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境界線  作者: 薙月 桜華
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第二十四話  バラナシ

   第二十四話  バラナシ


2237年 夏の始まり 南アジア


僕らはバラナシで、たまたま出合ったお店のおばさんの家に泊めてもらっていた。

おばさんの名前はレニーと言うらしい。

ひとまず聞いといた。

食事時は野菜の炒め物と、味噌汁のような液体の入ったものとご飯を頂いた。

隣では、サヤが辛さに苦戦していた。

「あなたたち、この町になんのために来たの。」

すべての食事が終わったあと、レニーは僕らに質問してきた。

「インドに入る前に、インドを通っていくならバラナシへ行ったほうがいいと言われて。だからここへ。」

僕は素直に答えた。実際そうなのだから仕方が無い。

「へぇ。ここもやっぱり知られているものなんだね。」

「なんで、このバラナシって場所が知られているんでしょうか。」

僕はレニーに聞いた。何かしらの理由があるはずだ。

「ここはね。ヒンドゥ教の聖地になっているの。そして、そばを流れているガンジス川がヒンドゥ教徒にとっては聖なる河なの。」

「へぇ。ここがヒンドゥ教っていう宗教の聖地なんですか。」

サヤがあっさりと言う。分かっているのか分かっていないのか僕には分からない。

「教徒は毎朝ガンジス川に入って身を清めるわ。」

「朝早くから川に入って寒くないんですか。」

朝から川に入って、濡れた体で風邪を引いたりとかはしないんだろうか。

「意外と寒いわよ。私もするから。」

レニーの言葉に、この人もヒンドゥ教徒なんだなぁと再確認した。

「そうだわ。明日の朝早くに朝日を見に行きましょう。ここに来たんだから見ていったほうがいいわ。他にも色々見せてあげる。」

レニーが突然言い出す。

「明日が楽しみです。ありがとうございます。」

サヤがレニーに礼を言っていた。

僕らも今日のような情報不十分な状態でこの中を歩き回るよりはいいと思った。

明日は色々と知ることが出来るだろう。



次の日の朝早くに僕らはガンジス川へ向かった。

「ちょっと待ってて。」

レニーは船の漕ぎ手のところに行って話を始めた。

「なんか寒いね。」

サヤが僕に言った。腕を擦って少しは温まろうとしている。

朝早いことと、太陽の光が無いからだと思う。

まだ辺りは薄暗い。

それぞれの物に本来の色があっても、すべてが黒く染められているかのようだ。

今は東からの微かな光が物に本来の色を与えようとしてくれている。

レニーは船の漕ぎ手との話を終わらせて戻ってきた。

「この船に乗りましょう。」

レニーはそう言うと、僕らは船に乗り出した。

船が岸から離れる。

まだ東の空には太陽が昇っていない。

周りを見ても岸のほうに何人か見えるだけだ。

この時間は早起きの時間になるのだろうと思った。

ゆっくりと東の空が明るくなっていく。

それによって気が付いたことがあった。

「レニーさん。東のほうには何もないように見えるんですが。」

僕はレニーに質問してみた。そういえば実際何もなかったような気がする。

「東の土地は何も無いわ。だからここから地平線が見えるの。」

レニーが答えてくれた。対岸には何も無い。だから、朝日が出ればすぐ分かりそうだ。

さらに東の空が明るくなった。

僕らは東の空をずっと見ていた。

何も言わずにただ朝日が昇るのを待っていた。

「あっ。」

サヤが声を上げる。太陽の一部が地平線を越えてひょっこり頭を出した。

「おお。」

僕も思わず声が出てしまった。

ゆっくりと太陽が地平線から昇ってくるところを僕らは見た。

太陽が地平線を越えて昇ると全体が明るく照らされだした。

しばらくそのまま見ていた。

ふと気が付くと、あたりは明るくなっていた。

周りを見れば岸から川に入っていく人々を見た。

身を清める行為を始めるようだ。

ぞろぞろと川の中に入っていく。

服を着たまま川の中に入っていく人々もいる。

「おお。」

僕は思わず声を上げてしまった。

そういえば、この川の色は茶色いぞ。色々な意味で大丈夫なのだろうか。

傍にレニーが居るにも関わらずそんなことを考えてしまった。

「服濡れちゃうよね。」

隣でサヤがまともな事を言っている。

実際濡れるだろう。濡れたまま上がって、風邪を引かないのだろうか。

何も考えずに川に入るわけではないだろう。

本人の勝手ということか。

その隣で、洗濯をしている人たちもいる。

洗ったものを順に干していく。

「そろそろ次に行きましょうか。」

レニーの声に反応して、僕は彼女のほうを見る。

「次は何処へ行くんですか。」

レニーの言葉に僕は次の目的地について質問をする。

「次はこの岸沿いの火葬場でも見にいきましょうか。」

レニーはそう答えた。

火葬場というのだから、遺体を燃やして灰にしていく場所だろう。

船で火葬場の傍まで着くと、煙が上がっていた。

火葬場と言ってもガンジス川に開かれた所だ。

「見ようと思えば、僕らにも見れるんですか。」

僕はレニーに言った。サヤは何も言わずに火葬場の方を見ている。

「そうよ。だけど女性は入れないの。遺灰はガンジス川に流されるわ。」

レニーは答えてくれた。

「そろそろ戻りましょう。」

レニーの言葉で僕らはその場を離れて引き返すことにした。

帰りに洗濯をしている人々を見ると、洗濯物が大量に干されていた。

朝早くに船に乗った場所に戻ってくる。

船を降りると、レニーはこう言った。

「ここでお別れになるわ。この町を出るところまで一緒に行ってあげたいけど。こっちは用事があるの。ごめんなさいね。」

そしてレニーは続けた。

「そこに見える道を、真っ直ぐ西に進んでいくとこの町を出ることが出来るわ。」

「色々とありがとうございました。」

僕らは礼を言った。

そして、僕らはガンジス川を離れて道に出ようとする。

振り向けば、レニーがガンジス川に入ろうとしていた。

僕は一度頷くと前を向いて歩き出した。

僕らは歩き続ける。

やっぱりこの町は大きいと思う。

周りを見ると色々なお店がある。

その中に様々な色が見えるお店を見つけた。

近づくと布の生地を売っているらしい。

「わぁ、沢山の色の生地がある。」

サヤは喜んでいる。実際布だけ見ても綺麗だ。

人々はこの布から服を作って着ているのだろうか。

僕はそう思った。

また歩き出す。朝だからなのか元気のいい声が飛び交っている。

お店以外の建物の部分を見ていくと、象の像や壁に書かれた象の絵がある。

牛に対しての考え方と同じように、ここの人たちは象に対して何かあるのかもしれない。

僕らはこの町を抜けるために、西へと歩き続けた。

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