第六話 集団
第六話 集団
2236年
陸へと着いたセイジとマヤはルイスの後ろを歩いていた。
海の向こうには施設がある島が見える。
この一帯は静かな場所のようだ。
いや、それは夜だからなのだろう。明かりひとつ無い。しかし、これまでの旅で二人はこういう状況を何度も見てきた。
「どこにあんたらの仲間はいるんだい?」
セイジは前を歩くルイスに言った。
ルイスは振り向き、
「もうみんな寝ている。ひとまずみんなが居るところへ行こう。今日はそこで寝るといい。」
と二人を見て言った。その直後転んだ。
拳ほどの石に足をとられてルイスは転ぶ。
「だ、大丈夫ですか。」
昼間のあの強さと格好よさはどこへ行ったのか。マヤはそう思いながら言った。
「いててて。格好悪いなぁ。はは」
転んだときに汚れた部分を手で叩いて綺麗にしながらルイスは言った。
「さっさと行こう。眠くなってきたよ。」
セイジはその光景には何も言わずに言った。
「もう少しだよ。」
ルイスはそう言いながら再び歩き出した。
しばし歩いたところにその建物はあった。
建物の色は暗くて正確にはわからなかった。
マヤはそう思いつつも、その点に気にすることもないとそのあと思った。
ルイスが扉を開く。
中は真っ暗だった。
ルイスは手探りで何かを探していた。
「何を捜しているんですか。」
マヤは聞いてみる。
「梯子を…あった。これをそこに立てかけて」
ルイスに言われたとおりにセイジは梯子を立てかける。
「上ったところに二人は寝てよ。そこは誰も使ってないから。」
ルイスは言った。
二人は梯子を上って言われたところに座る。
しかし、上に手を伸ばすとすぐに天井がある。ここは二階ではなく一階の中の二階らしかった。
「あ、それとこの梯子はそっちに上げておいてね。」
ルイスはそう言って梯子を上げてくる。
セイジとマヤはそれを受け取り。空いた場所に梯子を置いた。
「念のためね。それじゃあお休み。落ちないようにね。」
そう言うとルイスは扉を閉める。
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
二人はルイスに返事をするとその場に横になる。
マヤは目を閉じると、疲れていたのかすぐに眠りについてしまった。
マヤは下の騒がしさに目が覚めた。
「んん〜。」
目を軽く擦って頭を起こそうとする。
「お、起きたみたいだぜ。」
下に居た男が言った。
ルイスの知り合いだろうか。
ひとまずマヤはセイジの体を揺すり起こす。
「ん。ああ、おはよう。」
セイジは意外とすんなり起きてきた。
昨日船の中で休んでいたためだろうか。
いや、それとも私が疲れていただけか。
そうマヤは考えていた。
「二人とも起きたみたいだな。ルイスから話は聞いている。そこで話をするのもなんだから降りて来いよ。」
ルイスを知る男に言われ、二人は梯子を降ろして降りる。
彼は筋肉の付いた、いかにも己の力で生きてきたという感じの男だ。
そこには、もう一人細身の男がいた。
が、そちらの男は黙ったままだ。何も言わない。
「そこに座りな。それにしても、男女の二人組みってのは珍しいな。」
その男はそういうと思い出したように、
「ああ、そうだ。名前を言ってなかったな。俺はレイだ。隣で黙ってんのはケイトだ。」
とレイはセイジとマヤに言う。
「よ、よろしく…。」
ケイトと呼ばれた男は聞こえるか聞こえないかの声で挨拶した。
レイの声との音量差はかなりある。いや、レイの声が大きいのか。
「こいつは無口だが、武器を持つと人が変わる。」
レイはケイトを見ながら言った。
「ルイスなら、船に弓を忘れたらしく。取りに行ったよ。周りを見回ってから戻ってくるとか言ってたな。」
「あの、あなた方もきおくを見た人たちなんですね。」
マヤは控えめにレイに言う。
「そうだ。こいつも同じだ。ここには他にも居るんだが上で寝てるやつとか、食料を調達しに行ったやつとか。」
レイはそこまで言って、思い出したというふうに続けた。
「そうだ。あんたらもここに居るんなら食料を調達する係が回ってくるぞ。注意しとけ。」
そうレイは言った。
「はい。」
セイジは答える。
そして、四人が一息入れた時、扉が勢い良く開いた。
