?」
カールは不思議そうにテリーを見る。
「しかし、未だに彼らに付いた者から連絡がありません。」
テリーは心配そうに言った。
「ああ、それか。多分殺されただろうな。他に連絡が途絶えている奴は多い。」
カールはさらっと言う。
すかさずテリーはカールに言う。
「それでいいんですか。力を付けることになりますよ。」
それを聞いたカールは笑い出した。
そしてカールは言った。
「それでいいんだ。あのおくりものは餌だ。奴らがのこのこここに来れば心配事が消える。」
「逆らう者への餌ってことですか。」
テリーはカールに言う。
カールはテリーの言葉に頷きつつ口を開く。
「まぁそうだ。釣れるかどうかはわからないけど。無理におびき寄せる必要は無いよ。奴らの目的は施設の奪還だろう。」
そして海を見て続けた。
「ここを守っておけばいい。あえて向こうに出向く必要も無い。」
カールはテリーのほうを向いて告げる。
「念のため、警備はしっかりするように。明日からこの島に船が出入りするんだ。船のほうもしっかりしないとな。」
「はい、分かりました。」
テリーは返事をする。
「それとだ。この島に居る兵士はまだまだ少ない。明日の追加分で足りないと思ったら追加は必須だ。」
「はい。しかし、かなりの人数を載せているのですが…」
カールの言葉によってテリーの言葉はそこで遮られる。
「だからぁ、見てみないとだめでしょ。途中で脱落者が出ているかもしれないし。」
テリーはカールの言いたいことが理解できた。
あの海を越えてくるのだ。注意したほうがいい。
カールは思った。
「わかりました。明日船が到着した後、人数を確認して報告します。」
「よろしくたのむ」
カールはテリーに答えるとその場を去ろうとする。
その背中にテリーは言う。
「はい。しかし、奴らはこの国に牙を向くのでしょうか」
「わからないよ。剥かないに越したことはない」
カールは振り返ってテリーに言った。
そして、遠く彼らが居るであろう方角を見て言った。
「目的は奴らの殲滅じゃないんだから。」
「きおくをわが国におくりものとして送る。」
テリーも海の向こうを眺めて言った。
「それが目的だ」
カールはそう言って帰る道を歩き出していた。
「今はその時じゃないんだ。」
カールは空を見上げて言った。
テリーでは無く自分に言った言葉
テリーはカールを見ている気配はしたがかまわず歩き続けた。
しばらく歩いたとき、ふと今は見えなくなった海の方角を見てカールは言った。
「奴らは別の者にやらせればいいか」
そう言うとカールは来た道を戻っていった。
我々はそれほど暇ではないんだ。