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境界線  作者: 薙月 桜華
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第三十九話  争いのあいだ

   第三十九話  争いのあいだ


2237年 冬の始まり ヨーロッパ


 私はセイジ、マヤとウィリアムさんをアジトの一階へと来るように呼んだ。しばらくすると、三人がそれぞれ一階へ来る。

三人は私が座るテーブルへと座っていった。今や私の部下を除くと、一つのテーブルを囲めるほどの人数になってしまった。

「グラン、話ってなんだ。」

セイジが私に聞いてくる。私は一度深呼吸をする。

「これからの事さ。」

私はセイジを見て言う。そして続けた。

「正直これだけの人数で、施設奪還なんて無茶だと思う。」

私は三人に言った。

「同感だよ。レイやルイスが居なくなっちまったのが辛い。」

セイジはそう言いながら腕を組む。

「困ったわね。」

マヤが言う。本当に困った様子だ。

「私には、これ以上戦える知り合いは居ない。」

ウィリアムさんは、腕を組んで天井を見る。そして、続けた。

「どうしたらいいか。ううむ。」

「そこでだ。俺の知り合いを加えようと思う。」

私は三人に言った。すると三人とも驚く。

「居るんだったら、何故これまで仲間に加えなかったんだよ。」

セイジが言ってくる。セイジの言い分はもっともだ。

「セイジの言う通りだよ。」

私はセイジを見て言う。そして続けた。

「加えようとしている奴は、きおくを見たことが無いんだ。そんな奴を巻き込むのはどうかと思ったんだよ。」

「そうか、知らないなら何のために戦っているのか分からないよな。」

セイジは私に言う。

「それでも、ここまで来てしまったんだ。」

私は三人に言った。そして続ける。

「だから、今からそいつに会いに行く。そして、仲間になるように言ってみる。」

「グランくん。大丈夫なのかい。」

ウィリアムさんが私に言ってくる。

「大丈夫ですよ。必ず連れて来ます。」

私はそう言うと椅子から立つ。そしてセイジ、マヤとウィリアムさんを見る。

「それでは、行って来ます。」

私は三人にそう言うとアジトを出た。



アジトから南下すること数日。私は彼のところへ着く。

そこは町の中にある何の変哲も無い小さな家。

扉を叩くと、彼は出てきた。

「ん、何か用か。」

家の中から顔を出す男。彼が私の求めた男だ。眠そうな顔で私に対応する。

「よお、リュシアン。元気か。」

私は彼に笑顔で挨拶をする。

彼の名はリュシアン。私の知り合いだ。彼は昔と変わらず細身の体で私の前に現れた。私の体型とは大違いだ。

「ああ、グランか。入れ。」

眠そうな顔をしたリュシアンはそう言う。

そして自分は家の奥に向かおうとした。そこでリュシアンは何かを思い出す。すぐに振り返り、私を見た。

「グラン。久しぶりじゃないか。何やってたんだ。」

リュシアンは私に言う。先ほどの眠そうな顔は何処かへ行ってしまったようだ。

「色々あってな。ここに来ることになっちまったよ。」

私は頭をかきながら言った。

「ここに来るってことは、もう一度一つにならなきゃいけない状態になったんだな。」

リュシアンは私を見て言う。その声は落ち着いていた。


私たちは、昔行動をともにしていた。それは私があの国からこのヨーロッパへ来てからだ。その頃は全体の人数も今より少なかった。このヨーロッパで少しずつ部下を増やしていく。その中にリュシアンは居た。彼は集団の中で頭としての役割を難なくこなし、仲間からの信頼を得た。

そして、リュシアンと行動をともにするにつれて、彼を慕う仲間は増えていった。私はそれはそれでいいと思ったし、リュシアン本人は私と行動していたいと言っていた。それが出来なくなったのは集団の人数が増えすぎたためだった。あまりに増えすぎたために、全体をまとめることが難しくなった。

そこで私は決断をした。私とリュシアンをそれぞれの集団の頭として、今ある集団を二つに分割することにした。

人数的には綺麗に分割されることは無かった。

それぞれが別々の道を歩む朝。リュシアンは私に言った。どちらかが困ったときは再び一つになって行動をしようと。

その時が今なのだ。


「それで、何があったんだ。」

リュシアンと私が椅子に座った後、彼はそう言った。

「今俺たちはロンドンに存在するある施設を奪還するために、何人かの仲間と一緒に行動をしている。」

私はリュシアンにそう言う。

「ロンドンに存在する施設って、あそこには誰も居ないし何も無いだろ。」

リュシアンは言う。やはり知らないか。

「あるんだよ。その施設はな。その中には百年以上前にあった戦争以前のこの星の記録が全てあるんだ。」

私はリュシアンに言う。そして続けた。

「その施設を俺の知り合いの男に武力で奪われちまったんだ。」

「なんか良く分からないが、その施設を奪い返せば良いんだな。」

リュシアンは私に言う。なんとか理解しているようだ。

「ああそうだ。そして、その男はきおくの中の情報を自分の国に持ち帰っているんだ。」

私はそこで一度深呼吸をすると続けた。

「戦争でも始めるのかもしれない。同じ国に生まれた人間として嫌になるよ。」

「同じ国って、あの国なのか。」

リュシアンはそう言う。

「ああ、だから止めなければいけないんだ。」

私はリュシアンに言う。そして続けた。

「リュシアン。一緒に施設の奪還を手伝って欲しい。頼む。」

私はリュシアンに頭を下げた。

「頭を下げるなよ。その状態だと、困るのはあんただけじゃないんだろ。手伝うよ。」

リュシアンはそう言うと家の外へ出た。そして、何かを叫んでいる。そして、リュシアンは家の出入り口から私に言った。

「外に出てみな。」

私はリュシアンの言葉を聞いて外に出る。

そこには昔行動をともにした部下たちが居た。人数は十数人ほどだ。

「今すぐに集まったのはこのぐらいだが、もっと居るよ。」

リュシアンは集めた部下を見ながら私に言う。そして私を見て続けた。

「お頭。あんたのもとで俺たちは戦うよ。」

「そうか、ありがとう。」

私はリュシアンたちにそう言った。いや、それしか言えなかった。


さあ、再び一つになろう。その時が来たのだ。

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