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境界線  作者: 薙月 桜華
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第二十一話  襲撃

   第二十一話  襲撃


2237年 春の終わり 某所


薄明かりの中で、グランはぐるぐると円を描くように回っていた。

グランは焦っていた。

カールから依頼を受けた後、未だに目標を見つけることが出来ていないのである。

部下の力の無さか、自分の力の無さか。

それ故にグランはその場を回り続ける。

回ったからといって、何か変わるわけでもない。

しかし、回らないとやっていられない。

「お頭。そんなに回ったら目を回しやすぜ。」

心配になったグランの部下が言う。

「うう…む。」

グランは部下の言葉で立ち止まるも。考え込んだまま。

しきりに岩の天井と床を交互に見ている。

「まだ、見つからないのか。」

グランは傍にいた部下に言う。

その声は力のないものだった。

「お頭。も、もう少しです。もう少しで奴らの居場所が特定できやす。」

部下はグランへの励ましも含めてはっきり言った。

「そうか。」

グランの視点は定まっていない。

これほど見つけられないとは予想していなかったのだ。

「お頭。休んでください。」

部下の言葉に、力なく頷く。

「悪いが、後は頼む。」

「へい。」

グランの言葉に、部下は元気に答えた。

グランは自分の部屋へと戻ると。そのまま堅いベッドに倒れこんだ。



グランは目を覚ます。

どのくらい経っただろうか。

そんなことも、この部屋では分からない。

周りが岩で出来ているからである。

光は人間が持ってくるしかない場所だ。

今は時間としてどのくらいなのかを知るため。

グランはランプを持って外へと出ようとする。

寝起きの頭は正常な行動を起こすことが出来ず、体を左右に揺らしてゆっくりと外への通路を歩く。

周りを見ても、グランの持つランプからの光しか見えない。

外へ出ると、東の空が明るくなり始めていた。朝早くようだ。

グランはランプの火を消して、アジトの入り口に置く。

岩とぶつかった金属が音を響かせる。

グランはその場で背伸びをした。

海からの風が、グランの体を優しく撫でる。

グランは入り口近くに座ると、目の前の海をただ見つめ続けた。



気が付けば、太陽が昇っていた。

「また今日が始まったか。」

グランは太陽を見て言った。

「お頭。」

グランは、声をする方を見る。

部下が走ってこちらに向かっていた。

「なんだ。」

グランはそう言いながら、海のほうを見ている。海は穏やかだ。

「奴らが見つかりました。」

部下の言葉を聞くと、グランは素早く部下のほうを向いた。

「そうか。」

グランは素早く立ちながら言った。

「すぐに準備しろ。向かうぞ。」

部下にそう言うと、自分は自分の部屋へ戻っていった。

部屋に戻ったグランは、愛用の棍棒を手に取る。

この棍棒は金属で出来ており、所々におうとつがある。

準備を終えて外に出ると、外には三十人ほどの人間が集められていた。

グランが出てくると、みなはグランを見つめる。

グランは集められた全員を見ると言った。

「あの日からずっと探して来たやつらがやっと見つかったんだ。」

そこで一呼吸置いて続けた。

「とっとと終わらせるぞ。行くぞ野郎ども。」

グランの声に、集まった部下たちは声を張り上げた。

それから、彼らは船を使ってカールの言っていた敵の居る大陸へと向かった。

グランたちが行列をなして進む様子は、これから悪いことが起こるのではないかと周囲に思わせた。



大陸に渡って数日経つ。

捜索した部下の話ではカールの言っていた辺りを重点的に探したらしい。

しかし、なかなか見つからない。

目印が親子であることも捜索の難しさを上げた。

いくつかの集団を見つけたものの、それが目的の集団なのかは目印を見つけるまでは分からず。

逆に居ないという確実な証拠を得ることも困難だった。

情報が無さ過ぎた。地域が限定されていなければほぼ見つけることは不可能だろうと思えてくる。

右手に見える海を見ながらグランたちの一団は目的地へ向かった。

森があれば入っていき、動物を獲て食料の足しにした。



さらに数日経つ。

目的地近くまでグランたちの一団は来た。

右を見ればロンドンのある島が見える。

グランは立ち止まってその島を見る。

今はどうなっているのだろうか。

終わったらあそこへ行ってみようか。

その気持ちがグランの中に現れる。

「お頭。どうしました。」

部下の声でふと我に返る。

「いや、なんでもない。行こう。もうすぐだ。」

グランは今すべきことを優先した。

全ては終わってからで十分なのだ。

しばらく歩くと、案内をしていた部下が久しぶりに口を開く。

「お頭。あの建物です。」

グランは部下の言う方向を見る。

「あれか。」

二階建ての建物らしい。

グランはしばし見つめていると、誰か屋上に居ることが確認できた。

しかし、すぐに消える。

グランは部下たちのほうを振り向く。

「私自身が確認してくる。お前たちは建物の前で待て。」

「へい。」

部下はそれぞれ言うとグランの後ろを付いていった。

建物の扉が開けられる。

中には十数人の武装した集団が居た。

「なんだお前たちは。」

相手の一人が言った。

そして、気が付いた全員が武器を構える。

グランは反応せず、素早く目印の親子を探す。

部屋の奥のほうに、父親と娘らしき二人が居た。

「当たりだな。」

グランは自前の棍棒を肩に乗せて言った。

それと同時に、グランの部下の何人かが建物内に入る。

「お前たちに恨みはねぇが、ここで死んでもらおうか。」

グランは建物に入りながらそう言った。

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