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境界線  作者: 薙月 桜華
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第二十六話  帰還

   第二十六話  帰還


2237年 夏の始まり ヨーロッパ


私は部下をウィリアムさんたちが居るアジトへ連れて行く。

その後、ケイトとともに施設へ向かった。

カールとの約束を破るために。その事を伝えるために。

行く意味があるのかと、ウィリアムさんやその他の人間が言う。

特にウィリアムさんには強く言われた。

私がカールと会えば、彼を殺しかねないと思っているらしい。

しかし、私はカールを殺せない。

一緒に居たあの頃があるから。

それでも、約束してしまったのだ。黙って裏切ることは自分の考えに反する。

伝えに行くのだ。私たちの関係が行くところまで行ってしまったということを。



施設のある島へ着くと、辺りは暗くなっていた。

その中を施設へ向かって歩く。

「僕は隠れて見張ってます。」

ケイトはそう言うと一人でどこかに行ってしまった。

彼には、尾行が付いたかの確認および排除をしてもらうことになっている。

ルイスが、ケイトを指名した。

よくこの島で偵察を行っているからだという理由らしい。

ひとまず尾行した奴がいるのなら、ケイトが教えてくれれば自分で手を下してもいい。

私は辺りに注意を払いながら歩いた。

案の定兵士たちに囲まれる。

「手を上げろ」

兵士の一人が私にそう言った。

剣の先が私の胸のあたりにある。

「俺はカールに話があって来たんだ。グランが来たといえばわかる。」

私は大声で言った。

騒ぎに気がついて近づいてくる兵士の中に兵士以外の格好をした人間が居た。

「グランさんですね。」

その男はそう言った。私のことを知っているらしい。カールから聞いたのだろうか。

その男は兵士たちに剣を収めるように言う。

「失礼しました。カール大尉をお呼びしますので、少々お待ち下さい。」

その男はそう言った。カールの部下なのか。

施設のほうへ走り出す。

私はその後を歩いてついてく。

先ほど剣を向けていた兵士たちは私の後ろを歩いている。

途中で会った兵士たちは、私のことを誰なのか不思議そうに見ている。

施設に近づくにつれて辺りが明るくなり、人々の騒がしい声が飛び交うようになる。

この中に、ウィリアムさんたちが、私が守りたいものがある。

忙しそうに歩き回る兵士たちを見る。

彼らは自分たちがしていることを理解しているのだろうか。

私に気がついて立ち止まる人間も中には居た。

施設が見えてくると後ろを歩いていた兵士たちは何処かへ行ってしまった。

代わりに、施設前にはさっきの男とカールが見える。

二人は私を見ている。

さてと、裏切ってこようか。



「じゃあな。」

私ははそう言うとカールから離れていった。

後ろに注意しつつ来た道を戻っていく。

帰り道でも兵士たちが私を見ている。

そんなに来客が珍しいのか。

徐々に辺りが暗くなり、最後には月の光のみが私を照らすようになった。

来た道を見ると、遠くに施設が見える。

施設は必ず取り戻してみせる。それだけだ。

まだケイトは現れない。私は海岸へと歩きだす。

海が見えてくる。

そろそろケイトが現れてもいいんだが、どうしたのだろうか。

もしや、尾行の排除をしているのだろうか。

私は立ち止まり、来た道を見る。

そのとき、左側に何かが落ちた音がした。

素早く振り向くと、ケイトが居た。

「尾行は無し。誰も付いてきてませんよ。大丈夫です。」

ケイトは私を見て言った。

それから、私が来た道を見て続ける。

「早く戻りましょう。世が明けてしまいますよ。」

私たちは船に乗って戻ることにした。

これから向かう先は光の無い世界のように感じた。



陸に着き、アジトへと向かう。

辺りは明るくなっていた。いや、もう朝なのだろう。

アジトのある建物へ着く。扉を開けて、戻ったことを告げる。

しかし、それを聞くものは居ない。

なぜなら、建物の中には誰も居ない。

私の部下もウィリアムさんも居ない。一体どこへ行ったのだろうか。

「帰ってきたのか。」

建物の影からルイスが出てきた。

私は状況を聞きだすことにする。

「ウィリアムさんや俺の部下たちはどこへ行ったんだ。」

「君たちが大勢で押しかけたからね。この建物が怪しまれた。だから、アジトを変更したんだよ。」

ルイスが私たちに言う。ケイトは関心して何度も頷いている。私とケイトだけが知らなかったらしい。

「悪かったな。大勢で襲撃して。」

私は怒った口調でルイスに言う。

「いや、いい機会だったんだ。人数が多くなって、この建物では収納しきれない状態になった。だから、替えたのさ。」

ルイスが私たちに言う。私の部下が加わった時点でこの建物では不十分だと理解していた。

替えるのはいいだろう。

「じゃあ、なぜ俺たちは伝えなかった。」

私はルイスへ言う。

「君たちに尾行が付いていて、そのまま新しいアジトへ来ていたら替えた意味が無いからね。」

ルイスがさらりと言う。

「お前、俺が信用できねぇのか。」

私はそう言うと、ルイスに手を上げる。

「や、やめてくださいよ。」

ケイトが私とルイスの間に入って、私の行動を止めようとする。

私はしばらくケイトに力を抑えられた後、新しいアジトへと向かった。

そこは、前のアジトよりも西へ移動した場所にあった。

扉を開けて入れば、仲間や私の部下が居る。

私とルイスとケイトはその中へ入っていった。


また、新しく始まるんだ。

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