第二十五話 うらぎり
第二十五話 うらぎり
2237年 夏の始まり ヨーロッパ
目を開ければ天井が近くに見える。
毎日がつまらない状態になっていた。
つい先日、彼らは私とテリーの策によって見事に敗北したといえる。
このままなら、グランたちの手で簡単に始末出来るだろう。
まぁ、グランが彼らを見つけていればの話だが。
施設内は一部の場所を除いては静かであった。
その静かな場所で私はしばらく横になり眠っていたのだ。
最近はテリーが突然起こしにくるということもなく、ぐっすりと眠れている。
彼らさえ居なくなれば、あとはきおくを運び続けるだけなのだ。
私はしばらく天井を眺めていた。
重いからだをベッドから起こし、靴を履いて部屋の外へ出る。
光の当たらない場所だからか空気がひんやりとしている。
その中を私たちが見たこともないものが照らしている。
それは等間隔で配置されており、それぞれが同じ色の光を出している。
どのように発光しているのかなどは私にはわからない。
きおくを調べれば何かわかるかもしれないが、未だに調べてはいない。
近くにあるものほど何時でも出来るという安心感があるのかもしれない。
しばらく廊下を歩くと騒がしい部屋に出る。
この施設内で騒がしい場所と言ったらきおくのある部屋か外への階段がある部屋のどちらかである。
まぁ、前者のほうは人間の音よりも機械から発せられる音のほうが大きいと思う。
私は外への階段がある部屋に出る。
今日も騒がしく人が喋っている。
私に気がついた兵士はあいさつをする。
私はそれぞれ頷きつつ外への階段を上っていく。
外へ出れば辺りは暗くなっていた。
施設内のひんやりした空気とは違う冷たい空気が頬をかすめる。
とは言っても、外は外で静かでは無い。
毎日が、見た目変わらないように思える。
施設から取り出したきおくだけが内容を変化させていくかのようだ。
しばらくここでみなを見ていよう。
「大尉、大尉。」
私は声のするほうを向いて目をあける。
施設への扉に寄りかかったまま寝ていたらしい。
そこへテリーが話しかけてきたようだ。
「んあ、なんだ。」
私は頭を掻きながら言った。
テリーの何時に無く真剣な顔に何か良くないことが起こったのかと思った。
頭を掻くのを止めて、テリーの次の言葉を待つ。
「グランという方が話があると。」
テリーはそう言いながら、ある方向をみる。
私もその方向を見ると、グランがこちらに向かって歩いてきた。
兵士たちが私のほうを見る。
大丈夫だという合図を出しておいた。
手出しされると色々と面倒だ。
私は口元が緩んでいた。
彼がここに来るということは奴らを始末したということだ。
さぁ、グランよ。始末したという言葉を聞かせてもらおうか。
「よぉ、グラン。」
私はグランに挨拶をする。
「カール。」
グランも返してくれた。
ちょっと怖い顔だけど大丈夫。
「約束のほうはどうだい。」
私はグランへあのことを聞いた。
さぁ、次の言葉が期待大だ。
「それなんだがな」
グランは言い出す。そして続けた。
「お前の行動にはがっかりだよ。なぜウィリアムさんを殺させようとした。なぜお前がここに居るんだ。なぜ…」
私は一度深呼吸をした後、熱くなるグランの言葉を遮って言う。
「グラン。言いたいことは沢山あるだろう。だが気がついたのならば、お前の行動は解りきっているよ。」
私は遠くの空を見た。
失敗のようだ。まぁ、グランが気が付いてしまったのだから仕方が無い。
さすがに、親しくしてもらった人を殺すことは出来ないか。
それが、何年も会っていない人だとしても。
「お前は向こう側に付くんだろうな。」
私は遠くの空を見つめたままグランに言った。
「そうだ。」
グランは私を見て言った、。そして続ける。
「俺はお前を殺せない。だが、お前は俺以外の奴が必ず殺す。それだけだ。」
私はグランを見る。彼の目は真剣だった。
「じゃあな。」
グランはそう言うと私から離れていった。
私はその後姿をずっと見ていた。
「大尉、奴に尾行を。」
そばに居たテリーが私に耳打ちする。
「いや、いい。」
私はしばらくグランの歩いていった方向を見ていた。
私はテリーを連れて会議場へ行く。
正直どこでもよかったりするのだが、静かな場所ということで選んだ。
それに、屋外なので新鮮な空気が吸える。
ここは施設への扉やきおくを整理する場所から少し離れた場所である。
私とテリーは木と布で作られたテントの中に入る。
いくつかの椅子の中心にテーブルがひとつある。
その上には紙が何枚か置いてあり、文章が書かれている。
書いてある内容はこれからのこの施設ときおくの運搬の話である。
「さぁ、問題だよ。テリー。」
私はテリーを見て言う。
「大尉、なぜ彼に尾行をつけなかったのですか。」
テリーが言ってくる。
テリーにとっては、尾行をつけて場所を暴こうというのだろう。
「無駄だよ。考えてみろ。グランは奴らについた。ということは、尾行したら簡単に尾行した奴が殺されるぞ。意味が無い。」
私はテリーに言った。
そして、会議場の中を歩き回る。
実際のところそうなのだから仕方が無い。
「じゃあ、どうするのですか。」
テリーが私に聞いてくる。
私は立ち止まり、テリーを見て言った。
「私たちで探すんだよ。対岸一帯のどこかに居るはずだ。」
「そんな。時間がかかりますよ。」
テリーは私に言う。
そうだ、グランがこれだけ時間がかかったんだ。
私たちが探してもそれなりに時間がかかるだろう。
「時間がかかってもいいさ。奴らのほうから来ない限りは、きおくの運搬に関しての悩みは無い。運び終わったら事を始めればいいんだ。」
私はそう言うと、テリーの肩を軽く叩いて頷いた。
そのまま、会議場を出ようとする。
「わかりました。お任せください。」
背後からテリーの声が聞こえる。
私たちの計画の完了か、お前たちの計画の完了か。
さぁ、どちらが早いのだろうか。
気になるところだ。