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境界線  作者: 薙月 桜華
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第四十二話  美しい馬の地

   第四十二話  美しい馬の地


2237年 冬 西アジア


 ごちゃごちゃした高原を抜けて海に出た。それから、僕らは北へ向かった。

 そして、やっと砂の世界の終わりが見えた。

久しぶりの緑に感激する。そして、青々とした草木に触れた。緑の匂いがする。これからは安心して進めそうだ。途中で会う人に聞くと、もう少しでヨーロッパだと言われた。

もう少しだ。もう少しで。僕らはそう思いながら北へ向かった。

 僕らは北に向かうということしか考えていなかったためか、本当に真っ直ぐ北に向かった。

行き着いた先は緑のほとんど無い岩ばかりの土地だった。これならば、海沿いに歩いたほうが良かったと思う。それでも、こちらに来てしまったのだから仕方が無い。

それに、目に見えるすべての岩は奇妙な形をしていて、僕らが見たことの無い形をしていた。どのように出来たのか気になる。僕はそう思いながらサヤとともに歩く。

歩くといっても足場が悪いところも多々ある。僕らは土、砂と来て岩の上を歩く。砂のような不安定さや土のような優しさに似た感触は無い。ただ、蹴れば足に激痛が走るだけ。

しばらく歩くと、遠くに町を発見する。

「あれって、町じゃないかな。」

 サヤは僕を見て言う。

人が居るかどうかは分からないが、行ってみる価値はあると思う。

「そうだな。」

 僕は遠くに見える町を見ながら言った。そして、サヤを見て続ける。

「行ってみよう。誰か居るかもしれない。」

僕らは見つけた町へと歩き出す。土色の建物が少しずつ近づいてくる。それど同時に、誰も居ないと思えてきた。人が動く姿など見えない。僕らの足音と通り抜ける風の音だけが音として認識されるだけだった。