開けたのはルイスらしかった。
セイジは何かを言おうとしたようだったが、ルイスの言葉に口が動かなくなった。
「施設の親子が海岸にいる。尾行も付いているようだ。」
「なんだって。」
なんとかセイジはそれだけを言った。
あのあと何かが起きたことはわかった。
「俺が見つからないように尾行している奴を仕留める。」
ルイスはレイを見て続けた。
「レイ。お前はあの親子を連れてこの辺りを歩いていてくれ。」
「わかった。」
レイは立ち上がり。扉の外へ出て行く。
「悪いがケイト、あとセイジくんとマヤさんはここに居てくれ。」
ルイスはそう言うと近くに置いてあった矢を矢筒に入れて出て行った。
「大丈夫かな。」
ふとマヤはつぶやく。
それに気が付いたケイトはマヤを見て、
「大丈夫ですよ。すぐ戻ってきます。」
ケイトはさっきとは違ってすらすらと言った。
ケイトの言う通りだった。
それから間もなく二人は施設の親子、つまりミナとミナの父親を連れて戻ってきた。
「もどったよ。いやぁ、尾行している奴が二人も居るなんて予想外だったよ。なぁ、レイ?」
ルイスは扉を閉めながら言った。
レイは先に建物に入って親子を椅子に座らせている。
「ああ、何時か俺たちと合流すると考えていたのかもな。」
そう言ってレイは親子を見る。
「ウィリアムさん。施設で何があったんですか。」
ルイスはミナの父親に言った。
そういえばミナの父親というだけで名前を知らない。
ウィリアムという名前だったのか。
「施設が奴らの手に落ちたんだ。」
ミナの父親ウィリアムは言った。
「じゃあ今あそこに居るのは。」
レイがウィリアムに言う。
「ああ、あいつらだ。」
ウィリアムは答えた。
マヤも分かった。施設で親子が教えてくれたことを思い出す。
それは米と呼ばれる国だ。
「なぜ今突然二人を追い出したんだ。」
レイはそういいながら考え込んだ。
誰かが階段を下りてくる音がした。ミナとウィリアムが反応する。
「気にするな。仲間だ。」
ルイスは親子に言った。
「済まない。気にしないで続けてくれ。」
階段を下りてきた男はそう言った。
「レイ。私は多分奴らが再び力を付けようと考えているのだと思う。」
ウィリアムは考え込んでいるレイに言った。
「まさか、二人をこちらによこしたのは施設の情報を与えるためなのかもしれない。」
レイはルイスを見て言った。
「そうかもな。」
ルイスは答える。
そしてルイスはレイたちの話を聞いていた仲間たちに言った。
「ウィリアムさんが来たんだ。俺たちの記憶と合わせてやつらから再び施設を取り戻すことを考えよう」
「そうだな。」
ウィリアムは言う。
「よし、人間も材料も集められるだけ集めよう。今のままでは少なすぎる。」
レイが立ち上がりみんなに言う。
ルイス、レイ、セイジ、マヤ、ミナとその父親ウィリアム以外はみなそれぞれどこかに行ってしまった。
残った人間は施設を取り返す方法を考えていた。
「施設へ出入りする船を襲撃するっていうこともしたほうがいいかもな」
レイはその場に居る五人に言う。
「やっぱりそういうことからか。」
セイジがつぶやく。
「今のところ面と向かっては無理よね。」
マヤは言いつつ思った。
今日会った人間の数では難しい、と。
「そうだな。施設周辺の偵察。そこに出入りする船への襲撃が可能ならしたい。まぁ、今のところは戦に備えて道具を作って訓練しなければいけないだろうが」
ルイスはマヤやみなを見ながら言う。
「今は船の襲撃か。うまくいけば情報も資源も手に入るな。」
レイがルイスを見て言う。。
「それほどうまく行くかどうかは分からない。しかし、今はそれほど力も技術もないんだ。」
ルイスはレイに答えつつみんなを見て言う。
「わかった。やろう」
レイは答えてセイジたちミナやウィリアムを見た。
それぞれがうなずく。
「施設の記憶は取り出せても、その場所からきおくが無くなるわけではない」
ウィリアムが口を開いて言った。
そして続ける。
「急ぐ必要が無いわけじゃないが今は仕方が無いと思う。」
「そうだな。」
ルイスが答える。
マヤは何か大変なことが起こる気がしてきた。
だからこれからは、こう思って行動することにした。
絶対に取り返さなければいけないんだと。