第五話 始動
第五話 始動
2236年 大西洋上
大西洋上、彼らはヨーロッパ連合王国へ船を進めていた。
「カール大尉、こちらにいらしたのですか。探しました。」
カールと呼ばれた男は甲板で遠く見える島を見ていた。
「そろそろ、火薬ももったいなくなってきたよなぁ。なぁテリー?」
カールと呼ばれる男はテリーと呼ばれる男に話を振った。
「そうですね、それにこれ以上施設の人間の行いに見てみぬふりはできません。」
彼は返答にがっかりした。
「そっちはいいの。火薬があればいいの。」
その返答にテリーもがっかりした。
本当にこの人は大丈夫なんだろうか、と。
そして、テリーは言った。
「それはいけません。アレを見たものたちがこちらに何をしてくるか。」
カールはしばしの沈黙の後、彼の目を見て言った。
「大丈夫だって、彼らはひそかに尾行されている。」
「話した途端に…ですか。」
テリーの顔はにやにやしていた。
「わかった〜?」
カールは笑っていた。
少し笑ったあとカールは続けた。
「それにこれからは施設全部が僕たちの支配を直接うける、からねぇ。」
カールはテリーの肩に手をおき、
「心配しないの〜。」
と能天気に言った。
「は、はい。」
テリーの声のトーンは低かった。
それで本当に大丈夫なのだろうか。
テリーはふと思った。
テリーははっとして、カールを見て言った。
「大尉、施設の運営に関してお話があります。」
カールはテリーを見た
「ん?何か問題でも?」
島の西側からカールたちは小型の船を使い上陸した。
この島には何も無い。ある一点を残しては。
「は〜い、みんな集合!」
すぐにカールは部下たちを集めた。
「いまからぁ、あちらにご挨拶してくるからぁ。ちょっとまっててね〜。」
この雰囲気に一応みなは慣れてはいる。その点が救いだ。
テリーはそんなことを思いながらカールの話す言葉を彼の後方から聞いていた。
施設内から外へと続く階段の近くにミナは居た。また誰かが来るのではないかと考えていた。
その時、扉の開く音をミナは聴いた。
「あっ、誰か来た。来たよおとうさん!」
誰かが来たことを確認したミナは、慌てて父親を呼びにいこうとする。
「その必要はありませんよぉ。お嬢さん。」
カールはそう言ってゆっくりと階段を下りてくる。
ミナの足は止まっていた。
「え?」
ミナは階段のほうを見る。
カールは階段の途中からミナを見た。
「あなた……だれ?」
ミナは何がなんだかわからなかった。
カールはそのまま無表情で階段をおりてきた。
「どうした?だれか来たのか?」
ミナの父親はのんきに二人の間に入ってきた。
ちょうどミナの父親の来る位置からは相手がどんな人かは見えない。
「お父さん……あのひと。」
ミナは近づいてくる父親を見て視線を来た人へ向ける。声から緊張していることがわかった。
「ん?」
ミナの父親はミナの見ているほうを見て目を見開いた。
「お、おまえは。」
ミナの父親はそれ以上は何も言えなかった。
この場に居るはずの無い、居て欲しくない人間が目の前に居るのだから。
階段を降り終えたカールは二人に一礼する。
「どうも、お久しぶりです。」
ミナの父親は固まってしまった。
「え?お父さん。お知り合い?」
ミナは状況をまだ理解していない。
ミナの父親は質問に答える代わりにカールに言った。
「なぜ、お前が……。何しに来た。」
扉の開く音がした。
誰かが階段をゆっくりと下りてくる。
「ん〜。率直に言うと…。」
カールは階段のほうを見た。
そして階段を下りてきた誰かが二人に言った。
「もうあなた方は要りません。」
そこに現れたのはテリーだった。
カールはミナたちのほうを向き直り、言い放った。
「そう、用済み。もういらない。」
凄くうれしそうにそう言った。
「な、なんだと!おまえたちここを…。」
ミナの父親の言葉は数人の兵士たちの登場と包囲により中断された。
彼らは各々剣を向けている。
カールは微笑した。
テリーは言った。
「今からこの施設は私たちのモノ。そしてあなた方はここから去っていただきます。」
カールは二人を見て言った。
「ちょっと待て!我々はここで…」
ミナの父親は言うものの。
「だから〜、用済みだって言ったでしょ…黙ってな!」
途中でカールの言葉に遮られる。
カールはミナの父親を睨み付けた。
そしてカールは続けた。
「ん〜?この二人はどうしようかねぇ?」
カールは首を少し傾けながらミナの父親を見る。
ミナの父親はカールを凝視している。
「大尉、その点で」
テリーはカールにそっと耳打ちした。
「ん?」
聞き終わった後、少しの間カールは視線はそのまま考えた。
そして、口を開いた。
「そうかぁ。それはいい〜。お前たちは生かしておく〜。」
カールは微笑しながらミナたちを見続けた。
カールは兵士たちに言った。
「この二人を本土に連れてっちゃて。」
数人の兵士が二人を連れて階段を上っていく。
彼らはこのまま本土へと連れて行かれる。
「最後の役目を果たしてもらおうか。」
扉が開かれそして閉じられた。
カールは彼らが出て行ったことを確認すると。
「尾行させろ。奴らも同じだ。」
後ろに付くテリーに言った。
「は、分かりました。」
テリーは素早く階段を上っていく。ある場所に向かうために。
カールとテリーは海を挟む本土を眺めていた。
「プレゼントかぁ……、考えたなぁテリー。」
後ろにいるテリーに言った。視線はそのままで。
「ここに置いていても使えない二人ですからね。」
テリーは思ったことを言った。
多分カールも同じことを考えているだろうと思いながら。
「もう少し歳いってればな〜。ありなんだけどな〜。」
カールの目は視界以外のものを映していた。
「女ですか……。」
テリーはカールの考えていることが理解できた。
「ああ。」
カールはテリーの質問に即答した。
「………。」
テリーはなにも言えなかった。
「せいぜい、楽しませてくれよ〜!」
カールは本土へ向かって叫んだ。
そして、カールは施設へと戻る道を歩き出す。
カールは立ち止まり、目を瞑ってひとしきり笑ったあとゆっくり目を開けた。
さあ、始まりだ。