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境界線  作者: 薙月 桜華
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第三十三話  きずあと

   第三十三話  きずあと


2237年 秋 南アジア


緑なんて見ることの無かった丘を越えて僕らは歩き続けていた。あの日にみた建造物は何だったのだろうか。何時出来たのだろうか。まぁ、今考えても仕方が無い。聞く相手なんて居なかったんだから。

今は砂を踏みつける音はするものの砂漠と言える世界では無い地域に来た。

「あの山って凄く高そうだね。」

サヤが指指す方向を僕が見ると、僕らが進む方向の右側には高い山々が見えた。それらの山は僕らを寄せ付けたくないのか、それとも挑発しているのだろうか。その存在感を僕らに見せ付けている。

「本当だ。凄く高そうだな。」

僕はサヤが指差した方向にある山々を見ながら言った。

僕らはしばらくその山々を見ていた。

遠くからも高いと分かる山々。何故あんなにも大きな山々があるのだろうか。どうやって出来たのだろう。土を盛って作り上げたわけでは無いことは確かである。

人間が作れる程度の山じゃないことは分かった。それとともに、自然が作り出したものに恐ろしさにも似た感覚を得た。

「やっぱり高い山だけに。」

僕はそう言いながらサヤを見た。そして再び山を見る。

「頂上から下を見ると景色は良いんだろうな。」

僕は目の前にある山を見ながら、ふと僕らが住んでいた町の近くにある山を思い出す。

目の前にある山々には遠く及ばない高さの山ではあるが頂上までは自分たちでも登ることが出来て、自分たちの町と海を見ることが出来た。

そこから見た景色がふと懐かしく思えた。周りには木々が沢山あって木の匂いがしたと思う。夏でもひんやりとした山の中。今はそんな山が恋しい。

「ちょっとカイ。大丈夫。」

ああ、またサヤに現実に引き戻される。懐かしい記憶に浸っていたのに、なんてことだろう。今ここでその記憶を思い出そうとしても記憶の中だけだから実際に目、耳や手で触れる事は出来ない。

僕は両手で頬を軽く叩いて、現実を見ようとした。

「ああ、悪い。早く行かなきゃな。」

そう思ってこれから行く方向を見ると何か見えた。

「なぁ。」

僕はサヤを見て言った。そして再び前を向き、見つけたものを指差した。

「あれって、町じゃないかな。」

サヤは僕が指差す方向を見ると僕へ言った。

「そうみたいね。」

そして僕のほうを見て続けた。

「行ってみましょう。」

僕はサヤの言葉に頷き。その町へ向かって歩き出した。

空を見れば、日が傾きだしていた。



町に近づくにつれて僕は嫌な予感がした。遠くからでも見える一部が崩れた建物。廃墟の可能性も考えたが、これだけでは誰も居ないとは言えない。だから、かまわず町へと向かった。