町に着く。歩き回っても誰も居ない。ずっと昔に廃墟になったのだろうか。僕は建物の壁に触れる。

「ねえ。あの岩山も建物になっているみたいだよ。」

 サヤの言葉に、僕はサヤの見る方向を見る。そこには岩山の形をした建物があった。岩山を掘って造ったのかもしれない。

「行ってみようよ。」

 サヤは僕を見て言った。

「そうだな。」

 僕は岩山を見た後、サヤを見て続けた。

「行ってみよう。高いところから一帯を見ることが出来るかも知れない。」

 僕らは、少し離れた岩山に向かって歩き出した。

近づけばその大きさに驚く。

「わあ。大きいね。」

サヤが僕を見て言ったとき。その間を何かが通り抜けた。

僕は一瞬のことに何が起きたのか分からなかった。直後、すぐ傍で鈍い音がする。

音のした方をみると、地面に矢が刺さっていた。僕らの間を通り抜けたのは矢だったのだ。

「なんで矢が。」

僕は矢を見ながら言った。そして、すぐに岩山を見る。すると、誰かが窓から覗いていることがわかった。

このまま動かずに立っていると、矢で射抜かれるかもしれない。

「逃げるぞ。」

僕はサヤの手をとると、走り出した。走る間にも、岩山にいる人間は矢を降らせてくる。

「何で狙われるのよ。」

 サヤはそう言いながら、僕から手を離す。何時もへこむ瞬間だと思う。今はそんなことを考えている場合じゃないか。

岩山からある程度はなれると、ぱたりと矢の攻撃は無くなった。岩山を見ると、そこから数人の男たちが出てきた。矢の攻撃の次は追っ手のようです。

「俺たちが何したよ。」

僕は走りながら言った。岩と岩の間を上手く走りながら、逃げる。

「待ちやがれ。」

背後から声が聞こえてくる。待ったら良いことないだろ。

次の瞬間、僕は岩に足をとられて転ぶ。

「大丈夫。」

 僕を立たせるサヤ。なおも僕らを追いかける男たち。

再び立って走ろうにも、足を痛めてしまったようだ。上手く走れない。追っ手が僕らに近づく。

そして、僕らはついに追いつかれてしまう。この土地を知る人たちには敵わないということか。

「お前たちは、俺たちを見ちまったんだ。」

男たちの中から一人が出てきてそう言った。多分、頭なんだろうな。そして、続ける。

「死んでもらおうか。」

その声と同時に、他の男たちが僕らに剣を向ける。周囲を剣で囲まれるのは良い気分じゃない。

「何を見たっていうんだ。あの岩山に人が居ることか。」

僕はそう言った。そんなに見られたくない理由があるのか。

「そうだ。俺たちの住処が他に知られちゃ困るんだよ。」

頭は僕らにそう言った。

「私たちがあなたたちの住処を見ても誰かに話すとは限らないでしょ。」

 サヤは男たちに言う。そして、僕はサヤの言葉に続けた。

「それに僕らがあなた方の住処に攻撃をしたならともかく、ただ住処の前に立ってただけで攻撃される筋合いは無いね。」

「それでも、見たんだから消えてもらうか。」

頭は僕らにそう言った。

足の痛みは引いていた。また、走れそうだ。

「サヤ。相手の合図で、しゃがんで離れろ。」

 僕は小さくつぶやく。サヤは小さく頷いた。

「やれ。」

頭の声とともに剣が中心に迫ってくる。

それと同時に僕らはしゃがんで、中心から離れる。

「なっ。」

頭の声をよそに、人と人の間から素早く出て離れる。

「来るなら来いや。」

僕はそう叫びながら大剣を抜く。サヤも剣を抜いて構えた。

「ふざけおって。早く殺せ。」

頭は他の男たちに叫ぶ。男たちは僕らに近づいてきた。

「この剣も、人間の血に染まることになるんだな。」

僕は自らの大剣を見て言った。そして、正面を見て続ける。

「サヤ。やろう。」

「うん。」

 サヤは答えてくれた。もうやるしかないんだ。

「うおおお。」

僕は大剣を円を描くように水平に振り回した。ぶつかった何人かの手から剣が落ちる。

一人は剣を振り上げて、襲ってきた。いや、隙を考えようよ。空いた胴体に大剣を突き刺した。引き抜くと血が噴出すとともに男は倒れる。サヤも、剣を失った男たちを始末したらしい。返り血を浴びていた。

残り三人と様子を見ていた頭が剣を抜いて襲ってくる。相手が剣で刺してこようとする。しかし、こちらの剣のほうが長いために相手の剣は届かずにこちらの剣が相手に刺さる。

剣を引き抜いたとき、頭が剣を振り下ろしてきた。あわてて、大剣で止める。周りを見ると、サヤが相手の剣をはじき返した後、急所に攻撃を加えていた。立っているのは目の前の頭だけらしい。

「おのれ。よくも。」

頭はそう言いながら、剣を横に振ってくる。

僕は一歩下がって体勢を立て直した。彼も、サヤを見て距離を取った。

二対一になった状況で、さてどうするか。

「くそおおお。」

頭は、サヤへ剣を振り下ろした。なんとか剣を受け止めたサヤも辛そうだ。僕は男に近づいていく。

「遊びじゃ。」

僕はそう言いながら大剣を振り上げた。男が一度こちらを見る。

「遊びじゃないんだよ。」

 僕はそう叫びながら、彼の首めがけて大剣を水平に振った。

 剣は刺さって止まることなく移動し続ける。そして、首を越えてしまった。

「あ。」

僕はやっちゃったという気持ちとともに声を上げた。

男の首は地面に落ちる。それとともに、サヤが悲鳴とともに男から離れた。首の無い体が地面に倒れる。

「刺さると思ったら、ぶった切っちまった。」

僕は切れた男の首を見ながら言った。まだ口や目が、微かに動いている。

サヤが僕の傍に駆け寄ってくる。

「お、終わったね。」

サヤは僕に言う。お互い血を浴びていた。しかも、人間の血だ。僕らは人殺しだ。

殺されそうになったから殺した。僕らはそう思うことにした。何もしなかったら、ここで旅が終わっていたかもしれない。正直、こんな場所で終わらせたくは無い。

僕らは血の匂いが漂うその場を後にして、旅を続けた。

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