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境界線  作者: 薙月 桜華
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第三十八話  ふたり

   第三十八話  ふたり


2237年 秋の終わり ヨーロッパ


 私は扉を叩く音で眼が覚めた。目を擦りながら起き上がる。隣を見れば、セイジがすやすやと眠っている。

立ち上がって、扉へと向かう。また扉を叩く音がした。

「お姉ちゃん。」

今度は扉の向こうから声が聞こえてきた。声の主はミナだろう。私は扉を開ける。

「お姉ちゃん。おはよう。」

部屋の前にはミナが居た。笑顔で私に挨拶をする。

「どうしたの。」

あくびをしながら、私はミナに言った。起きたくて起きたわけじゃないので体が言うことを利かない。

「外へ遊びに行こうよ。ねえ。」

ミナが私の体にくっ付いてくる。物をねだる子供のようだ。子供か、欲しいかな。

三階を見ると、何か寂しく感じられた。

「そうね。行きましょうか。」

私はミナにそう言う。そして続けた。

「準備が出来るまで待っててくれる。」

私はミナにそう言うと、ミナは頷いてくれた。彼女は自分の部屋へと戻っていく。私はそれを確認すると、外にある井戸へと向かった。

外に出ると、空気は涼しい。そして、空を見れば晴れていた。

井戸から汲んだ水は冷たくて眠気を覚ますにはよかった。事を済ますと、三階へと戻る。

自分の部屋で身支度を済ませると、ミナの居る部屋へと向かった。

扉を開けると、彼女は座って床の一点をじっと見ていた。ウィリアムさんは部屋の中には居なかった。

「準備できたよ。」

少し首を傾けながら、私はミナへ言った。ミナはその声に反応してこちらを見る。

「あ、お姉ちゃん。準備出来たの。」

ミナは私に言う。私は頷いた。

「じゃあ、行こうか。」

私の言葉でミナは立ち上がり、部屋を出た。

私たちはそのまま階段を下りて一階の出入り口まで向かう。途中何人かと出会い、それぞれに挨拶をしていく。朝なのかあのためか、みんな元気いっぱいというわけではない。

「ねえ、何処に行くの。」

私はミナに聞いた。何処か行くあてがあるのだろうか。

「内緒。」

ミナはうれしそうに私に言った。

外に出ると、太陽が私たちを照らす。

「私に付いてきて。」

ミナはそう言うと、勝手にどんどん歩き始めた。

「はいはい。」

私はミナにそう言うと、ミナの後ろを歩いた。

アジトから海岸へと出る。海は落ち着いていて、太陽の光を反射していた。

「海、綺麗だね。」

ミナはそう言いながらも歩みを止めない。

「そうだね。」

私はそう言いながらもミナの後ろを歩き続ける。

海岸をしばらく歩くと、岩が沢山ある場所に到達する。ミナは岩と岩の間を上手に通り抜けていく。私も、その後を追ってなんとか通り抜けた。

「到着。」

ミナは私を見ながら言った。

海岸の両端を岩が囲んでいる。自分だけの海岸ともとれる場所だった。

「ここ凄いね。」

私はミナを見て言った。

「座ろうよ。」

ミナはそう言いながら、砂浜に腰を下ろす。そして、私を横に座るように促した。そこに私は座る。そして、眼前の海を見た。

「ねえ、良くこんなところ発見できたね。」

私は海を見たままミナに聞いた。

「他の人に見つからない場所を探してたら、たまたま見つけたんだよ。」

ミナは言う。ミナを見ると、同じように海を見ていた。私も海を見る。

しばらく私たちは黙ったまま海を見ていた。

「あのさ。」

私はミナを見て言う。ミナは私を見る。そして私は続けた。

「ミナはきおくのある施設にずっと居たんだよね。」

「うん。生まれたときから。」

ミナはそう言いながら海を見る。そして続けた。

「お父さんは海の向こうからあの施設に来たの。そして、この地でお母さんと出会って私が生まれた。けど…。」

ミナは一度空を見ると再び海を見て言った。

「お母さんは私が小さい頃に死んじゃった。」

私はそれを聞いたとき、何かがこらえ切れなくなってミナを抱きしめた。何も言わずに。

「苦しいよ。お姉ちゃん。」

私はミナの言葉に、ふと我に返った。

「あ、ごめん。」

私がそう言うと前を向いて海を見た。海を見て思った。そういえば、まだ聞いていなかったことがある。

「ねえ、生まれたときから施設に居たって事はさ。きおくも沢山見てきたんじゃないの。」

私はミナにそう言った。小さい頃から身近にあんなものがあるのだから色々見ているだろう。

「ううん。沢山ってほどでも無いよ。見るときはお父さんが後ろに居たし。」

ミナは私を見て言った。

「え、なんでお父さんが。」

私はミナを見て尋ねる。

「お父さんが言うには、私が自分できおくの中から情報を取り出すことは良いみたい。だけど、それが良いものか悪いものかを私が判断出来ないから何時も見ているんだって。」

ミナは海を見ながら私に言った。

「やっぱりお父さんだね。」

私はそう言いながらミナを見た。ミナも私を見て頷く。それからしばらく、私たちは海を見ていた。

空を見ると、日が高く昇っていた。そろそろ戻らないといけない。

「そろそろ戻ろう。お腹空いたでしょ。」

私はそう言いながら立ち上がる。そして、ミナに手を差し伸べた。

「うん。」

ミナはそう言いながら、私の手を掴んで立つ。

アジトへと帰る道。高く昇りきった太陽が私たちを照らす。

アジトに戻り、階段を上って三階に着くと。

「お姉ちゃん。今日はありがとう。」

ミナは私を見て言った。

「こちらこそ。ありがとうね。」

私もミナを見て言う。

そこで、ミナは何かを思い出す。そして、私の耳元でそっと囁いた。

「今日行った場所にあの人と行ってみたら。」

私はミナを見た。彼女は満面の笑みを浮かべていた。

「じゃあね。」

ミナはそう言いながら自分の部屋へと戻っていった。

私も自分の部屋へと戻ることにした。

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