第十四話 ひととき
第十四話 ひととき
2236年 冬 東南アジア
鳥の鳴く声に目が覚めて、ゆっくりと体を起こす。
隣ではサヤがすやすやと寝ている。
あれから僕はシェイの家に戻って寝てしまった。
あの咆哮を発したのはどんな動物だったのだろうか。
シェイに聞けば教えてくれるかもしれないが、聞いた所で何か始まるかというと何も始まらない。
僕らのすべきことはあの森を抜けること。
辺りを見渡すと、シェイの姿は無かった。
朝からどこかに行っているのか。
それとも、あれから帰ってきていないのか。
どちらかは分からないが家には居ないんだ。
ひとまず、僕より寝ているサヤを起こしてみよう。
それに、寝ているサヤを置いていくのはどうかと思う。
サヤの体を揺らす。
「ん、んあ。おはよう」
サヤは目を擦りながら体を起こす。
「おはよう。着替えて外に出てみようよ。もうこの村とはお別れなんだから。」
僕の言葉に頷きもせず立ち上がって背伸びをする。
「そうだね。いこっか。」
僕らは着替えて家を出た。
そこで待っていたものは、あの日の人々の嘲笑ではなく尊敬にも似た眼差しだった。
村の中をぐるぐると回っていると。
「あんた、あの大猿を倒したんだって。」
一人の男が話しかけてきた。
振り向くと小さな店の中にその男は居た。
多分店主なんだろう。
なんのお店かはわからないけど。
「ええ。そうです。」
僕は答えた。
「すごいでしょ。」
サヤもうれしそうに答えた。
僕は、この店を見て言った。
「ここは何のお店なんですか。」
「まぁ、素材屋っていうのかな。シェイさんが取ってきたものを買い取って他に売ったりするんだよ。」
僕の質問にその店主は答えてくれた。
ふと店の奥を見ると何の動物のものかは分からないが、様々な色の皮や鋭い爪が置かれていた。
その中に青白い皮があった。
その店主は僕がその皮を見ていることが分かったのか。
「ああ、あれはあんたらが取ってきたものだよ。」
そう言うとその皮を手にとって僕らの前に置く。
「シェイさん。これ買い取ってくれって言ってきてさ。お金もらったらあっちの鍛冶屋のほうに行ったよ。」
「そ、そうですか。ありがとうございまず」
僕らは、礼を言うと素材屋の店主が指差す方向へ向かう。
しばらく歩くと煙突から煙が上がっている建物があった。これが鍛冶屋らしい。
そこにはシェイが居た。
「おはようさん。」
シェイがこちらに気が付いて挨拶する。
「おはようございます。」
「おはよう。シェイさん。」
僕とサヤはそれぞれ挨拶をする。
「あの大猿の皮をお金に変えて何してるんですか。」
ひとまず僕はシェイに質問してみた。
「ああ、あれね。お前らの防具をもっといいやつにして貰っているんだ。」
なんかおかしいと思った。
「僕らが何時も使っている武器と防具はシェイさんの家にありますよ。」
自分たちの武器や防具が無いなら、着替えている途中に気が付くはずだ。
「いやそっちじゃなくて、昨日お前たちに貸してやった防具のほうだよ。出来上がったらお前らにやる。」
「え。」
僕は驚いた。サヤも驚いている。
だって、あの防具は貸しているからって。
僕らの反応なんてお構いなしにシェイは続けた。
「ああ、それとお前たちの武器を取って来い。ここで鍛えなおしてもらうんだ。つまり、報酬は鍛えなおされた武器と防具だ。」
僕らは昨日着たものよりも良い防具をもらえるらしい。
それに、今の武器を鍛えなおしてもらえる。
「刃こぼれさせたまま森を抜けられても困るからな。とっとと持って来いよ。」
シェイの言葉に僕らは一度家に戻ってそれぞれの武器を持って鍛冶屋に戻った。
シェイは僕らの武器を鍛冶屋の店主に渡す。
そして、シェイは店主と少し話をしたあと。
「付いて来い。」
シェイはそう言うと、僕らを連れて歩き出した。
鍛えなおすと言っても時間がかかるのだろう。
その間何かするのだろうか。
着いたところは、酒場だった。
いや、昼間からお酒はまずいでしょ。
それに僕ら今から森を抜けるんだよ。
「店主、あれを三つ。」
シェイはそれだけ言うと僕らを奥の席に導いた。
ほどなくよく分からない液体の入った器が僕らの前に出される。
嗅いでみると甘い匂いがする。
「これはここらで取れる果物を使った飲み物だよ。」
シェイは説明してくれた。だから甘い匂いがするのか。
「いや、だったらなぜここに居る間に教えてくれなかったんですか。こんなおいしそうな飲み物なのに。」
僕は不思議に思った。それなりの期間ここに居たのに一度もこんなものがあるとは教えてくれなかった。
「材料のためか、店主もそんなに作ってくれないからさ。教えられなかったんだよ。ひとまず飲んでみなよ二人とも。」
「いただきます。」
僕らはそう言って、それぞれ目の前に出された甘い香りのする液体を口にする。
全体的に甘いけど、酸味もあってただ甘いだけの飲み物じゃなかった。
「凄くおいしいです。」
サヤが隣で感想を口にしていた。
「酸味があっておいしいです。」
僕もそのあとに感想を言う。
「お前らが大猿を倒すってことで、店主に頼んでおいたのさ。三人分ね。」
シェイも液体を口に含む。
「もう、お前らはここを離れるからな。最後にこいつを飲んでおいても悪くないと思ってさ。」
少し間をおいて、シェイは僕らに言った。
「お前たちはあの森を抜けて何処に行くつもりなんだ。」
「もっと西のほう。ヨーロッパのほうまで。」
僕は答えた。特に場所を言ってもいいと思ったから。
「そうか、あの国まで行くのか。だったら、森を抜けたら西へ向かうんだ。大きな川がある。そこから西に真っ直ぐ進め。南には行くなよ。距離も時間もかかるから。」
「そうですか。ありがとうございます。」
僕はシェイの言葉に礼言った。
なんで、そこまで知っているのかについては追求しないようにした。
そのあとは、ここでのこれまでのことをシェイとサヤと僕の三人で話していた。
太陽が高く上っていく。武器と防具が出来上がるそのときまで僕らは話し続けた。