僕らは町に着く。ここから見える建物はみんな崩れかかった建物ばかりである。老朽化したためか何なのか、僕らには分からない。

「町の中へ入ってみよう」

僕の言葉にサヤは頷いてくれた。

僕らは町の中へと入っていく。

視界に入る建物全てが崩れかかっていた。

修復をしていないために今のような崩れた状態になっているのだろうか。

足元で石の擦れる音がした。

それとともに硬い感触が足に伝わる。

「えっ。」

僕は直ぐに足元を見た。

足元には色々な形の石が見える

「ん。」

サヤは僕を見ながら次の一歩を踏み出す。

「わっ。」

サヤも石を踏んだようだ。直ぐに踏み出した一歩を戻して足元を見ている。

「何で石が散らばっているのよ。」

サヤが僕を見て聞いてきた。

僕はしゃがんで石を見る。

そして、傍にある建物を見上げた。

その建物は壁が大きく崩れていた。この壁に使われていたものが今は足元にあるんだろう。

建物が崩れたときに出来た破片が道に散らばっているということか。

「感触が悪いけど。この上を通ろう。」

僕は立ち上がりながらサヤに言うと、そのまま石の上を歩き出した。

「ちょっと。待ってよ。」

背後からサヤの声が聞こえる。振り向けば、僕を追って石の上をゆっくりと慎重に歩いてきている。

僕はサヤが渡りきるまで待っていた。

「よし。行こう。」

サヤが渡りきると、僕はそう言ってまた歩き出した。

相変わらず周りの建物は一部が崩れていて、人影も見えない。

ただ何処からか吹く風が僕らの間を通り抜けていくだけだ。

「誰も居ないね。」

サヤはそう言いながら辺りを見回している。

「あれ。」

サヤが何かを見つけて立ち止まる。

僕も立ち止まり、サヤの見る方向を見た。

そこには緑色の布を被った何かが、少し離れた建物の入り口そばに寄りかかって居た。こちらには向いておらず、顔は見えない。

「人間かな。」

僕にはそれがうずくまった人間に見えた。

「そうかもね。」

サヤにもそう見えるらしい。

僕らは近づいてみることにした。近づいて僕は話しかけてみる。

「あの。」

布を被った何かを前から覗こうとしたとき、道に沿って風が吹いた。

その風で緑色の布がどこかへ飛ばされた。

「うお。」

僕は思わず声が出てしまった。そこに居たのは人間には間違いなかった。しかし、既に骨になった人間だった。

「いや。」

サヤも骨を見て後退る。

その骨はほとんど原型をとどめていなかったが木の棒を掴む手から腕はほぼそのまま残っていた。

僕は周りを見回してみた。先ほどは全く気がつかなかったが、良く見ると所々に骨が散らばっているのが見えた。

「争いでもあったのかな。」

サヤが心配そうに僕に聞いてくる。

「そうかもしれないな。」

僕は周りに見える骨たちを見ながら言った。

今人間が僕らに襲ってくるというのなら、僕らはそれに対して対処が出来ないだろう。何時も人間以外の動物を相手にしてきたことが理由だと思う。

「建物の中に入ってみよう。」

僕はそう言うと傍にある建物に踏み入った。

「ちょっと、待ってよ。」

さっきも同じ言葉を聞いたが、今度は力なく口から出てきた。

建物の中は荒れていて、壁近くには骨の塊が幾つかあった。それらは外に居た人間の骨よりも原型をとどめていた。そして、人間の骨とはこうだと言わんばかりの存在感を持っていた。

周りを見れば石の塊が落ちている。

天井を見上げると二階部分が見える。二階部分の床が、一部抜けているようだ。それでも階段はあり、上に上れるようになっていた。

「上に上ってみよう。」

僕はサヤを連れて階段を上ってみる。

二階へ上がると一階部分が見えて恐い。

「落ちたら大変だね。」

床が抜けた部分を見たサヤが、僕を見て言った。

落ちたら怪我は確実だろうな。

窓から外を見ると下からは見えない光景が見えた。気がつかなかったが、良く見ると道のいたるところに骨が見える。やはり人間の骨だろう。

隣の建物を窓から見れば周りはそれほど崩れていないものの中は何も無い状態に見えた。

いや、建物なら家具とか机とかそういうものぐらいは置いてあるものじゃないのか。

まぁ、争いで色々持って行かれたとも考えられるか。

「隣の建物も中は何も無いみたいだな。」

僕はサヤを見て言う。サヤは道側の窓から外を見ていた。

「今日はここに泊まりそうだね。」

サヤは僕を見て言った。

「え。本当か。」

そうなるのかどうなのか、僕も窓へと向かう。

窓から外を見ると、日が落ちようとしていた。

なので、今日は仕方なくこの町で夜を過ごすことになるようだ。

「泊まりで決まりみたいだな。」

僕はサヤへ言う。参ったといった気持ちだった。

さてと、食えるものが無いか辺りを探してこようかな。

僕らは今日の夜を越えられるように準備を始めた。

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